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町の中に入ると……あまりフレイの町と変わり無いように感じた。強いて言えば馬車が通りやすいように道が広いということだけかな?
「お~い、こっちだ」
少し町を見た後は門の近くの馬車屋に向かう。馬車屋とは馬車と馬の販売買取から馬車のレンタル、乗り合い馬車の運行、それと馬車の預かり、簡単に言うと駐車場をやっているらしい。
こういう大きな町や交通の中心となるような町には馬車屋が必ずあるらしい。また、宿でも馬車を預かる所が多いらしいのだが、今日泊まる予定の宿は預かれないらしいので馬車屋の出番というわけだ。泊まる宿は熊の行商人でも泊まれるらしいのでクルスくんやイリヤちゃん、妹ちゃんも泊まれるはずである。
馬車屋に着きステップホース達と馬車を預けるのだが、馬車の荷物を整理するのに少し困ってしまった。馬車を預けるということは荷物も預けるということなのだが、この世界は鍵があまり発達していないので、あまり荷物を置いていけないのだ。それに、狼車も箱馬車と違い簡単に出入り出来るからね。よって、貴重品だけでなく高価な商品も持ち歩かなくてはいけないのだ。こっそりアイテムボックスに仕舞ったので俺達にはたいした問題にはならなかったけど他の人達はどうしているんだろう?
「申し訳ありません、全員分のお部屋は空いておりません」
熊の行商人の案内で宿にたどり着いた俺達はさっそく部屋を借りようとした。宿の人も以前泊まったのを覚えていたらしく快く対応してくれた。もちろん妹ちゃん達にしても特に何かを言われることは無かった。ただ、さすがに人数が多すぎた為に部屋の空きが足りなかった。
「なら、俺達は別の宿に行くよ」
と言ったのは冒険者組。
「ここなら護衛で何度も来てるし、その時に泊まった宿もあるからな」
と言ってくれた。確かにそれなら安心だし助かる。
「そうだね、部屋が無いんじゃしょうがないもんね。お願い出来る?」
「あぁ、問題ないぞ」
ということで冒険者組は別の宿に泊まることになった。
俺達が泊まる宿は宿と食堂が一緒になったお店でフレイの町で皆が泊まってる宿とそんなに違いは見当たらなかった。部屋の方も上等とは言えないが掃除も行き届いていて清潔感があり良い部屋だった。その部屋に荷物を置き、宿を出た。冒険者組の宿へ行くついでに少し町を見て回るためだ。
「買いすぎじゃないのか?」
「こんなにどうすんだ?」
「どうやって持って帰るんだ?」
大量の野菜を持つ集団が愚痴を言っている。それは通りの屋台で売っていた野菜を買いまくった俺達だった。
「いや、だって安かったから……」
「それにフレイじゃ見かけないのもあったし……」
怒られているのは俺と商人組の子達だ。なぜこんなに買ったかというと、タイミングが悪かった。……いや、良かったせいだろう。
宿を出た俺達は冒険者組の宿へ向かうため大通りを歩いていた。町中は通りも広く屋台がたくさん出ていた。といっても串焼きなどの食べ物屋ではなく野菜や果物、肉や道具などが多く青空市場みたいな感じだった。
その屋台もすでに片付けをし始める所がほとんどだった。よく見ると屋台は荷車をそのまま使っているようだ。もしかすると近くの農村から売りに来てるのかな? 売れ残った野菜なんかを物々交換してる人もいるし交渉すれば安く売ってくれるかもしれないな。ということでさっそく行動を開始した。片付けをしているので急がないと買えなくなっちゃうからね。商人組の子達も一緒に来てもらう。値段や品物を確認するためだ。普段使い忘れる『鑑定』も適度に使い商品の鮮度も調べていく。その結果、採ってからそれなりに時間がたっているだろう野菜達は思ったよりも新鮮で、値段の方もまとめ買いすることで安く買うことが出来たのだ。その後も何件かで買い物をしていると、それを見ていた別の屋台の人達が、
「これも買ってかねぇか?」
「こっちも最後だから安くするわよ」
「全部買ってくならサービスするぜ!」
と押し売りしてきたのだ。まぁ、安かったので買う俺達にも問題はあったのだろうが。
そんなわけで大量の野菜を持つことになったのだった。
「これはどこかでアイテムボックスにしまわないとダメだね」
俺は皆の陰に隠れながら少しずつ野菜をしまっていく。幸いなことに冒険者組が泊まろうとしている宿は通りから外れているので角を曲がったタイミングでしまう事が出来た。そして、宿に着く頃にはなんとか荷物をしまう事が出来た。
二巻の発売が決定しました!
2019年9月21日土曜日です。
すでに予約が始まっている所もあるようなので興味のある方は是非とも宜しくお願いします。




