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その後も俺の日常は平和に過ぎていった。
狩りの日にはおじいさんの所へ行き、鍛冶で釘を作ったり、木工仕事で板を作りながらイスやテーブル作りにも挑戦した。
また、体力作りも続け、おじいさんと狩りに行くこともあった。普段一緒にいない従魔達との連係を確かめる良い機会だった。そして、何処からかおじいさんはゴブリンを連れてきて一対一で戦う事もあった。
ちなみにゴブリンとは子供サイズの小鬼で知能もあり木の棒や石、どこかで拾った剣などの道具を使うこともあるモンスターだ。大抵の冒険者なら一対一で負けることはない。人型の最弱モンスターということで、俺の対人練習の相手となったのだ。
採取の日は新しく従魔を連れていっていた。以前捕まえてもらったウッドモンキーだ。やはり普段木の上で活動していただけあって、果物のもぎ取りが異様に上手く早かった。
ウッドモンキーが果物を担当してくれたので、他の皆は地面の採取に専念出来た。
薬草採取やキノコ取り、薪拾いや食べ物探し。
最近は食べ物に困ることは少なくなってきたが、アイテムボックスに入れておけば腐らないので取れるだけ取っている。
クイーンには周辺の警戒をお願いしている。やはり索敵能力の優れた狼が4匹もいると安心感が違う。
ぴーちゃんは空からの索敵だ。ミュウだけは孤児院で餌をいっぱい食べられないので食事の時間になっていた。
そんな毎日を二週間程続けていると妹ちゃんの元気が無くなってきていた。
「最近元気が無いけどどうかしたの?」
「さくやちゃんにあいたいの…。」
どうやらサクヤちゃんより先に妹ちゃんの方が寂しくなってしまったらしい。
まぁ、孤児院には年上の子しかいないから同年代のサクヤちゃんが嬉しかったのだろう。
元々サクヤちゃんが寂しがったときに妹ちゃんを連れていこうと思っていたので丁度良い。
とりあえずおじいさんに相談しよう。
「猫の嬢ちゃんを連れてくるのか?」
「うん、サクヤちゃんに会えなくて寂しがっててここに連れてきたいんですけど、ダメですか?」
「連れてくるのは猫の嬢ちゃんだけか?」
「そうですね、もしかまわないならイリヤちゃんとクルス君も連れてきたいな、と。」
「あぁ、獣人の子達か」
「はい、竜の森に来てる子達ですね。」
「そうじゃのう…、それくらいならかまわんかのう…。」
「良いんですか?」
「まぁ、孤児院の子供全員だったらさすがに無理じゃが三人位ならな。それに、普段から竜の森に来てるのならばそれほど危険も無いじゃろうしな。」
「まぁ、クイーン達もいますしね。でも、ここって秘密にしないで良いんですか?」
「そうじゃなぁ、なら森の外に小屋でも作るか。」
「小屋?」
「うむ、森の外に作ればサクヤに会いに森に入る必要も無くなるし、町には森の外に暮らしておると言っておったから丁度良いじゃろ。」
「でも、そんなすぐに作れるの!?」
「出来るわけ無いじゃろ!!まずは会う場所を決めて、これから作っていくんじゃ、小僧がな」
「……はい?」
「じゃから、小僧が作るんじゃよ。木工の良い練習になるし、これから孤児院の修理でも役立つじゃろ。」
「いや、確かに役立つだろうけど、さすがに一人じゃ…」
「誰が一人と言った?狼の小僧も来るんじゃろ?二人じゃよ!!」
「いやいや、一人も二人も変わらないよ!?」
「どのみち必要な事じゃろ!!文句を言わずにやらんか!!」
「はい…。」
ということで、俺は妹ちゃんの為に小屋を作ることになってしまった…。




