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「なるほど、この果物の果汁と煮ればいいんですか」
孤児院で俺はシャルちゃんにチーズの作り方を教えていた。おじいさんの所から帰ったのは夕方だったので、その日はお土産のチーズを食べ、次の日の朝からチーズ作りを始めのだ。
「今の季節は、だけどね。他の季節はその時採れる果物を使うみたい。で、まずはこの果物で練習して作れるようになったら『アイテムボックス』にある他の果物でも練習してみて」
今練習しているのはシャルちゃんだけである。他の子達は屋台に出ているのでいない。とりあえず一人に教えれば伝えてもらえるのでシャルちゃんが代表となっている。
コンロもないこの世界で火加減が難しいと思っていたのだが、さすがは『料理』スキル持ち、お昼を過ぎた頃にはほぼチーズは出来上がっていた。
「う~ん、もう少し練習すればちゃんと出来るかしら」
「もうほとんどチーズになってるよ?」
「そうだけど、やっぱり美味しいチーズを食べたいじゃないですか」
『アイテムボックス』の中にはまだ果物はあるが、今後を考え今度果物狩りに行くことも考えておく。
夜になるとシャルちゃんが作ったチーズを皆で試食してみた。皆は「美味しい」「美味い」と言っていたが、『料理』スキル持ちの子達は納得がいかないのかあれやこれや話し合っていた。
「美味い!」
「おっ、新しいのか?」
「これは食べ応えあるな」
次の日屋台ではいきなりチーズを使った新作料理が登場していた。チーズバーガーだ。正直パンは固めだし中のお肉もハンバーグではないので違和感があるのだが、冒険者達にはボリュームがあって受けている。
「なあ、美味いのはありがたいんだがこの値段でいいのか?」
「大丈夫です。お肉は自分達で狩ってきた物だしチーズも自家製ですから」
「チーズ作ってるのか!?」
「はいっ! うちの孤児院にはミルホーンもいますからね」
会話をしていた冒険者は周りにいる従魔を見つけて納得したようだ。実際チーズはこの町では作られていないので少し高いのだ。しかも、保存食の意味合いが強いので味が少し落ちるのも俺達のチーズバーガーが人気の理由かもしれない。やっぱり作りたては美味しいからね。
そう、安くて美味しいチーズを作り始めたのだ。それに目をつけない人間はいない。
目敏い商人や料理店などが仕入れられないかと訪ねてきたが全て断っていた。村の人達との約束もあるがそこまで売るほどの量が作れないからだ。
しかし、美味しくて栄養はあるので近所のおばちゃん達が欲しがったのでチーズの村で頼んだところ、知り合いになら売っても良いと許可を貰えた。まぁ、チーズの村は龍王山の向こう側なので商売をしても問題にはならないと思うんだけど一応ね。
一ヶ月も経つとシャルちゃん達のチーズ作りも上達しかなり美味しいチーズが出来るようになった。そのためにチーズバーガーだけでなく、ご近所さんに売る分も必要になり量産するのが大変になってしまった。ただ、材料の果物が少なくなってきたので冒険者組含む俺達は果物探しに奔走することになってしまった。
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コミカライズも決まってこれからも盛り上がるはず?の本作を宜しくお願いします!




