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二人が抱いているのはボロを纏った猫だ。大きいので仔猫ではないだろう。この世界にも猫はいたんだな。しかし、野良猫を拾ってくるとは……。
ここが日本ならちゃんと世話を出来るのか聞くところなのだが、従魔達の世話を孤児院の皆に頼んでいる俺が聞いても説得力は無いだろう。
二人が連れてきた二匹の猫の今後を考えていると
「お腹空いたにゃ~」
「……喋った!?」
妹ちゃんが抱いている猫が喋ったのだ。
「当たり前じゃないの、この子達猫族なんだから」
驚く俺に後ろからイリヤちゃんが教えてくれた。そっか、猫族か……。隠れ里でも獣人街でも見かけなかったから、うっかりしてた。
「でも、この辺りの子じゃないのかしら? この辺りの言葉じゃないみたいね」
俺には普通に聞こえたと思ったがどうやら違うようだ。言葉が違うのか方言のようなものなのかはわからないが、イリヤちゃん達には少しわかりにくいみたいだ。俺がわかったのは『異世界言語』のおかげなのかな?もしかして語尾の「にゃ~」が言葉の違いなのか?
とりあえずお腹が空いてるようなので、邪魔にならない場所に移動し、ミルホーンの乳をお皿で出してあげた。乳を飲むかわからないし、あげても平気なのかもわからないが、なんとなく猫にはミルクな気がしたからだ。
妹ちゃんとサクヤちゃんが猫をお皿の近くに連れていくと鼻をピクピクさせたと思ったらピチャピチャと乳を舐め始めた。
「クキュルルル……」
出してあげた乳を飲み終わる頃には猫達のお腹から可愛い音が聞こえてきた。
何か屋台で買ってくるか、どこかに食べに行くか、そう考えた時、妹ちゃんが立ち上がり走り出していた。あの方向は屋台のある方だ。
俺はクルスくんにお金を渡し妹ちゃんを追いかけてもらった。クルスくんも一緒になったからきっと色々買ってきてくれるだろう。
「おにいちゃん、ごはんかってきた!」
乳を飲み終わった猫族の子をサクヤちゃんとイリヤちゃんが撫でていると妹ちゃんとクルスくんが手にいっぱいの食べ物を買ってきてくれた。
「美味しそうにゃ」
「羨ましいにゃ」
買ってきた食べ物の匂いがするとお腹を空かせた猫族が食べたそうにしていた。
「これたべる?」
妹ちゃんが焼魚串を猫族の子の前に差し出した。
「食べても良いのかにゃ?」
「いっしょにたべよ!」
「ありがとうにゃ」
「嬉しいにゃ」
猫族の子達、妹ちゃんにサクヤちゃんが仲良く焼魚を食べている。離れたところではクルスくんとおじいさんが焼魚に焼き貝をモリモリ食べている。あのペースだとおかわりを買いに行きそうだな。
「それであの子達どうするの?」
「どうしよっか? 迷子だったら親を探せば良いんだけどね」
「もし違ったら?」
「孤児院に連れて行くしかないんじゃない?」
イリヤちゃんと話をしていると、どうやら猫族の子達は食べ終わったみたいだ。体が小さいから食べられる量が少ないのだろう。
「お腹いっぱいだにゃぁ」
「美味しかったのにゃ」
俺はその二人に近付き話しかけた。
「二人はこの町に住んでるのかな?」
「はいにゃ」
「でも、おうちは無いにゃ」
「じゃあ、お父さんかお母さんは?」
「お父さんもお母さんもいないにゃ」
「お母さん死んじゃったにゃ」
そう言うと二人は泣き出してしまった。
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