240
次に向かったのは二階。ここには冒険者が使う武器防具以外の品が売られていた。例えば鞄やテント、灯りに保存食、薬やポーション等フレイの町とは品数が違いすぎてどこから見れば良いのかわからないくらいだ。
「すごい広いな」
「えっと、どうする?」
「さっきと一緒で各自で見てあとで報告で良いんじゃないか?」
ということでバラけて見物することになった。俺が最初に向かったのは保存食のコーナー。俺は『アイテムボックス』があるからいいが、冒険者組は保存食を食べることが多い。魔法の鞄のおかげで荷物を多く持っていく事は出来るのだが、時間経過は止められないので美味しい非常食があれば俺達にとって良いことだろう。少なくとも料理組のお土産になるしね。
「シュウ! これ、お前でも作れるか?」
保存食を見ていると声をかけられたのでそこへ行ってみた。そこにはアクセサリーの類いが置いてあった。指輪やら腕輪やら首飾りやらだ。「何でこんな所に?」と思っていたら冒険者組が教えてくれた。
「これはな、色んな『付与』が付いてんだよ。防具と違って取り替えやすいから便利なんだって」
彼も先輩冒険者から聞いたらしいのだが、普段から身に付ける防具には身体強化系の付与を付けて、耐性系、例えば毒耐性や各種魔法耐性なんかは依頼に合わせて交換するんだとか。
「一応付与は出来ると思うよ。何に何の付与を付けるかは考えないとだけどね」
「おっし、出来るのか! ちょっと高いから買うの難しかったんだよな」
確かに小物とはいえ付与が付いているのでそこそこの値段がする。これを複数持つとなると確かに大変だ。
「作ったものと比べる為にも少し買っといた方が良いかもね」
「そうだな、なら俺が選んどくよ」
冒険者組の子がそう言ってくれたのでお任せすることに。それからも冒険者組と色々と見て回った。暑さや寒さに強いテントや魔物避けの効果のあるランタン等ただの道具から便利な魔道具が豊富に置いてあるので時間を忘れて楽しんでしまった。
獣人街に戻るとクイーン達は満足そうにしていた。どうやら獣人街の冒険者達と狩りに行っていたみたいだ。獲物は弱かったかもしれないが走り回れて満足したらしい。ミュウは何やら兎族の冒険者と走り方に付いて討論? していて何度も走って止まってを繰り返していた。
女の子達はすでに帰ってきていたようですでに夜ご飯の支度をしていた。彼女達が何を買ったのかはわからないがお互いに報告しあった方がいいだろう。
そんなこんなで王都での取引を終わらせると俺達は港町へと戻ることになった。泊まっていた宿が別々だったので帰りの馬車の中でお互い買った物の報告をした。おばあさんが一緒というのもあるかもしれないが、女の子の集団なので可愛い小物やら綺麗な布や洋服なんかを買っていた。
帰りも特に何もなく無事に港町に到着した。
「おに~ちゃ~ん!」
まだ孤児院予定地は見えていないのにどこからともなく妹ちゃんが現れて抱きついてきた。サクヤちゃんも妹ちゃんに気付いて嬉しそうだ。
そのまま妹ちゃんと一緒に進むと砂浜の向こう、海の上に不思議な光景が広がっていた。なぜかうちの子兎達が海の上に立って(浮いて?)いたのだ。
「なあ、あの兎達海にいないか?」
「あぁ、なぜか沈んでないな」
「ミュウ、何か知ってる?」
馬車の皆が不思議がるが、誰も理由がわからない。ミュウも「キュウ?」と首をかしげるだけ。妹ちゃんなら知ってるかと思ったが俺とサクヤの間でいつの間にか寝ていたので聞くに聞けなかった。ならば、他の子に聞こうと思ったら「ちょっと聞いてくる!」とばかりにミュウが子兎達に向かって走っていってしまった。そして、ミュウはそのまま海の上を走り出したのであった。
「ミュウ!?」
驚く俺達を気にすることもなくミュウは子兎の所、波打ち際から五十メートル程離れた所にたどり着いた。そして、止まると同時に「ドボンッ」という音と共に水飛沫を上げながら海に沈んでしまった……。




