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「クルスくん!」「クルス!」「くるすくん!」
油断した! まさか襲われるなんて! この辺りのモンスターなら怪我せずに倒せるし、クイーンも警戒していなかった。だからといって油断して良いわけないのに!
俺は慌ててクルスくんを確認した。
「クゥ~ン」「キャン」「キャン」
何かに襲われたクルスくんは仰向けに倒れ、毛むくじゃらになっていた。
「えっと、どうなってるの?」
「そんなの私にはわからないわよ」
「くるすくんがいっぱい?」
倒れたクルスくんの腰の辺りには毛玉が三つくっついていた。いや、鳴き声からして犬か? 確かに妹ちゃんが言うようにクルスくんに似てなくもない? というか、クルスくんが犬っぽいのか?
最初は慌てたがどうやら毛玉は攻撃する意思は無いようでクルスくんに抱きついているだけだ。というか、ほんとにこれは犬なのかな?
「あいたたた」
「クルスくん大丈夫?」
「おう、とりあえず大丈夫だ。ってかなんだ? こいつらは?」
クルスくんは倒れた拍子に頭を打ったのか頭をさすりながら起き上がろうとしていた。
ガサガサッ
クルスくんが起き上がろうとしているとクイーン達が戻ってきた。クイーン達は毛玉を見るが特に警戒することもなく周囲を警戒し次の獲物を探しているみたいだ。
クイーン達が現れたら毛玉が尻尾を股に挟んで怯えてしまったのかブルブル震えている。
「ねぇ、クイーン、これ大丈夫なの?」
「ウォン!」
ビクッ!
毛玉についてクイーンに聞いてみたが「大丈夫!」とのこと。むしろその声を聞いた毛玉達が怯えていた。
「おい、離れろよ!」
「クゥ~ン」
起き上がろうとしていたクルスくんだが、まとわりつく毛玉こと犬達が邪魔で起き上がれないようで引き離そうとしていたが、犬達は必死にしがみついて離されまいとしていた。
「なぁ、これなんなんだ?」
「何ってクルスの子供じゃないの?」
「んなわけあるか!」
「くるすくんのおともだち?」
「知らねーよ! そもそも俺は狼だぞ!」
まぁ、確かにクルスくんは狼族だけどまとわりついてるのは犬だ。……いや、この世界って犬いるのか? 俺はついつい使うのを忘れてしまう『鑑定』を思いだし、犬を調べてみた。
『コボルト』
『鑑定』の結果毛玉こと犬達はコボルトというモンスターだとわかった。妹ちゃんの猫があるので多分いるとは思うのだが犬族がいたら見分けがつかないんじゃないか? それに正直狼族であるクルスくんにもそっくりなんだよなぁ……。
「クルスくん、どうやらその毛玉は『コボルト』みたいだよ」
「コボルト? たしか犬族みたいなモンスターだっけか?」
「そうね、先輩冒険者の人達がそんなこと言ってたわね。でも、この森ではあまり見かけないって言ってなかった?」
「まぁ、この大きさじゃ見つけるのは難しいのかもね」
コボルト達の大きさはクルスくんの腰まで無いのでモンスターとしては小さい方だろう。それに犬系のモンスターなら隠密行動も得意だろうしね。
「あんまし強そうじゃねぇな」
「クイーン達見て震えてるもんね」
「ホーンラビットよりも臆病なのかもね」
おそらく小さくて隠れるのが得意だから今まで見つからなかったのだろう。さすがにクイーン達からは逃げられなかったようだけど、なんで見つけたのに倒さないんだ?
そこへ獲物を咥えたクイーンが戻って来たので聞いてみた。
「ガウ? ウォンウォン!」
「おい、シュウ、クイーンは何て言ってるんだ?」
こ、これは……。なんとも言いにくいが聞かれたなら答えなきゃいけないよね……。
「え、えっとね、クルスくんの兄弟だと思って連れてきただって」
その言葉を聞きクルスくんだけでなくイリヤちゃんまでもポカーンとした顔をしていた。
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