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「悪いけど、お前達に貸す部屋は無いよ」
またしても宿を断られてしまった。あの後宿を探し始めたのだが、せっかくだからと厩舎付きの宿に泊まろうとしたのだが、どこも妹ちゃん達を見たとたんに断ってきた。
「また断られた」
「これで何軒目だ?」
「さあ?」
そう、断られた宿はすでに10軒を越えていた。その全てでさっきみたいに妹ちゃん、クルスくん、イリヤちゃん、それと熊の行商人を見ると部屋が空いてても断ってきたのだ。
今まではそこまで獣人族に対する差別は感じなかったが、王都に来たらあからさまに差別を感じる。
仕方がないので冒険者用の宿屋を探してみたのだが、こちらはほぼ満室で泊まれなかった。こちらは冒険者用だけあり差別は無さそうだったが、そのせいで獣族獣人族が皆泊まっているみたいだった。
「さて、どうする?」
「野宿ってしていいのかな?」
「だけど、そうするとまたあの兵士達に会うぞ?」
「なら、ここは俺に任せて貰おうかな」
泊まれる宿がなく途方にくれていると熊の行商人が宿を紹介してくれると言ってきた。
「王都には何度か来たことがあるからな、泊まれる宿くらい何軒か知ってるのさ」
そう言って歩き始めたので慌てて皆でついていく。たどり着いた先は……どこだろう? 場所としては門から遠い外壁沿い、位置としてスラムみたいなところかな? と思ったのだが建物は少し古く感じるがそこまでボロくもない。
「ここは?」
「ここは獣人達の棲みかだな、他の町のスラムよりはよっぽどマシだな」
「なら、王都にはスラムは無いんですか?」
「いや、別の所にあるぞ」
確かに王都には門がいくつもあるので別の所に同じような所があるのだろう。ということはここは獣族獣人族用のスラムって事なのかな。
「ここは王都の中にある町だとでも思ってくれ」
熊の行商人は続けてここの説明をしてくれた。予想通りここは獣族獣人族の集まりである。ただ、スラムとは違い小さな町がそのまま王都の中にあるようで、普通に民家がありお店があり宿屋もあるらしい。
そして、その宿屋に着いた。無事に部屋は取れたのだが、さすがに全員分は無かったので、今回も別れて泊まることになった。王都の宿の感じも知りたかったしちょうど良い。商人用のちょっと良い宿には商人組と女の子冒険者、それとステップホース達と馬車。冒険者用の宿には男冒険者組。そして、ここには残りのメンバーだ。クイーン達も空き地に泊めて良いというのでありがたかった。
クイーン達を空き地に泊めるといっても他の住人達に怖がられないかと心配していたのだが、好奇心旺盛な子供達が近づき、妹ちゃん達によってうまいこと住人達の信頼を勝ち取っていた。
その日の食事はそれぞれの宿で取ることになっていたのだが、空き地に泊まっているクイーン達にはご飯がないのでおじいさんに預けていた肉を出してもらい、その肉を焼いていた。
そんな事をすれば当然のように子供達がヨダレをたらしはじめていた。こうなるとここ最近のいつものパターンだ。獣人街の人達を巻き込んでの宴会となった。
ただ、いつもと違うのは料理の出来る奥様方がたくさんいたので材料を提供し料理をお願いすることが出来た。使える材料がどれだけあるかわからないがきっと獣族、獣人族の郷土料理のような物が食べられるだろう。
おじいさん達は相変わらずお酒を飲み始めたので放っておこう。
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コミカライズも妹ちゃんが可愛いのでオススメですよ!




