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「風竜すごかったな!」
「あぁ、後から出てきたのはもっと凄かったけどな」
「確かに。あれに襲われてたら俺達も簡単にやられただろうな」
冒険者組は風龍達が去ってからも興奮して感想を言い合っていた。逆にギルド関係者達は真剣な顔で今後について話し合っている。風龍達が来た原因は十中八九おじいさんのせいだと思うのだが、皆におじいさんの正体をばらしてないのでどのように大丈夫だと言えばいいのか考えてしまう。
「風竜がなぜ来たのか、なぜ領主軍に向かったのか、なぜ私達を無視したのか、謎が多い出来事ですね」
ギルド関係者が一人こちらにやって来て現状確認をし始めた。
「それにこれからも私達を襲わないとは限らないので森にいる人達は風竜達が山に帰るまではこのまま隠れてもらいましょう。私達も避難した方が良いのですぐに準備してください」
あぁ、そうか、風龍達は領主軍を追いかけてフレイの町の方向へ行ったから戻ってくる可能性が高いのか。おじいさんが指揮してたから襲われる事は無いだろうけど普通は逃げるか。
俺達は指示に従い荷物をまとめて森に避難した。
「りゅうさんばいば~い!」
よく見たらサクヤちゃんらしき風龍がまだ見える所にいて妹ちゃんが手を降ってお別れしていた。風龍も返事代わりか一回転してからフレイの町へと向かっていった。他の龍達と違って威圧感みたいな物が無かったので妹ちゃんが手を振るまで気付かなかったよ。
全員で避難した俺達だが情報が無いのは困るということで偵察隊を出すことになった。俺達四人組、冒険者組、護衛の冒険者の三組が偵察に行くことになった。冒険者組、護衛の冒険者には狼を付けたので何かあればすぐに知ることが出来るだろう。
「やっぱりフレイの町に向かってるわね」
それぞれ別の方向から偵察する事になったのだが空を飛ぶ風竜を探せば逃げた領主軍を見つけるのは簡単だった。領主軍のごろつき達は最初は混乱して色んな方向に逃げたが、逃げるところは限られるのでフレイの町に向かったのだろう。領主軍を名乗るのなら町にモンスターを連れていくなと思うが、あの領主の部下ならば仕方がないだろう。
他の偵察隊もフレイの町に向かっているようなので領主軍はほぼ全員がフレイの町に行こうとしているのだろう。
後を追い、フレイの町が見えてくると町から叫び声や悲鳴が聞こえてきた。領主軍が帰ってきたと思ったら風龍を連れてきたんだから町の住人はたまったもんじゃないだろう。おじいさんは領主軍に手加減していたし、当然町を攻撃する気は無いだろうけど、住人はそんなこと知らないからパニックになってるんだろう。
「なぁ、町の人達は大丈夫なのか?」
「慌てて怪我をしてる人もいるかもしれないわね」
クルスくんとイリヤちゃんは聞こえてくる声から町の人達を心配している。
「町の中の様子はクランハウスにいる皆に確認しよう。あと、怪我人もいるかもしれないしポーションや薬なんかも必要かもね」
俺はぴーちゃんにクランハウスとの連絡を取ってもらい『アイテムボックス』から薬を取り出し鞄に詰め替えておいた。護衛の冒険者には狼達に持ってきてもらったと言っておこう。町に近付くと他の偵察隊も合流し、ぴーちゃんからの怪我人多数の報告を聞いて救助道具を持って町へ向かった。
「お前ら無事だったか!」
町の門に着くといつもの門番の兵士さんを筆頭に武装した兵士が並んでいた。
「見ての通り竜が現れた。門は閉めちまったから中には入れられないぞ!」
「なんで中にいれてくれないんだよ! 俺達、薬持ってきたから中にいれてくれよ」
「……わかった、入れてやる。だが、危ないと思ったら避難しろよ」
俺達は町にいれてもらいまた三組に別れて行動した。冒険者ギルド、孤児院跡地、クランハウスだ。町は大騒ぎになっている。おじいさんにはおばあさんから説教してもらわないとな。




