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おじいさんがいるし、ギルドの中だから大丈夫だとは思ったが、クルスくんが何するかわからないので、俺達もクルスくん達の方に向かった。近づいて気付いたが、上半身裸の冒険者? の近くには仲間らしき人が二人いた。一人は金属ではないが全身にしっかりとした防具を着けて背中に大楯を背負っているタンクと呼ばれるような防御に重点を置いた人だろう。もう一人は魔法使いっぽいローブを着けている人なんどけど、なぜか金属製の手甲脚甲をつけたアンバランスな人だった。
「なんだ、お前ら! 文句あんのか!」
三人組に絡まれてたクルスくん達の所に着くとクルスくんが喧嘩腰に怒鳴っていた。
「あるから声かけたんだろうが! お前らみたいな子供や年寄りだけでダンジョンなんて危ねぇだろうが! あぁん!?」
「そんなのやってみなけりゃわかんないだろ!」
「いきなり行って怪我でもしたらどうすんだ!? あぁん!?」
……あれ? クルスくんと怒鳴りあってるけど、良く聞くと普通に心配されてる???
さすがに判断がつかないのでギルドの受付のお姉さんの方を見るとクルスくん達の知り合いと判断されたのか三人組の説明をしてくれた。
「彼らはこの都市でもトップクラン『方舟』のメンバー、パーティー『全力全開』の三人です。見た目はアレなんですけど新人冒険者がこの街に来たときにダンジョンについて教えてあげていてこちらも助かってるんですよ。ただ、見た目がアレなので揉め事も多いんですがね……」
おぉう、見た目について二度も言ってるよ。でもそうか、一応心配して話しかけてくれてるのか。でも、冒険者がただでそんなことするのかな?
「もちろん彼らも善意で教えているわけではないですよ? 教えた冒険者が将来有望そうならスカウトしたり、既にパーティーを組んでたりしたら仲良くしておくんです。ダンジョンは深くなるほど少人数での攻略は難しくなりますからね。優秀な冒険者の知り合いはいくらいてもいいですから」
なんほど、青田買いとスカウトを兼ね備えてる感じかな? 一緒に行けば相手の実力もわかるし、新人冒険者が怪我や死亡するリスクも減る。受付のお姉さんが『全力全開』の人達が話しかけても何も言わないのはそのせいかな。
「だいたい、お前ら誰なんだよ!」
「あぁん!? 俺達か? 俺達は」
「「「全力全開!!!」」」
クルスくん達の声が大きくなってきたので、そっちを見ると自己紹介? の場面だったのだが、クルスくんに何者かと問われた『全力全開』の皆さんは声を合わせ、なぜか決めポーズと共に名乗っていた。何やってんだ? と思ったんだけど、なぜかクルスくん、妹ちゃん、そして、おじいさんまでもがキラキラした目で『全力全開』のポーズを見ていた。
「な、なんだよ! ……かっこいいな」
「あたしもあれやりたい!」
「ふむ、面白そうじゃな!」
すると三人は集まり
「「「俺達 (わたしたち) (儂達)」」」
「「「シリウス孤児院!!!」」」
声はなぜか揃っていたが、ポーズの話し合いも何もしていないのでまとまりの無いバラバラなポーズを決めていた。そんなことをしているとギルド中の人達がこちらを見始めていた。恥ずかしいからやめてほしいな……。
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