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竜の森の家に着いた俺達は、おばあさんとサクヤちゃんは家にお茶を入れに、おじいさんと俺は狼車の片付けを始めた。
クイーン達を荷車から外し、荷車の荷物をアイテムボックスに仕舞っていく。
従魔達に自由にするように伝え、俺達は家の中にはいった。
倉庫に行き荷物を出そうとしたら、小麦粉は出さなくて良いと言われた。
「なんで小麦粉はいいの?」
「うむ、小麦粉はこれからも農村で買う予定じゃからのう。」
「農村で買うならこれでも良いんじゃないの?」
「小麦粉自体はそれでも良いんじゃが、過程が大事なんじゃよ。農村の場合は食べ物はあってもお金がないからの、現金を手に入れる機会は少ないんじゃ。だから、儂が買うんじゃよ。それと、村周辺のモンスターを狩るのも安全の為に必要なんじゃ。」
「そうなんだ。おじいさんやさしいね。」
「まぁ、農村には変な奴はほとんどおらんからなぁ。」
「変な奴?」
「大きな町に行くと頭の悪い貴族連中が厄介じゃからのう。」
「そうなの?でも、うちの町の貴族は良い人だよ?孤児院も作ってくれたし。」
「じゃが、今孤児院は貧乏なんじゃろう?」
「うん、元々院長先生の知り合いで助けてくれてたんだけど、その貴族が病気か何かで息子?が代わりをしてるらしくて、それから貧乏になってきたみたい。」
「まぁ、貴族にも色々いるということじゃな。」
「そうなんだ…。」
「とりあえず、そう言うことだから小麦粉はアイテムボックスに入れておけ。どうせ腐らんじゃろ。」
「うん、じゃあ遠慮なく貰うね。」
そうして荷物の片付けを終えた俺とおじいさんはおばあさん達がいる居間に行きお茶をした。
皆でお茶をして、帰ろうかと思ったらおじいさんが「ちょっと待っておれ」と言って家から出ていってしまった。
2~30分ほどするとおじいさんが帰ってきた。
表に出るとビッグホーンディアーがあった。
「せっかくここへ来たのに手ぶらではなんじゃからなぁ、ちょっと狩ってきた。」
「わざわざ狩ってきてくれたの!?普段お世話になってるのはこっちなんだから気にしないで良かったのに…。それに、小麦粉も貰っちゃったし」
「気にするでない。今回はサクヤにとっても良い旅だったしのう。サクヤ、また孤児院に行くか?」
「うん、行く!!」
「だそうだ。まぁ、お互いあまり気にしない事じゃな」
「じゃあ遠慮なくもらいます。ありがとう!!」
「さて、暗くならないうちに狼車を準備するぞ。」
そうしてクイーン達を荷車に繋ぎ俺達は孤児院に戻っていった。
町に帰る途中、休憩がてら鹿の血抜きもおこなった。おじいさんから貰ったのは狩りたてで血抜きが出来ていなかったのだ。
町に着いた俺達は門番の兵士におじいさんを送っていっただけなのに獲物を持っていることに驚いていた。兵士には仕掛けていた罠にかかっていたと誤魔化しておいた。
孤児院に戻ると鹿を見た男の子達が解体を手伝ってくれた。
おじいさん達に出会ったおかげでお肉に困らなくなり、子供達は解体技術を身に付け始めている。
このまま何事もなく過ごせれば良いなぁ…。




