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鑑定をして驚いた。おじいさんと女の子は種族が風龍となっていたのだ。
「なんじゃ、そんなに驚いて。ん?鑑定を使ったのか?」
「は、はい。えっと、種族が…」
「あぁ、気にするな。儂らは龍の里での暮らしに飽きてのぉ、里を離れてのんびり暮らしとるんじゃ」
いやいや、気にするなって無理でしょ!!龍だよ!?あまりに存在が離れすぎてて強さのイメージがわかないよ!!
「それで、お主は何をしておるのじゃ?こんな子供が一人で森におるなど危険じゃろ。」
「狩りをしてました。この子達がいるので森の外縁部ならそこまで危険はないんで…」
「こんな子供が一人で狩りじゃと!?」
「えっと、一人じゃないんですが…」
「従魔の事を言っとるなら一人と変わらんじゃろ!!……しょうがない、儂が代わりに捕ってきてやろう!!」
「えぇっ!?」
「代わりにお前はサクヤの相手をしてやってくれ。いつも儂らしか話し相手がおらんからたまには違う相手と話したいじゃろ。」
「よし、お前達もついてこい!!」
「ピュイ!?」「キュ、キュウ~?」「クゥ~ン」
「あ~、うん、ついていってあげて。」
そう言うとぴーちゃん、ミュウ、クイーンがおじいさんの後を追いかけて行った。
さて、これからどうしようかと考えていると、家の中からおばあさんが出てきた。もちろんこちらも風龍だ。
「あらあら、おじいさんは出掛けたの?」
「おばあちゃん!!」
おばあさんが話しかけたと思ったら、横からサクヤちゃんが走ってきておばあさんに抱きついた。
「あらあら、サクヤちゃんは甘えん坊だねぇ」
おばあさんはそう言いサクヤちゃんの頭を撫でる。
「そっちの子も一緒にお茶でもいかが?」
「あっ、はい、いただきます。」
俺はつい、そう答えてしまった。
おばあさんとサクヤちゃんは返事を聞くと家の中に入っていったので、俺は後をついて中に入った。
中に入って唖然とした。この家は一般的な家よりは大きいと思ったが、あきらかに部屋のサイズが合わない。外観よりもこの部屋の方が広いのだ。
いや、部屋が広いだけなら目の錯覚かとも思えたが、ドアがいくつもあり、どう見てもおかしい。
頭がこんがらがっていると
「うふふっ、ビックリした?空間魔法で部屋の大きさをいじってるのよ。」
と、おばあさんはいたずらが成功したと嬉しそうに笑っていた。
「じゃあ、ちょっと座って待っててね。」
そう言うとおばあさんはドアの向こうに行った。
俺は部屋の真ん中にある大テーブルの手前の椅子に座った。
サクヤちゃんは俺から離れた位置に座り俯いている。
「えっと、サクヤちゃんおじいさんとおばあさんと三人で暮らしてるの?」
「……うん」
「そっか、いつも何してるの?」
「ご本読んでる…。」
「本があるの!?どんなの読んでるの!?」
俺は本がある事に驚いて大声で聞いてしまった。
サクヤちゃんは驚いて縮こまってしまった。
「あっ、ごめんね。うちは孤児院に住んでて貧乏だから本なんか読んだ事無いんだよ!!本は高いしね…。」
「そうなの…?」
「うん。どんな本読んでるの?」
「えっと、物語の本とか魔法の本とか…」
「魔法の本もあるの!?俺も読ませてもらえないかなぁ…。」
「わかんない…。」
「あらあら、もうすっかり仲良くなったのね♪」
おばあさんが台所らしき所からニコニコしながらやって来て、皆にお茶らしき物を配って椅子に座った。
「サクヤちゃんと仲良くしてくれてありがとうね」
そう言って、俺達との会話に加わったのである。




