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孤児院の修理を終えたおじいさん達はまた剣の稽古を始めていた。
参加している子供達は体力自慢の男の子達だ。
体力に自信のない子達は従魔の世話をしてくれている。
俺は稽古をしている子達のために木刀モドキを作りはじめた。今使ってるのは薪や木の枝だから使い辛そうなのだ。
また、皆が剣の稽古をしているのにも理由があった。
孤児院では10歳を超えた辺りから町に働きに出ていたが、最近は働き口が少なくなって働けない子供が増えてきたのだ。
元々院長先生の伝で働いていたが毎年毎年新しい子を雇えるわけがない。町自体は発展し、新しい店なども出来ているが、やはり伝がないと働けないし、孤児院の子供では特に難しい。
そのため、子供達は冒険者になる可能性を考え稽古をしているようだ。
俺やクルス君達が今のところ狩りや採取が上手くいっていると言うのも冒険者になろうとしている原因かもしれない。
話によると孤児院の子供は冒険者になるかろくでもない職業にしかつけないのでこの孤児院は恵まれている方だと思う。
ちなみに女の子達は院長先生やおばあさん達の裁縫を見学している。
こっちの方もおばあさんに皮革加工か錬金術を教えてもらえればありがたいのだが…。
その日の晩御飯はさすがに特製スープではなくなったが、品数がいつもより一品増えていて、食後の果物がサクヤちゃんの好きなものになっていた。
夜は男の子達は稽古の疲れで早く寝ていた。
女の子達は『照明』の魔法が切れるまで裁縫をしていた。
次の日の朝寝坊する子も出ず皆早起きしていた。
皆で朝ごはんを食べていると、今日はおじいさん達が帰る日なので皆寂しそうにしていた。
朝ごはんも食べ終わり、おじいさん達が帰る時間になった。俺は狼車に小麦粉や香辛料、お酒類を積み込み、クイーン達を荷車に繋いだ。
おじいさんの周りには男の子達が集まり、「師匠!!」と呼んでいた。いつの間にか師弟関係になっていた。
おばあさんの周りには女の子達が集まり、次に会うときに完成品を見せ合おうと話し込んでいる。
サクヤちゃんは妹ちゃんと抱き合って泣いていた。
「さくやちゃん、またあそぼうね!!」
「うん。私の家にも遊びに来てね!!」
「うん。おにいちゃんといっしょにいく!!」
なんて事を抱き合いながら話していた。
おじいさんと話したんだが、一ヶ月に一度くらいはこの町に来ることにした。
香辛料や酒を買ったりするのと、サクヤちゃんが妹ちゃんと仲良くなったのが理由だ。
もし、どちらかが我慢できなくなったら狩りグループでおじいさんの家に行くのも手かもしれない。
いつの間にか子供達に人気になったおじいさん達は子供達に惜しまれながら孤児院を後にした。
町の中を歩き、門へとたどり着いた。
「おっ、じいさん達か。もう帰るのか?」
いつもの兵士さんだ。ってかいつもこの兵士さんな気がする…。
「うむ、買い出しも終わって孤児院も見れたからのう。」
「そうか。お嬢ちゃんも楽しんだか?」
「う、うん…」
「そうか、そうか。じいさん達は竜の森に帰るんだよな?」
「そうじゃ。」
「森の外なら大丈夫だと思うが気を付けろよ?」
「うむ、わかっておる。結界もあるしの。」
「それでも気を付けるこった。…よし、通って良いぞ。」
「世話になったな。では行くとしよう。」
そうして俺達は簡単な手続きをして町を出た。
森への途中、お昼になったのでシャルちゃん特製のサンドイッチを食べた。森で取った肉や孤児院の畑で取れた野菜も入って、とても美味しかった。
そして、行きと同じ位の時間をかけて、俺達は竜の森のおじいさん達の家へと辿り着いたのであった。




