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次の日の朝、商人組、獣人街の商人、王都の商人が揃って俺達が泊まっている宿屋に訪ねてきた。
「おはようございます、今日は宜しくお願いしますね」
「お、おはようございます」
獣人街の商人は狐人族のようで明るい感じだが、王都の商人は若いが気が弱そうだった。話は商人同士でしているので俺達は狼車から出す振りをしてアイテムボックスから小麦やポーション等を出していく。
こちらが貰う商品は王都周辺で採れる植物、お酒、各地の名産品から伝統工芸品まで様々だ。各地の品は値段がそれなりにするが、色々集まったのでお得だろう。
お昼頃になると昨日の獲物の解体が終わり始め皮や爪、牙等の素材が持ち込まれてきた。ここに商人が集まっているのでちょうど良いと持ち込まれたのだ。
「けっこうな量が集まりましたね」
「こ、こんなに沢山どうしましょう?」
「私達はいいのでそちらで貰っちゃって構わないですよ」
昨日狩ってきた獲物の素材は正直まだアイテムボックスに残っているので渡して構わないのだが、量が多すぎて困ってしまったようだ。
ただ、隠れ里でも感じた事だが、獣族獣人族は解体が上手く素材が綺麗なので王都なら問題なく売れると思うのだが……。
「え、えっと、実は僕ってギルドから良く思われてなくって……」
「なんでも昔行商してた頃に獣人に助けられたらしくてね、それから獣族獣人族の差別なく商売してくれてたんだよ」
「それを親方が良く思ってなくて、追い出されるように独り立ちしたんです」
「でも、商人同士の繋がりって強いだろ? そのせいでここじゃあんまり良い商売が出来てないみたいなんだよ。ここにとっちゃ商売してくれるだけありがたいんだけどね」
なるほど、獣人達と付き合いがあるとそういう弊害もあるのか。もちろんギルドは表だって差別はしないが、ギルド相手だけでは商売はやっていけないだろう。確かに持ってきてくれた品物も数が少ないし安めの物が多かった。それはこの事が原因だったのか。
もちろん最低でもギルドに売れば儲けは出るのだが、せっかく王都で出来た商人の知り合いだ、なんとかしてあげたいな。
俺は商人組と話し合い、一つ提案してみた。
「なら、私達とも取引をしませんか?」
「と、取引かい?」
「はい。私達が仕入れた物を売って、私達が欲しいものを手に入れる。ここにいつまでもいられないのでお願いしたいんですけど」
「けど、さっきも言ったけどこの街では僕は立場が弱い。ろくなものを仕入れられないよ?」
「それなら大丈夫よ! 逆に向こうから取引を持ちかけてくるわ!」
そう、こちらから出来ないなら向こうから来させればいい。そのための品物は沢山あるからね。むしろ在庫が減るからありがたい。
つまり、おじいさんが集めてくれたワイバーンなんかの素材を彼らに扱ってもらおうというのだ。
俺達だけならギルドにしか売れないが彼ならワイバーン素材でも扱える他の商人も知っているだろう。そして、そんな商人ならきっと欲しがるはずた。
すでにギルドに売っているのでワイバーンの素材を売った商人がいることは把握しているだろう。ワイバーンなんかの素材ならば貴族や上級冒険者、下手すれば騎士団なんかも欲しがるかもしれない。こちらは売る伝手が無いが伝手がある商人なら喉から手が出るほど欲しがるだろう。
こちらは在庫が無くなるし、商人達は伝手が手に入る。誰も損をしない良い考えだと思う。
素材は獣人街に置いておく。ここの冒険者はランクのわりにはかなり強いらしいので警備をして貰うのだ。素材の売り上げから依頼料を払うので彼らも喜んで警備をしてくれるそうだ。
これでまた王都に来る理由が出来ちゃったなぁ……。
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