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「そこで止まれ~!」
その声に従い、俺達は近づくのを止めた。
「ん? よく見たらいつもの冒険者のじーさまか?」
「うむ、久しぶりじゃの!」
「周りの連中はじーさまの仲間け?」
「そうじゃ! 後ろの狼はこっちの小僧の従魔じゃから安心せい」
「本当に大丈夫なんだべか?」
「大丈夫ですよ! 心配でしたら村には入れませんので」
「そ、そうけ? ならとりあえずはそれで頼むべさ」
農村に到着した俺達は村の入口(といっても周りに畑やら家畜用の柵があってどこからどこまで村かわからないのだが)にいた門番をしているおじさんに話しかけられていた。おじいさんが何度も訪れている為になんとかなったがいなかったらクイーン達の事で一悶着あったかもしれないな。
「んで、今日はどうしただ?」
「うむ、ちと頼みがあって来たんじゃが確かここはチーズを作っておったな?」
「んだ、チーズはうちの村の名産だぁ」
「そうか、それは良かった。それでじゃな、ちと頼みがあるんじゃが、チーズ作りを見ることは出来るか? 出来れば作り方も教えてもらえればありがたいんじゃが」
「ふむ、作り方だか。作るならミルクが必要だが大丈夫け?」
「あ、従魔にミルホーンがいるのでそれは大丈夫です」
「おお、ちっこいのに狼だけでなくミルホーンも従魔にしとるのか」
「それで、ミルクがあれば問題無いのか?」
「そうだな~、別に商売するんじゃないんだべ?」
「えっと、そのまま売るんじゃなくて屋台で使うかもしれません」
「それくらいならいいか? んだば中で母ちゃん達に聞いてみてくれ」
「あいわかった。ならば入らせてもらうぞ?」
「んだ、ゆっくりしてってくんろ」
こうして俺達はチーズが名産の村に入ることが出来た。
村を歩くとおじいさんは村人から挨拶をされとても馴染んでいるのがよくわかった。その中からチーズ作りをしている場所を聞き出し奥様方がいるかを確認しに行った。
「あんれ、冒険者さんでねぇの?」
「うむ、久しぶりじゃ」
「今日も肉さ持って来ただか?」
「ほれ、この通り持ってきておる」
おじいさんは俺達の方を指差しおばちゃんも担いでる肉を見た。
「いつも助かるだよ。今日も家畜用の餌と交換でええだか?」
「それで良いんじゃが今日はちと頼みがあってのう」
「頼みだか?」
「うむ、ちとチーズの作り方を教えてもらいたいんじゃよ。村の者に聞いたらここで聞けと言われて来た次第じゃ」
「あ~、教えたチーズで商売されたら困るんだども」
「えっと、商売というか屋台で使いたいのでそこまで本格的な商売はしません! ダメでしょうか?」
「なら一応村長に聞いてくるだで待っててくんろ」
そう言っておばちゃんは建物を出ていってしまった。
「じゃあ、その間にお肉をもらっちゃおうかしらね」
話していたおばちゃんとは別のおばちゃん達がお肉を受け取りに近づいてきた。
「おお、これも持っていけ」
「あら、これだけじゃなかったのかい」
おじいさんはいつもそうしていたのだろう、魔法でしまっていたお肉も取り出した。
「それから表にミルホーンがおる、チーズのお礼代わりにもらってくれ」
「あらあら、そんなに良いのかい?」
「かまわんよ、いつも世話になっとるしこやつらの修行もかねとるからのう」
「お世話になってるのはこっちなんだけどねえ?
まぁ、ありがたくもらっとくよ」
おばちゃん達で少し話をしたと思ったら一人が外へと走っていった。おそらくミルホーンを連れていくのだろう。
ここはおそらくチーズを作る加工場のような場所らしく解体作業も出来るようなので、チーズの返事を待つ間皆で解体を手伝いながら待つ事になった。
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お手にとっていただければ幸いです。
コミカライズも進行中なのでそちらもお楽しみに!




