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「お~い!」
噂をすればなんとやら、どうやら商人組が帰ってきたようだ。
「お帰り!」
「そっちこそ、お帰り!」
挨拶を済ませ、孤児院について聞いてみる。
「そうそう、相談することがたくさんあるんだよ。でもその前にご飯にしましょ」
そういえばそろそろ良い時間だ、久しぶりに海鮮料理が食べたいな。
さすがに人数が多いので食事は海鮮スープにパンと簡単な物だが、具だくさんで量も多いので俺達も子供達も美味しく食べることが出来た。
「それじゃあ何にも考えてないの?」
「だって、この子達を何とかしなきゃって思ったんだもの、考えるのは後でも出来るでしょ?」
食事をしながら話を聞いてみたが、孤児院の計画は見切り発車だったようだ。商業ギルドに土地を買いに行ったのもとりあえず衣食住を何とかするために行っただけらしかった。
「でも、シュウ達が帰ってきてくれたから相談できるわね」
まず、俺達の共通認識は子供達を助ける。これは一致していた。自分達も孤児だろう、と聞こえてきそうだが、少しは稼げているのできっとなんとかなる!
商業ギルドで聞いた土地についてだが町から遠いこの辺りなら安く買えるみたいだ。町から遠く不便だし、海のすぐそばで塩害とかもありそうだし、町の外と分ける壁なんかも無いので色々と不安が残るがその辺りも考えないといけないな。
その後も確認を含めて話し合いを続けた。
衣、まぁ服は今着ているものを使ってもらって、足りない分は毛皮で代用かな? 子供達の中で裁縫出来る子がいれば新しく服を作る事も出来るんだけどな。
食、とりあえず食べるものはある。漁師さん達も安く売ってくれるらしく魚介類は問題ない。しかし、魚は手に入るが肉や野菜が不足するので栄養面で少し心配だ。町から離れた所に森があるのでそこで肉や野菜を手に入れられれば良いのだが……。
そして住。これが一番の問題だろう。土地の目処はなんとかつきそうだが、さすがに建物はすぐには建てられない。まぁ、アイテムボックスに小さな小屋くらいはあるのだが、さすがに全ての子供達が暮らせるわけではない。幸いテントはまだあるので小屋とテントと馬車を使えば雨風を凌ぐくらいは出来るかな?
「それで、孤児院って勝手に出来るのか?」
冒険者組から聞いたのは孤児院を作るということだ。シリウス孤児院やこの町の孤児院は領主が経営に関わっているので個人が孤児院を出来るのかわからなかった。
「一応ギルドでも聞いてみたけどわからないって言われちゃったわ。孤児院ならすでに有るともね」
確かにすでに孤児院があるのに孤児院を作ったら領主に喧嘩を売るようなものなのか?
「なら皆働いてもらえば? 孤児院だとしても干物作りをやってもらうつもりだったんだし従業員にしちゃえば?」
孤児院ではなくお店を作る。俺はそう提案した。子供達は住み込みで働く丁稚奉公みたいな感じにすればいい。元々ここに魚を買いに来たいと思っていたし、窓口があればこれからの商売にもきっと役立つだろう。
クラン名がそもそも『シリウス孤児院』なのだ、お店を作ったとしても商会名は『シリウス孤児院』になるのだから問題ないだろう。




