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鳴き声の主は竜の森、いや龍王山の方から飛んできて腹に響く声を上げながら近付いてきた。間違いない、あれはきっと風龍なんだ。シルエットは風竜に似ているが風竜に比べて一回りも二回りも大きいし、近づくにつれて迫力というか威圧感がある。
風龍はちらりとこちら、市場の方を見ると領主軍の方に向かった。近くを通った時に見たが風竜よりも鱗が輝いてるのが印象的だった。というか、風龍が何匹もいるんだがなんでこんなにたくさん来てるの!? 風龍って事はおじいさんが関わってると思うんだけど……。
まわりを見てみるとさっきの風竜よりも強そうな風龍の登場に皆口を開けたままポカーンとしている。だが、襲われる領主軍はたまったものじゃない。
「なんだ!? 仲間か?」
「ま、まさか、竜か!?」
「そんなバカな! なぜ竜が出てくる!」
竜と龍の違いはわからないが、領主軍は風竜をワイバーンと勘違いしているので風龍が風竜になっているようだ。まぁ、竜を倒すのは生半可な事ではないと以前ギルドの先輩冒険者に聞いたことがあるので、ワイバーンだけでなく竜(実際には龍)が出たことに領主軍の心情は絶望的だろう。
風竜達は散り散りに逃げた私兵やごろつき達を追いかけ回しているが、風龍は領主と側近達に狙いを定めたようで光るブレスや風のブレスで追いかけ回していた。正直風龍に感じる強さからしてブレスを直撃させれば簡単に領主軍を倒せそうだが、直接狙わないって事は殺さずに追い払ってくれてるのかな?
領主達を追いかけ回している風龍だが、一際大きい風龍がチラチラとこちらを見ながらブレスを吐いていた。何かあるのかと辺りを見回すが何もない。
「おにいちゃん、ちっちゃいりゅうだよ!」
妹ちゃんに言われ、上を見ると明らかに小さな『風龍』が飛んでいた。『鑑定』で確認したので間違いないのだが、風竜が成長し進化すると風龍になると思ったので風竜より小さい風龍がいると見た目で判断がつかないので困りそうだ。
「小さくても龍は格好いいな!」
「お~い!」
いくらこちらに攻撃してこないからってクルスくんも妹ちゃんも油断しすぎじゃないかな? って、あの小さい風龍、妹ちゃんが両手を振ってるのに反応して翼を振ってないか!? ……もしかして、あのちっちゃい風龍ってサクヤちゃんか? となると、あっちの一際大きいチラチラとこちらをみてる風龍はおじいさん!? まさか風龍の姿になってもサクヤちゃんに良いところを見せたいの?
「こんなのやってられるか!」
「こんなところで死にたくねぇ!」
「領主様、ここは一旦引きましょう!」
「う、うむ、そうだな! 戦略的撤退だ!」
俺がおじいさんとサクヤちゃんらしき風龍を見つけている頃、領主軍に動きがあった。撤退、いや、尻尾を巻いて逃げ出したのだ。さすがに風龍に追いかけ回されるとどうしようもないんだろう。俺が同じ立場でも当然逃げる。逃げられるかどうかは別にして。
ただ、風龍も風竜も領主軍を殺そうとはしてないようなのでなんとか逃げられるだろう。もちろん無傷とはいかずドラゴンブレスに吹き飛ばされて骨折とかしてるのがちらほら見えた。
「俺達助かった……のか?」
「今のは竜、ですよね?」
逃げる領主軍にそれを追って風龍達が行ってしまうと残された俺達は一息ついた。俺を含め数人は感じなかったみたいだけど、ほとんどの人は風龍達のプレッシャーにダウン寸前のようだ。風龍達のおかげで領主軍を追い返せたが、風龍達のせいで市場から撤退してしまう人達も出てしまうだろう。俺達は孤児院があるのでここから動けないので頑張るしかないが風龍を怖がっていた子達のケアをしっかりしないとな……。




