284
「ギャウッ!」
生まれてきたウインドワイバーンは卵よりも大きかった。というよりも、もしかしたら大きくなりすぎて早く生まれてきたかもしれない。なぜなら魔核に魔力を流すようになってから、いくらでも吸い込めるようで俺も面白がって空気中から魔力を吸収しながら送っていたのだ。もちろん限度があるのであげすぎには注意していたのだが、生まれる前のウインドワイバーンの魔核は明らかに卵に対して大きすぎた気がする。
「ついに生まれたな!」
「おっきいね!」
「コケッ!」
「ピュイー!」
ウインドワイバーンの周りには妹ちゃん、クルスくん、イリヤちゃんの他にいつの間にかぴーちゃんやビッグコッコ以外の従魔も集まっていて卵用に用意した小屋の中はぎゅうぎゅうだった。
ウインドワイバーンの誕生は妹ちゃん達よりもぴーちゃんの方が嬉しそうにしている。もしかしたら飛べる仲間が増えて嬉しいのかな? シャドウオウルと違ってシーキャット達はライバルって感じだったからなぁ。ビッグコッコ達は飛べないし狩りの練習なんかはぴーちゃんに頼んでみよう。
その前にウインドワイバーンのご飯をどうするかだな。何を食べるのか、おじいさんに聞いてみようかな。
「コケッ」
「モ~」
「キャンキャン」
ふとウインドワイバーンを見るとビッグコッコやミルホーン、コボルト達がみんなして餌をあげていた。ビッグコッコのはミミズ? のようなものでミルホーンは誰かに搾ってもらったミルクを、コボルト達は各種お肉や果物なんかだ。
「ギャウッ、ギャウッ!」
ウインドワイバーンは嬉しそうにミルクやお肉を食べていた。お肉は生肉と焼いた肉と両方あったがどちらも美味しそうに食べている。ってか、生まれたばかりなのにそんなに食べて平気なのかな? それに、ビッグコッコからのミミズっぽいのは食べないのかな、ビッグコッコが悲しそうにしているんだけど。あっ、いや一応食べてるな。他に食べるのがあるから食べてないだけか。ならワイバーンは雑食なのかもしれないな。
その後も俺が出る間もなくビッグコッコを中心にウインドワイバーンの世話をやいていた。相変わらず赤ちゃんや子供はうちの孤児院では人気が出るな。あまり戦闘が得意でない子達には早めに見に来るように言っておこう。そうそう、サクヤちゃんも忘れずに呼ばないとね。
大きくなると迫力が出てしまうだろうから早めに院長先生に会わせといたほうがいいだろうな。
ワイバーンの卵はとりあえずの解決を見せたのだが、問題はまだある。風龍の鱗や爪だ。初めて持ってきたときから「こんな貴重品は困る」と言ったのだが、「落ちてるから」とか「捨ててあるもんだから」等と言ってあれからも何度も持ってこられた。おじさんの一人は「そんなに嫌なら別のもん持ってきてやる」と言って持ってきたのが『風竜の鱗』だ。風龍だろうと風竜だろうと貴重な品なのは変わらないのでどっちにしても困る状態だった。どうするか悩んだのだがこれだけあるなら色々試してみるのも有りかと生産組を集めて加工に挑戦してみることにした。
鍛冶組は爪、牙、鱗を使い武器や防具……の前に加工できるのか挑戦する事に。
裁縫組は鱗を服に縫い付けられるか。そして、木工組と鱗を使った盾にも挑戦してもらうことに。
俺はというと調薬組とポーション作りに挑戦した。材料が鱗なので少し抵抗があるが漫画やアニメで鱗を使うと効果が上がる話は良くあるので試してみることに。
おじいさんにも一応聞いてみたのだが自分達の身体の一部を加工するわけがないしポーションなど使うこともないともっともな事を言われてしまったので手探りでやっていくしかないだろう。




