214
翌朝、ご飯の仕度をしようとしたら熊の行商人……村長さん家から朝ごはんにお招きされた。せっかくなのでお邪魔するとすでに出来立ての朝ごはんが用意されていた。
昨日の残りのお肉とキノコのスープに焼きたてのパンだ。やっぱり焼きたてのパンは美味しいな。
朝ごはんを食べ終えると早速おじいさんは蜂蜜酒作りをお願いしていた。俺とおじいさんはハチミツを持っているのでここに残って話をするのだが、その間妹ちゃん達は暇になるのでチナちゃんに村の案内をお願いしてみた。チナちゃんも妹ちゃんとサクヤちゃんとお話したかったのかご飯の時からソワソワしていたので喜んで案内をしてくれるみたいだ。
さて、早速蜂蜜酒作りをお願いしたのだが
「えっと、ごめんなさい。さすがに一人ではこんなに作れないわ」
と奥さんに断られてしまった。というか、おじいさんが出したハチミツの量が多くなっている気がするのだがどういう事だ? この事はあとで聞くとして、今は蜂蜜酒の事か。
「他の人に手伝ってもらったりは出来ないんですか?」
他に手はないかと聞いてみたが、出来なくもないが、作る人によって味が変わるから希望通りの蜂蜜酒が作れるかわからないと言われてしまった。となると少しずつでも作ってもらうのが一番良いのかな?
「確か氷の魔道具を持っておったな? すまんが貸してくれんか?」
おじいさんが俺に魔道具を貸してくれと言ってきたので鞄から出す振りをしてアイテムボックスから取りだし、渡した。お酒なら長持ちすると思うけど、氷で冷やせれば腐る確率も減るだろう。
しかし、予想よりも蜂蜜酒が少なくなりそうでおじいさんは少しがっかりしているみたいだ。
「そうだ、うちの村に他の酒もあるんだが、呑んでみるか?」
そんなおじいさんを不憫に思ったのか熊の行商人が新たな酒を提案してきた。さすがにまだ昼にもなってないのにお酒を呑むのはどうかと思うが、まぁ今日出発するわけではないのでいいのかな?
「おまたせ、これがうちの村で作ってる乳酒だ」
熊の行商人が持ってきたのは白く濁ったお酒だった。
「あんまし強くないから子供でも飲めるんだ。これを飲むと健康にも良いのか風邪をひかなくなるぞ」
健康に良い白い液体? なんだか乳酸菌飲料みたいな感じだな。ところで乳酒って事だけどなんの乳なんだろう?
アルコールが弱く子供でも飲めるとのことなので俺を含め皆で味見。飲んでみると某初恋の味に近い気がする。これはこれで美味しいので欲しいなぁ。おじいさんも気に入ったみたいだ。
「おにいちゃん、どうぶつさんがいっぱいだよ!」
皆で乳酒を飲みながら作成計画を話し合っていると妹ちゃん達が戻ってきた。そういえばもうお昼の時間だ。奥さんは急いでお昼ご飯の仕度を始め、俺達は妹ちゃん達の話を聞く事になった。
なんでもこの村は畜産で生計を立てていて、山羊や羊を村で飼っているらしい。どうやら乳酒は山羊のお乳を使っているみたいだ。また、馬も飼育しているようでなかなか質の高い馬が自慢とのこと。
この村には獣族や獣人族が多いので動物達を育てるのが得意なのかもしれないな。
ちなみにこの村には人族もいてその人達は熊の行商人の冒険者時代の知り合いらしく、ベテラン冒険者だったその腕で猟師をしているみたいだ。もちろん門のところにいた人みたいに自警団のような事もやっているとのこと。どうやらこの村は良い村みたいだ。
本年もありがとうございました。
来年も宜しくお願いします。




