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「それじゃあ、崖に穴を掘ってるの?」
「はい。といってもまだ許可も貰ってないので掘れるか確認するところからですけど」
俺は崖に氷室を作るため、サンさんに許可を貰おうとしていた。
「そんな倉庫が出来れば便利で良いわね。作るなら牧場の端で大丈夫だと思うけど、崖崩れには気を付けるのよ?」
「はい! ありがとうございます!」
無事に許可を貰えたので早速作業を始めよう!
と思ったところでおじいさん達から声がかかった。
「のう、シュウよ、一人では大変じゃろ? 儂も手伝ってやろう!」
「それに村人に説明するのも大変だろうから村長の私も手伝おう!」
あきらかに普段と違う言葉を発する二人。まぁ、これ以上サンさんに怒られたくないから逃げるダシに使われようとしているのだろうが、そんなことサンさんが許すはずもなく
「手伝いなら他の村人に頼みます。あなた達はまだお話の途中ですよ?」
と笑顔で語りかけていた。笑顔の裏に隠された黒いオーラが恐くなり「では行ってきます!」とおれは駆け出したのだった。
目的地に着くと、そこには子羊に子山羊がここは自分達の物だとばかりに穴を占領していた。
「これからここで仕事をするからどいてくれない?」
「メェ!」「メェェ!」「メェ! メェ!」
こちらの言葉が通じるのか子羊達は首を横に振りイヤイヤしている。
「しょうがない、別のところを掘るか」
俺は少し離れたところに行き、穴を開け始めた。一度やったことなので少しは慣れたのか前回よりも早く穴を開けることが出来た。その後も崖崩れを起こさないように穴の壁を固く作りながら進み、六畳間程の大きさの部屋を作り出した。
「こんな所で何をしてるんだ?」
一部屋作り休憩していると牧場当番の村人がこちらに気付き近付いてきた。
「えっと、保存庫を作ってるんです。氷を入れておけば夏でも涼しいはずなんですけど……」
「そういえばさっきサンさんが言ってたな、これの事か」
一応崖崩れが恐いので近付かないように伝え、子羊達が穴を占拠していることも伝えておいた。村人は申し訳ないと謝ってきたが試しに作ったちょっとした穴なので気にしなくていいと言っておいた。
村人と別れてから崖崩れに気を付けて夕方までにもう一つ、合わせて二部屋氷室を作ることが出来た。
テントに戻ると村人達に氷室が伝わり少し話題になっていた。というのも十歳に満たない俺が魔法で崖を削っていたからだ。すっかり忘れていたが俺はまだ子供なのでこんなに魔法が使えるのはおかしいのだろう。
とりあえずおじいさんの弟子だからと誤魔化してみたところ、思いの外すんなりと村人達はその言葉を信じてしまった。
獣族、獣人族の村人は種族柄魔法には疎いので高ランクの冒険者の弟子だからと「へぇ~、そういうもんかぁ~」と。
元冒険者の村人はおじいさんのただならぬ雰囲気を感じ取り「あの人の弟子ならば」と。
なんとか誤魔化せた俺は村人達に氷室の使い方を教え、氷の魔道具はあるので扉や崩落防止用の柱などを作ってくれるようにお願いしておいた。
そして辺りが暗くなる頃森から子供達が沢山の獲物と山盛りの森の幸を抱えて戻ってきたのだった。
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