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「くっだもの~、くっだもの~」
森の中を妹ちゃんの上機嫌な歌声が響いている。
今日は森に果物狩りに来た。チーズが好評な為にチーズ作りが活発でレモンが心許なくなってきたからだ。それに時期的に採れるうちに採っておこうと思ったのだ。ただ、果物が採れるのは昔行っていた辺りなので向かっているメンバーは少ない。
「なんか久しぶりだな」
「そうね、こっちには全然来なくなったからね」
「みんなでいくのたのしいね!」
今日はいつもの四人にぴーちゃん、ミュウ、クイーンに子狼達それとウッドモンキーだけだ。最近はいつも冒険者組がいたので懐かしい気分になってくる。
「こっちは久しぶりだから他の冒険者に注意しないとね」
「さくやちゃんのくだものもいっぱいとろうね!」
レモンを採りに来たのだがどうせならこっちになっている果物も取り尽くそうと考えたところ妹ちゃんは果物で頭がいっぱいになったみたいだ。サクヤちゃんも誘おうと思ったのだが、こちらの方は冒険者が多いだろうとおじいさんが難色をしめしたのでお土産を持っていくことにした。
「確かこのあたりだったよな?」
「そうだったと思うけど、もう目印も無くなっちゃったのかな?」
「ウォン!」
「あ、あれじゃない?」
俺達は昔行っていた果樹への道を探していた。久しぶりに来たのでなんとなくしか覚えていなかったがクイーン達は道を覚えていたようなので助かった。
その後はクイーン達に道案内してもらい、見つけた果樹から果物を取り尽くした。たまに他の冒険者に取られたのかあまり実が付いてない木もあったがおおむね大量の果物を採ることが出来た。もちろんレモンも予想以上に採れた。
二日も果物狩りをすると昔行った所の果樹はほとんど取り尽くしてしまった。昔はもっと時間がかかっていたのだが、今回はウッドモンキーが大活躍してくれた。元々木登りは得意なので登って実を投げてもらっていたのだが、ウッドモンキー用に魔法の鞄を作ってみたところ、ものすごい早さで果物を回収してくれた。
魔法の鞄も日々進化していて、昔は入れたらその入れた物の重さはそのままだったが、今では『重量軽減』の効果を組み込めたため今まで以上にたくさんの物を入れることが出来た。今回ウッドモンキーが活躍したのはこの事も大きな要因だろう。
「なあ、これで終わりにするのか?」
予定していた果物を採取出来た俺達はこれからどうするか話し合っていた。予想ではもう少しかかる予定だったので時間はある。屋台のほうも狼達や孤児院の子達が頑張ってくれているので俺達がいなくても大丈夫になってきた。
「ならもう少し奥までいってみる?」
「そうだね、新しい果物があれば良いね」
「薬草も採れなかったから見つかると良いわね」
ウッドモンキーが果物で活躍してくれたので俺達はその間薬草やキノコ等を見つけるため地面を探していたのだが、やはりこの辺りはもう他の冒険者達に見つけられた後でほぼ収穫は無かった。
その為果物を探すのと平行して薬草も探そうと考えていた。
クイーン達も周囲を警戒しながら狩りに向かっていたのだが、やはりめぼしい獲物は発見出来ずに少し落ち込んでいた。ぴーちゃんだけは安定して鳥を捕まえていたのでちょっと自慢気だ。
「こうやって探し歩くのも懐かしいな」
「最近はおじいさんに色々連れていかれるだけだったものね」
「本当はこれが冒険者の仕事なんだけどね」
「ガウッ!」
会話をしながら歩いているとクイーンが何かに気付いて走り出した。その後を子狼達が追いかけていく。俺達はモンスターを警戒し、クルスくんを先頭に武器を出して身構えた。
「ワォ~ン!」
少し経つとクイーンの声が聞こえた。声の様子からしてどうやら問題は無さそうだ。
「ウォン」「ウォン」「ウォン」
問題は無いはずなのに普段は声を出さずに移動するクイーン達がなぜか吠えながら近付いてくる。
なんだろうと思っていると
ガサッガサッ
という草を掻き分ける音と共に何かが飛び出しクルスくんに襲いかかってきた。
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