254
「よし、それじゃあ出発~!」
クルスくんの掛け声でイリヤちゃん、俺、妹ちゃん、サクヤちゃんに保護者代わりのおじいさんで港町への護衛依頼に出発した。
冒険者になったクルスくんとイリヤちゃんだが早々に薬草を提出し冒険者ランクを上げ、討伐依頼もクイーン達の協力のもと、ある程度達成し次のランクアップの為に護衛依頼を受けることになった。もともと孤児院の子達は冒険者ギルドに出入りしていたので実力、性格共にギルドに認知されているのでここら辺まではスムーズに進んだ。
ただ、護衛依頼に関してはちょっとだけ問題が起きた。基本的には四人(サクヤちゃんを入れたら五人)で行動する予定だったので今のパーティーは二人だけしかおらず、募集の条件を満たせなかったのだ。
実力というか護衛の能力はクイーン達もいるし問題ないのだが、さすがに二人というのは実力云々の前に少し頼りなく見えるものだ。かといって俺や妹ちゃんに従魔達を連れていくのも依頼主の迷惑になる。冒険者組の誰かに頼むのも手だが、最近は皆忙しいから一緒に行ってくれる人がいるかどうか……。
「おや、皆さん、仕事ですか?」
冒険者ギルドの掲示板で仕事を探す俺達に隣町へと向かう途中よく見かけた商人さんが話しかけてきた。馬車のスピードが違うので一緒に移動する事は無いのだが、休憩所や野営場所では話をする程度には仲良くなった人の一人だ。
「あっ、こんにちは」
「違うよ、護衛依頼を探してるんだけどなかなか良いのが無くてなぁ」
俺達は商人さんに事情を説明すると
「なら丁度良かった、うちの依頼を受けませんか?」
どうやら商人さんは護衛を探しにギルドに来たらしい。
「俺ら二人だけだけどいいのか?」
「ええ、でもシュウ君達も一緒に来てくれるんでしょう?」
どうやら俺、というかクイーン達の護衛力を期待しての提案みたいだった。まぁ、二人分の依頼料しか貰えないけど皆で行けるのはメリットかな。
お互いに良い話だったので依頼を受けたのだが、ちゃっかり商人さんは行き先を隣町から港町に変えてたのにはびっくりした。やっぱり商人は油断ならないね。
次の日お互いにいつでも出発出来る状態だったので、早速出発した。どうせ港町へ行くならとこちらも木材なんかを運ぶことにした。
商人さん達は二台の馬車でポーションや薬草、干し肉やモンスターの素材を積んでいるようだ。
「なんかいつもと違ってのんびりだなぁ」
「たまにはこういうのも良いじゃない」
今日は護衛ということでクルスくんとイリヤちゃん、それに俺と妹ちゃんも馬車の回りを囲うように歩いていた。クイーンと子狼達は周囲を偵察に行っている。サクヤちゃんとおじいさんはうちの馬車をお願いしてある。
いつもはステップホース達の脚力でスピードを出しているのだが、さすがにいつも通りのスピードだと護衛にならないので商人さんの馬車の速度に合わせている。その為クルスくん達にはゆっくりに感じているみたいだった。
「でもクルスくん、これが普通の護衛だよ?」
「そうですね、いつも皆さんはあっという間に走り去ってしまいますからねぇ。皆さんなら護衛の依頼がたくさん来るでしょうし、今のうちに慣れておいた方が良いかもしれませんね」
俺達の会話に商人さんも加わってきた。やっぱりクイーン達が護衛するというのは依頼する側からすると安心感があるらしい。商人さん達は普段から俺達の事を知っているから尚更安心なんだろう。
そんなのんびりしたペースで初めての護衛依頼はスタートしたのだった。




