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「頭痛ぇ……」
「ぎもぢわるい……」
「うっぷ……」
楽しい食事をした次の日、呑みすぎで二日酔いに苦しむ冒険者達を連れ商人達と一緒に兵士詰め所に向かっていた。
というのも昨日の段階で伝言があり来るように言われたのだ。商人達が聞いた話だとすでに盗賊は壊滅させたようで、それについての話があるのでは? とのこと。
商人達の予想では盗賊達のお宝を分けて貰えるのではと盛り上がっていた。本来なら盗賊が集めたお金や物は退治した人達の物になる。単純に持ち主がわからないし下手をするとすでにこの世にいないかもしれないからだ。なので、今回のお宝は兵士達、というかここの領主の物になるのだが、ここしばらく迷惑をかけられていた盗賊を俺達が捕まえ、その後に兵士達がアジトを襲ったので横取りしたのでは? と考える人が出るかもしれない。それを防ぐ為にお宝の一部を分け与えて横取りではないとするのではないかと予想したのだ。
こちらとしては、盗賊退治などしたくなかっただけなのだが貰えるなら貰っておこうという意見でまとまったのだ。
兵士詰め所に着くと訓練所らしき所に通された。そこにはいくつもの品物が置いてあった。剣や鎧の武器防具、衣類に食器に家具となんでもある。
「今回の件、大変助かった。これは褒美だ、好きなだけ持っていけ」
やはり盗賊のお宝を貰えるみたいだった。しかも好きなだけとか太っ腹だな。
商人や冒険者達は早速物色し始めたのだが段々声が小さくなっていった。出遅れた俺達も近寄って品物を見ると、う~ん、品物がいまいち? 品質が悪いというか売ればいくらかになるだろうけど、これはお宝と言えるのか?
「多分領主や騎士団、兵士達が使わない残りだろうな」
近くにいた商人が教えてくれた。
「相手は商人だから売れば金になると思って要らないものを渡してきたんだろ。実際売ればいくらかの金になるし、向こうも要らないものを処分できる。損しないだけましさ」
なんか廃品回収させられてる気分だけどくれる物は貰っておくか。
その後、皆と話し合い、武器防具は冒険者に、残りは商人で分け合うことになった。それなりの量があったが残り物は俺達が全部貰った。途中でポーションを売ったので馬車に空きがあるから、と言ったが積めなければ『アイテムボックス』にしまっておこう。
冒険者が持っていく物は丈夫な物や性能が良さげなものを選んであげた。クルスくんがあれやこれや俺の所に武器を持って来て『鑑定』させられたので他の冒険者に『鑑定』スキル持ちだとバレたのだ。商人の中には『鑑定』を持ってる人が少なくないのだが、旅に出る人は少ないらしい。怪我したり死んでしまってはもったいないからだ。他の商人達からも気をつけるように言われてしまった。だが、せっかく『鑑定』持ちがいるならと商人達からも『鑑定』をお願いされてしまった。
こちらも逆に商人達から物の価値を教えてもらった。『鑑定』では名前や状態はわかっても値段や価値はわからないのだ。例えば塩なんかは海の近くでは安いし、内陸部なら高くなる。そういう知識を教えてもらった。
品物の中には掘り出し物も見つけた。兵士達が使わないからかナイフなんかが多くあったのだが、いくつか魔鉄製の物があった。これは冒険者達が取り合いをしていた。魔鉄製品は欲しかったが何故か集められていた壊れた武器防具に魔鉄製の物が混ざっていたので俺達はこれを貰うことになった。
商人達も荷物にならずそれなりに利益が出そうなものを選び終えて兵士詰め所を後にするのだった。




