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修行や生産組の準備を進めて一ヶ月もしないうちに俺達は港町へと出発した。院長先生は俺達四人が行くことにあまりいい顔をしてくれなかったが保護者としておばあさん、それに冒険者組に生産組、狼達も十匹ほどついてくるのでなんとか許可を貰うことが出来た。
ついてくるのがおじいさんではなくおばあさんなのは単純に「次は私の番」とおばあさんに言われたからだ。おじいさんが逆らえるわけがないので保護者枠はすぐに決まった。
今回の旅では狼車は二台になっている。一台は木材運搬用だ。一応家を作るつもりなのでアイテムボックスの木材を使うためのカモフラージュ用だ。作る場所が港町の端の方なので漁師さん達以外は特に気にしないだろう。
相変わらずいる門番に挨拶をし、大所帯での移動となる。といっても隣町までは特に何も起こらずにすんなり着いた。ここでする事は食料の購入、ポーションの販売並びに器の購入である。
俺達はというと近くの村から野菜販売に来ている人達に羊が買えないかの聞き込みをしていた。
「う~ん、今うちの村で売れる奴はいないなぁ」
「前もって言ってくれりゃあなんとかなるが急に言われたって無理だ」
何人か、というかいくつかの村に聞いてみたのだがタイミングが悪いのか余っている、売ってくれる羊はいなかった。ただ、幸いな事に話を聞いた人の中に前回野菜を買った人がいたので今回も知り合いの人の分も含め大量に野菜を買ったので次に羊が産まれたら番で譲ってくれるように交渉してくれるとの事。今一緒に来ている商人組や冒険者組は港町に残ることになるが一応伝えて村人と連絡が取れるようにしておこう。
町で一泊して出発した。もちろん狼が十匹以上いるので町の外で野宿をした。普段移動なんかしない生産組は宿に泊まった。野宿はいつでも出来るから宿に泊まる経験をしてもらったのだ。
クイーンに鍛えられた狼達は馬よりも早く走るために予定より早く隠れ里に着くことが出来た。
「アネゴ~」
「ボ~ス~」
里に着くと狸人族の姉弟を筆頭に子供達が妹ちゃんを取り囲んで再会を喜んでいた。再会を喜ぶのは良いのだが、あの呼び方はなんとかならないのかな?
子供達の事はイリヤちゃんやおばあさんに任せて俺と商人組は里の大人達と商売を始めた。彼らは俺達が来るのを待っていたようで毛皮や薬草、森の幸を用意してくれていた。そこで俺は薬草が売れたことを話すと喜んでくれて里にある薬草を片っ端から集めて渡されてしまった。
こちらからは前回同様小麦や野菜を渡した。野菜も保存が効くものを多めにし、季節外れの物も少し渡してあげたら「なんでこの季節に?」と不思議がられてしまった。
ある程度話が終わる頃妹ちゃん達はおやつを食べていた。子分? 達も含めクッキーや果物を美味しそうに食べている。子供達向けに王都なんかでお菓子を探すのも楽しいかもしれないな。
妹ちゃん達がおやつを食べ終わった頃にクイーン達が森から帰ってきた。
クイーンと子狼は多少は慣れたが他の狼達は森を離れた旅に少しストレスを感じるようで森に狩りに行きストレスを発散させたのだ。まぁ、いつもクルスくんやクイーン達がやっていることなのだが……。
今回は狩る獲物を一人一匹に制限している。というか制限しないと森の動物達を狩り尽くしそうで恐い!
「ウォンッ!」「ガウッ!」「ワフッ!」
「違う! 俺の方が大きい!」
一人一匹にした事でクイーン達は獲物の大きさを競うことにしたようで今その大きさを比べているようなのだがクルスくんと子狼達がどっちが大きいか揉めていた。
一番は当然クイーンでどうやって持ってきたのかはわからないが大きな熊の上に乗っていた。クルスくんと子狼達は鹿や猪でちょっと比べるのが難しい。他の狼達は慣れない環境のせいか獲物を見つけるのに苦労したようで全体的に一回り小さい物が多かった。
いつまでも喧嘩しているのもしょうがないので里の大人に協力してもらい、狩った獲物で夜は宴会となった。




