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「おさけだよ~!」
「お、おかわりです……」
飲み食いしているおじいさんの回りを妹ちゃんとサクヤちゃんが給仕をしながら走り回っている。お客さんの半数以上が冒険者なので酔っぱらって暴れられて怪我でもしたら困るので戦える子が給仕をしているのだが人手が足りないので妹ちゃんとサクヤちゃんにお手伝いを頼んだのだ。まだ成人もしてないから心配していたが
「サクヤ~次は別のお酒を持ってきておくれ」
「お嬢、こちらには肉サンドをお願いします」
「あのお嬢がこんなに走り回るなんて……」
「いつの間にか友達まで……」
おじいさんと謎のおじさん達が二人を専属にしてしまって離してくれなかったのだ。妹ちゃんは楽しそうだけどサクヤちゃんはすごく緊張しているな。というか、お嬢ってサクヤちゃんの事かな? ならあの人達はおじいさんやサクヤの知り合いなのかな? おじいさんとサクヤちゃんの知り合いって事は……。深く考えないようにしよう。あれはベテラン冒険者だ。
「ここもけっこう大きくなったな」
「そうだね、隠れ里より人が多いかもね」
最近忙しくなった屋台を皆で手伝っているのだが日に日に屋台や露店が増えてきていた。最初は買取りや消耗品の販売のお店ばかりだったが、今は武器防具を売る店や飲食店、果ては宿屋代わりのテント村まで作られていた。
これはやっぱりフレイの町の税金が原因だろうなぁ。始めのうちは町に入るための税金だけだったが、最近では露店や屋台を出すのに税がかかり、売り上げに対しても税金を取ろうとしているらしい。今は商業ギルドが反対しているので取られてはいないがここに来ている商人達の話では時間の問題だろう、とのことだ。
そうなると、資金力の少ない行商人なんかは直接こっちで取引しようとする。元々町での仕入れも難しかったから丁度良かったのかも知れないが、色々な品物が売っていて面白い市になってたりする。たまに商業ギルドの人を見かけるから出張所みたいなのがそのうち出来るかもしれないな。
新領主は冒険者に対しても税金を掛け始めたらしい。冒険者が獲物を狩っても町に入るのに税金を払い獲物を持ち込むのに税金を払い、ギルドに売る際にも税金が掛かりそうだったのだが、ギリギリ冒険者ギルドが阻止したらしい。その為、冒険者達はギルドの依頼やランクアップに必要な物以外は森の市で売るようになっていた。
こちらも冒険者ギルドの受付のお姉さんや解体担当のおじさんなんかを見かけるようになったので冒険者ギルドの出張所が出来そうである。
とまぁ、これだけお店が揃えば冒険者達も無理に町に帰る必要が無くなり、その時間を探索に使え、大物を仕留める冒険者パーティーも増えて良いことが連鎖していた。もちろんその大物も入口で買取りするので冒険者的に手間が省けて喜ばれていた。
竜の森がこれだけ栄えると当然フレイの町は廃れるまではいかないが賑やかさは無くなっていた。竜の森の原因は俺達かもしれないが、フレイの町の原因は新領主の政策にもあるだろう。今はまだ大丈夫だが一揆とか起きないよね?




