26
俺達は各々の感覚を頼りに近づいていった。
目標に近づき木の影から覗くとそこには血だらけの狼がいた。
その狼は子狼を隠すように倒れていた。おそらく子狼を守っているのだろう。狼を見ながら魔力探知をすると、小さい反応が三つ。そして、今にも消えそうな反応はきっと親狼だろう。
「おにいちゃん!!おおかみさんが!!」
「任せろ」
俺は妹ちゃんに呼ばれ親狼を治療するために近付こうとした。
「「「キャン!!キャン!!キャン!!キャン!!」」」
すると、子狼が親狼を守るために俺の前に立ち塞がり威嚇してきた。
「皆、子狼を抑えて!!」
俺は後ろの三人に子狼を退けるように頼んだ。
「なんか知らんが任せろ!!」
「了解よ!!」
「あい!!」
三人は走りだし、一匹ずつ抱き抱えた。クルス君とイリヤちゃんは問題無いが妹ちゃんは体格的にちょっと辛そうだ。
俺は急いで親狼に近付いた。親狼は意識を失い息も絶え絶えだ。俺は慌てて親狼に魔力を流した。
魔核に魔力を注ぎ全身に魔力を流しながら傷をふさぐイメージをする。
幸いここは竜の森、魔力が濃いのでいくらでも使い放題だ。
魔力を通した感じ異物の様なものは無さそうだ。
その代わり、大きな傷が何ヵ所か見つかった。そこには大量の魔力を流し、慎重かつ早く傷を治すイメージを添えた。
どれくらいの時間が経っただろうか。30分か一時間かそれとも10分程度か…、親狼の治療に集中し過ぎて時間の感覚がおかしくなっている。
魔核への魔力もいっぱいになり、呼吸も落ち着いてきた。傷も見た目には治ったようだ。
俺は魔力を流すのを止め親狼から離れた。それを見た三人は子狼を地面に離すと子狼達は一斉に親狼の元に走っていった。
子狼達も心配なのだろう。親狼のまわりをクンクンしながらまわっている。新しい血の匂いが無いこと、呼吸が落ち着いてきた事を理解したのか子狼は親狼に寄り添って眠りについた。
おそらく親狼が瀕死の重傷で子狼達は気が気でなかったのだろう。
狼達が眠ったのを確認したら皆が俺の近くに集まってきた。
「とりあえずこれで一安心か?ってかお前回復魔法なんか使えたのか!?」
「使えないよ!!多分今使ったのは回復魔法とは違うと思う。それにモンスターにしか効かないと思うんだ。」
「そうなの?でも怪我はちゃんと治ってるみたいよ?」
「そもそも僕魔法なんて習ってないから、なんとなくやってるだけだし…」
「あぁ、そりゃそうか。俺達みたいな孤児が魔法なんて大層なもん習えるわきゃないか。んで、モンスターだけってのは?」
「そもそもモンスターにしか試してないってのと、治療が魔核に魔力を流してるからかな」
「なら今度院長先生に言って他の子供に使ってみろよ!!毎日擦り傷切り傷いっぱいこしらえてんだからよ」
「うん、そうしてみるよ」
その後、狼がいるのでこの場を離れることが出来なかった俺達は採取はここ周辺だけにし、俺と二羽は狩りに出掛けた。
兎鹿鳥とそれなりの成果をあげて戻ってくるとクルス君がそろそろ起きそうだと教えてくれたので、離れた所で起きるのを待つのであった。




