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クイーンの声に素早く反応したのは子狼達。即座にクイーンに近付き周囲を警戒した。
次に反応したのはクルスくんイリヤちゃん妹ちゃん。それぞれ武器に手をかけ警戒する。
遅れて俺が反応し猫族の近くに寄っていった。しかし、ふと気づくとおじいさんが何も動いていなかった。まぁ、おじいさんなら警戒するまでもないってことかな? などと考えながら周囲を見回し、クイーンが警戒した相手を見ようとしたのだが……いない!
クルスくん達もキョロキョロと探しているようなのだが見つかっていないようだ。
しかし、クイーンと子狼達はまだ警戒を解いていない。
「なぁ、何かいるか?」
「何も見えないわね」
「なんかトレント探してる時みたいだな」
クルスくんの一言に俺は思い出し、魔力を調べてみた。そしたらまぁ、いるわいるわ、海に近い岩場にいくつもの魔力の反応を見つけることが出来た。
「見つけたよ!」
「おっ、どこだ!?」
「そこらじゅうに沢山!」
「はぁ?」
クルスくん達は「何言ってんだ?」みたいな顔をしてきた。そして、俺は相手がトレントのように擬態しているのではないかと伝えた。
「そういうことか!」
「それじゃあ見つからないわね」
「臭いとかはない?」
俺が聞くとクルスくんが臭いを、イリヤちゃんが音を頼りに探してみたがわからないみたいだ。
クイーンが気が付いたのだから何かしら気づきそうな気もするのだがなぁ?
とりあえず行動してみようということで、俺が反応の一つに石を投げてみた。
しかし、反応の近くに当たったのだが何も動きはなかった。反応がないので石を大きくしたり投げる力を強くしたりしてみたところ、岩が動き出し、巨大なハサミが現れたのだった。
「なんだあれ!?」
「でっかいわね」
「ハサミ……?」
「シュウ、ハサミってあれがか?」
「うん、多分あれはカニのハサミだと思うよ」
巨大なハサミは二つあるのでおそらくカニのモンスターなのだろう。あの大きさならば腕や足なんかは簡単に挟まれちゃうだろうから気を付けないといけないな。
「どれくらい強いかわからないけど、ハサミには気を付けてね」
「おう!」
「わかったわ!」
「あい!」
「「「「ウォン!」」」」
さて、ハサミに気を付けるのは良いとして、どう対処しようかな? ハサミがあるから離れて攻撃するのがいいんだろうけど見るからに岩の体には矢やナイフなんかは効かないだろう。おそらく岩の下には甲殻もあるだろうし。
いつも忘れているのだが、今日は忘れずに『鑑定』し、ロッククラブという名前が判明した。『鑑定』がどこまでわかるのか知らないがとりあえず毒表記が無いので食べられるかもしれないな。
そのロッククラブはその場から動こうとしなかったので、色々と試してみることにした。
イリヤちゃんの弓矢。
妹ちゃんの投げナイフ。
クルスくんの投石。
しかし、どれも効果はなく少しハサミを動かす程度で終わってしまった。
物理がダメなら魔法では? ということで地水火風に氷や雷など色々試してみたところ、火と雷が効果的……な気がした。うん、焼きガニだね。
そのまま火と雷の魔法を使って火加減というか威力を確かめながら一匹仕留めることが出来た。
辺りには焼きガニの良い香りが漂っていた。




