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港町孤児院で過ごす事数日、クルスくん達が帰ってきた。長期依頼の後は休みをいれるのだが
「次も護衛の依頼受けたからまた出掛けるぜ」
とのこと。どうやら地道に信頼を勝ち取ったらしい港町冒険者組のおかげで続けて依頼を受けられたようで冒険者ギルドで依頼完了の報告と同時に次の依頼も受けたそうでなんとも忙しいことだ。
しかし、また護衛依頼ということは滞在が長引くということなので院長先生に連絡をしておいた方がいいので、伝書鳩ならぬ伝書シーキャットに手紙を運んでおいてもらおう。今ではシーキャット達は15羽になり、三羽一組で伝書鳩代わりに連絡を取ってもらっている。速さで考えればぴーちゃんに頼んだ方が良いのだが、一人の時に襲われたら危ないのでシーキャット達の仕事になった。
港町で過ごす間クルスくん達は順調に護衛依頼をこなしていった。当然港町ということもあり行き先は王都だけではなく他の街への依頼もありクルスくん達の話では王都には劣るが港町位栄えている所もあり楽しかったと言っていた。同じ国でも差別の少ない地域もあり、皆で行くならそういう所が良いとも言っていたので旅の楽しみが出来たかもしれない。
護衛依頼には時たまクイーン達もついていった。というのもここでも俺達の旅には狼がついてくるという認識で、狼の察知能力を期待されて依頼している部分もあるので毎回誰かしら狼が一緒だったのだが、とある街に行くときに山賊やモンスターが多数出る危険地帯がありそこを通るためにクイーンと子狼達が一緒に行ったのだ。
あまり嬉しくはないが予想通り何度もモンスターに襲われたらしくクイーン達やクルスくんは喜んで戦っていたらしい。港町冒険者組がしっかり護衛していたので良かったが、またお説教かな?
クルスくん達が出掛けている間俺は情報収集がてら料理組の手伝いをしていた。といっても料理は出来ないので屋台の手伝いをしただけなのだが、船乗り達向けの屋台にしたので大忙しだった。
船乗り達は当然海の上で生活するので普段から保存食や魚ばかり食べているのでお肉に飢えているらしい。もちろん陸沿いを走る船は補給もしやすいので、全ての船乗りが肉に飢えているわけではないのだが……。
「陸地沿いなら安全だが時間がかかんだよな」
「何でも遠く海の向こうには変わった服に珍しい食べ物、酒がある国があるとか」
「隣の大陸へ向かう途中の島が沢山あるところには海賊がいるから気を付けなきゃなんねぇ」
「海に出ると大型のモンスターも出るから海を渡るのは命がけだぞ」
屋台でお酒も出したところ船乗り達は色々な事を教えてくれました。話を聞く限り海での旅は一筋縄ではいかないようなので将来的な旅はまだまだ先になりそうだ。少なくとも高性能な船か水中でも戦える従魔が見つからないと旅は出来ないだろう。
その後もクルスくん達が依頼を受けている間は屋台を手伝って色々な情報を仕入れた。やはり海の果てには定番の日本風の国があるみたいなので、武器なら日本刀が、調味料なら味噌や醤油が、そして米があれば日本酒もあるかもしれない。お酒好きなおじいさんなら日本酒も喜んでくれるだろう。
「よしっ、帰ろうぜ!」
「思ったより長くかかっちゃったわね」
何度か護衛依頼を受けていたらようやくクルスくんとイリヤちゃんのギルドランクが上がった。ランクが6や7になれば一般的な冒険者としてみられるので、孤児院の子達はほとんどがこのランクである。このままでも良いとは思うんだけどクルスくんはもっと上のランクになりたいらしいので俺と妹ちゃんが冒険者になったらランク上げの毎日になるかもしれない。そういえばサクヤちゃんはどうするのかな?
「帰りは依頼無いの?」
「さすがにここじゃあ見つかんなかったな」
「クイーン達も満足したみたいだしのんびり帰りましょ?」
目的、というかランクを上げるためにしていた護衛依頼だったのでランクが上がればこれ以上急いで依頼を受ける必要はない。なので孤児院に帰る事になった。思ったより長くいたので魚介類も大量にあるのでしばらくは港町に来ることはないかな。そんなことを考えながら俺達は孤児院へと帰るのであった。




