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従魔が増え、体術を習い、ナイフの使い方を習い、魔法を教えてもらい、肉を大量にもらった。
……これ普通じゃないよね?少なくとも院長先生には伝えないとまずいよね?でも、おじいさん達は隠れ家に住んでるって事はおじいさん達の事を内緒にしていたほうが良いのかな?
まずはおじいさん達に確認してみよう。
「おじいさん達は人間から隠れて暮らしてるの?」
「なんじゃ、急に?」
「いや、あきらかにお世話になりすぎだから、院長先生に色々話した方が良いと思ったんだけど、こんな結界まで張って隠れてるから人間には内緒にしないといけないのかなって…。」
「あぁ、そういうことか。そうじゃなぁ~、一応風龍ということは隠しておきたいのう。それに、家を教えても来られないだろうが話さない方がいいかもしれんのう…。」
「そっかぁ~、じゃあ、院長先生にも言わない方がいいか…。」
「いや、院長先生というのは小僧の親代わりなのじゃろ?ならば、院長先生だけには説明した方がいいじゃろう。」
「えっ?でも、おじいさんの事もこの家の事も内緒だって…」
「内緒なのは風龍だということと、この家の事じゃ。竜の森の近くに住む元冒険者の狩人のじいさんとでも言っておけばいいじゃろう。」
「あぁ、そういうことですか。なら基本風龍ってことを隠してれば大丈夫でしょうね。」
「そうじゃな。そもそも、儂達の正体も小僧並みの鑑定持ちじゃなければ見破れんし、この結界も小僧達の魔力を登録しとるから入れるが、普通は気付かんはずじゃからな。小僧の魔力探知があればこそじゃ。」
その夜さっそく院長先生に今までの事をボカシながら話した。
「つまり、今までのお肉はその竜の森で知り合った狩人の方に貰っていたって事なの?」
「う、うん…。」
「なんでそんな大事な事を今まで黙っていたの!!」
「ご、ごめんなさい!!えっと、内緒にしてたのはおじいさんが内緒にしてくれって頼んだのと、最初は肉を貰うだけだったからなんだ…。肉も一応従魔達と狩りに行ってたから手伝ってもらった事になってたし…」
「それでもお肉を貰ったなら言わなくちゃダメでしょ?」
「ごめんなさい。」
「それで、今も手伝ってもらってるの?」
「えっと、今はちょっと複雑になってて説明が難しいんだ…。」
その後も大事な所を誤魔化しながら話をした。
おじいさんおばあさんサクヤちゃんの三人暮らしな事。
従魔が増えた事。
サクヤちゃんの為に向こうに従魔がいること。
体術や鍛冶、魔法等を習っていること。
「つまり、そのサクヤちゃんっていう子の面倒を見る代わりに色々してもらっているってこと?」
「大まかに言うとそんな感じかな?面倒を見ると言うより従魔を貸すっていうのが大きいと思うけど。三人で暮らしてるからサクヤちゃんの友達代わりだね。」
「そういえば、今更だけれども竜の森の近くに住んで安全なの?」
「うん、おじいさんが昔手に入れた結界の魔道具があるらしいから人やモンスターは近寄らないらしいよ。俺は人と従魔が一緒にいたから偶然入れたんじゃないかって…。」
「それなら安全なのかしら?それにしても、一度はお会いしてお礼を言わないとダメよね。」
「無理じゃない?少なくとも院長先生は竜の森に行けないでしょ?」
「そうね、さすがに私は行けないわね…。じゃあ、シャルに頼もうかしら。」
「シャルちゃんも孤児院から離れるのは無理でしょ?そういえば、たまに買い出しに行くって言ってたから、その時に寄ってもらえば…。」
「お礼を言うのはこっちなのに来てもらうのは気が引けるけどそれしかないかしら…。じゃあ、シュウ、おじいさんに聞いてみてくれる?」
「了解!!」
そうしておじいさんを孤児院に招待することになった。




