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次の日、日が昇る前に俺達は出発した。国境都市に今日中に着きたいというのもあるが、盗賊が十人以上いるので早く兵士に預けたいのだ。一応冒険者に先に行ってもらい、連絡はしているのだが、盗賊が暴れても困るし、仲間が取り返しに来るかもしれない。こちらが捕まえてることをしらなくても仕返しに来るかもしれないのでゆっくり休めないのだ。
まぁ、結局盗賊の襲撃は無く、無事に昼頃に国境都市にたどり着いた。先行した冒険者はしっかりと話を通してくれたようで着く前に十数人の兵士が待ち構えていた。兵士への対応は商人リーダーと襲われていた商人達がやってくれた。途中クルスくん達や俺を通訳にクイーン達の話も聞いてきたのだがいつまでも街の前で話しているわけも行かないので街中へ移動した。この時捕まえてた盗賊は兵士に渡したので先に連れていかれた。
街に入る手続きは優先してやってくれたので、すんなり街に入った俺達はまず宿を探すことになった。この街は国境に面しているので商人や冒険者の行き来が盛んなため宿屋も多くある。また、国を跨ぐ移動なので馬車を使うことが多く、馬車屋だけでなく宿屋に馬車を預けられる所も多く存在した。今回泊まる宿屋は一緒に来た商人から紹介してもらった。
一緒に来た商人達は行商をメインにしているためこういう街には定宿がある。ただ、この世界には電話やメールなどが無いために予約というものが出来ない。なので、いきなり行くと満室の可能性があるため、宿屋が沢山ある街では最低二つは信用出来る宿屋を調べておけと言われた。今日泊まる宿屋も商人が紹介してくれた所で何人か宿屋に泊まった事があるらしく、そういうところは期待が持てる。
その中でも偶然宿泊客がいない所があったのでそこに泊まることになった。幸いなことに馬車や従魔がいると言ったら貸し切りにしてくれた。俺達の泊まるところが決まったら他の商人達や冒険者達も泊まるところを探しに行った。さすがに一緒に旅した全員で泊まれる宿屋は無いため、何か連絡がある時はここに集まることになった。商人リーダーの泊まる宿屋でも良かったのだが、最初に宿が決まった事と貸し切りになったから集まりやすかったのでここになった。
ついでとばかりに宿屋と一緒になっている食堂も夜は貸し切りにしてもらった。商隊の皆にも夜はここで食べるように伝えておく。皆が集まれば何か連絡があると伝えやすいからだ。もちろん盗賊の褒賞金での奢りも含まれる。
他の商人や冒険者達が宿を探しに出掛けると、俺は宿屋の人にお肉の塊と香辛料を渡しておく。クイーン達の食事用と夜の貸し切り用の食材だ。肉は「アイテムボックス」から取り出したのだが、
あまり大量に出すと怪しまれるので明日クルスくん達には狩りに出掛けてお肉を取ってきて貰おう。
夜は全員が集まり宴会となった。紹介された宿だけあって料理も美味しかった。スープにしても、同じ「シャルちゃん特製スープの素」を使っているのに俺達が作るものより美味かった。クイーン達にも山盛りの焼き肉が出されたのだが冒険者達が羨ましそうに見ていた。お肉はまだあるはずだからそのうち出てくると思うんだけどね。
呑みすぎて二日酔いになるといけないのでお酒は控えめにしてあるのだが久しぶりにゆっくり休めるので皆楽しそうに飲み食いしていた。




