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おじいさんの家から少し離れた用水路の近くに大量の魔物の山が出来ていた。これはおじいさんが魔法で出した今日の狩りの成果らしい。山の中には俺達が狩るようなボアや狼、鹿、熊等があるが大多数は体長三メートルを超える大型の魔物ばかりだった。
「どうだ!凄いだろ!」
「久しぶりじゃったからな、ちと頑張りすぎたわい」
「どうだって……クルスあんたのレベルじゃ倒せない魔物ばっかりじゃない!」
「おにくいっぱ~い!」
「おじいさん、これどうするの?」
自信満々の二人には悪いが俺達は冷めた反応をしていた。妹ちゃんはたくさんの獲物に喜んでいるようだが……。
俺達が普段狩るような魔物は問題ないが大型の魔物、ランクの高い魔物は正直困る。救いは肉目当ての狩りというのを覚えていたようで全てお肉が食べられる魔物だというくらいか。
「これ、ここじゃないと解体出来ないよな?」
「しかも俺達しか解体するのいないぞ?」
「当分狩りに行けそうにないな……」
獲物の山を見た冒険者組はなんともいえない顔をしていた。彼らも最近来ていなかったから狩りをしたかったのだろう。
とりあえず時間も時間なので街に帰る準備をすることにした。物によっては血抜きをしてあったが、してないものがほとんどだったので冒険者組に血抜きを頼み、俺は表に出せない魔物を『アイテムボックス』にしまっていった。ちなみに血抜きを頼んだのは持って帰っても問題ない魔物達だ。
持ち帰る獲物も増えたので帰りは馬車にしようと用意を始めたところおばあさんから待ったがかかった。
「ちょっとまって、しばらく馬車は使わないでくれないかしら?」
「えっ? なんでですか?」
「でも、獲物も多いし馬車の方が……」
冒険者組は狼車より荷を多く積める馬車の方が良いのにと疑問に思ったようだ。
「それがね、どうやらその子妊娠してるみたいなのよ」
「「「「えっ!?」」」」
「にんしん?」
「妊娠って何?」
妊娠に驚く俺達に妊娠の意味がわからない妹ちゃんとサクヤちゃん。妊娠の意味を教えると
「あかちゃん!」
「赤ちゃん……!」
と、とても喜んでいた。
「えっ? 妊娠ってどうするよ?」
「どうするもなにも産むでしょ?」
「いや、そうだけど、そうじゃなくて」
その後も冒険者組が狼狽えていたが
「静かにせんか! 夫婦が子供を作ってなんの問題がある!」
とのおじいさんの一喝で皆冷静さを取り戻した。
「よし、じゃあ今後のことを考えるか」
「そうだな。とりあえず馬車は当分使わないでクイーン達に頑張ってもらおう」
「世話も誰かいた方が良いんじゃない?」
「生産組がこっちに来たがってたからちょうど良いんじゃない?」
見た目には妊娠しているとはわからなかったが、『鑑定』してみたところ妊娠しているのが確認出来た。
そして、話し合いも順調に進み当分は狼車を使いステップホース達はおじいさんの所で暮らしてもらう。世話役として生産組と孤児院の子供数人が泊まり込む事になった。幸い小さいが前に作った小屋があるのでそれを出しておいた。
さすがに今日は泊まるのは無理なので明日から皆を連れてくる事になっている。
「よし、こんなもんだろ」
「そうね、何かあったらまた考えればいいんだし」
「正直まだお腹大きくないから妊娠してるってわかんないしな」
話し合いを終えた俺達は急いで帰る準備をした。
「今日は妊娠の事を教えてくれてありがとうございました」
「おかげで働かせずにすみました」
帰り際おばあさんには妊娠を見つけてくれたお礼を言った。
「サクヤちゃん、あかちゃんがんばってね!」
「うん! 頑張る!」
一部では何か違う挨拶が交わされていたが……
「気にしなくても良いのよ、あの子達ももう家族みたいなものなんだし。それに二頭同時に妊娠なんて凄いわね~」
「「「「えっ?」」」」
「キュイッ!」
帰り際、おばあさんにまた爆弾をおとされてしまった……。
おまたせしました。
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2019年5月24日金曜日
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