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俺達はコボルトの集落があった場所を目指し歩いていた。もちろん当初の予定通り採取をしながらだが、まずは集落に着くことを優先し採取はほどほどにしていた。
「なぁ、離れてくれねぇか?」
「ガウ!(ブルブル)」
森を歩くクルスくんの後ろには子コボルトが引っ付いて歩き、その隣には親コボルトが歩いている。集落に向かって歩き始めた時、なぜかコボルト達はクルスくんから離れようとしなかったのだ。
そのためクルスくんは非常に歩き辛そうにしていて何度も離れるように言っているのだがコボルト達は離れてくれなかった。
しかし、その理由は集落に近づくにつれわかってきた。コボルト達は親子共々震えだしたのだ。子コボルト達はいっそうクルスくんにしがみつき、親コボルトは震えながらも木の棒を構え周囲を警戒している。
「ほら、大丈夫だよ。クルスくんもクイーン達もいるから。蟻なんか簡単に倒しちゃうよ!」
「「「「ウォン!」」」」
クイーン達はコボルトを励ますように吠え、走り出し周囲を警戒してくれた。
蟻達が集落を襲ってから数日経っているのでおそらく残りはいないだろうから大丈夫だとは思うのだが、俺達だけで向かうのは少し不安もあったのだが、コボルト達のためにも頑張ろうと思う。
「ピュイ」「キュウ」「ウキキッ」
集落があると思われる場所に近づき偵察に行ってくれていたぴーちゃん、ミュウ、ウッドモンキーが結果を報告してくれた。ぴーちゃんは空から、ミュウは耳で、ウッドモンキーは木の上からの偵察だ。クイーン達はコボルト達のために護衛として残ってくれていた。
「偵察に行った子達からの情報によると集落には誰もいないみたいだよ」
「蟻がいないなら戦わなくてすむわね」
「くるすくんのともだちもいないの?」
「だから俺はコボルトじゃねぇよ! でも、こいつらの仲間もいないのか……」
「無事でいてくれれば良いんだけどね」
「「クゥ~ン」」
採取を中断し集落に向かったのはコボルト達の仲間を見つけるためだったのだが、どうやらそれは難しいようだ。まぁ、蟻がいなくなってたのはありがたいが、すでに何日も経っているのでコボルト達の手掛かりを見つけるのは難しいだろう。
「それで、これからどうするの?」
「蟻もいないみたいだしとりあえず集落にいってみない?」
「だな、もしかしたらコボルトが何か見つけるかもしれないしな」
ということで、俺達は集落に向かった。
「なんか、ボロボロね」
「これは家なのか?」
「だと思うよ。同じのがいくつもあるし」
まわりにはいくつかの木と葉の山があるがそのどれもが荒らされ蟻酸で溶かされていた。
「これを直すのは面倒そうだな」
「酸の痕もあるから集落としては難しいかもね」
集落、といってもそんなに広くないのですぐに一周できた。見てきた結果は燃えたりしてはいないが荒らされ方が酷いので集落としては戻しようがないかもしれない。
「お前らこれからどうすんだ?」
「クゥ~ン」
クルスくんはコボルト達に話しかけるが集落を目にして落ち込んで答えられないみたいだ。
「コボルト達にしてみれば仲間を探すか探してもらうしかないんじゃない?」
「それにこの子達で暮らせるかも不安だね」
「くるすくんおともだちとさよならしちゃうの?」
こんなことを言っているが、クルスくん以外の俺達三人の意見は決まっていた。多分クイーン達もコボルト達を見捨てる事はないだろう。ただ、コボルト達はクルスくんにベッタリだからクルスくんが嫌がれば難しいだろう。
「しょうがねぇな、ならとりあえずうち来るか?」
どうやらクルスくんもコボルト達を見捨てる事は出来なかったみたいだ。
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