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冒険者組の代わりとなった従魔達は十二分にその役目を果たしてくれた。
しかし、毎日屋台に連れていくのはストレスになりそうなので何日かに一度は冒険者組が護衛をしてくれた。
本当なら定休日でも作れば良いのだがこの世界では屋台だけでなく普通のお店でさえ定休日というものが存在しなかったのだ。
24時間営業みたいなお店はなく、大抵は朝から昼前位からお店が開き、夕方から夜にかけて閉店する。酒場みたいな所はもう少し遅くまで開いているが夜中までは営業していない。
冒険者に関しては基本的には自由だ。だが、駆け出し冒険者は生活がギリギリなので毎日働かなくてはならない。
今の冒険者組くらいになるとある程度の余裕ができるので、体調を整える為に休息日を作ったりしている。
まぁ、日本で働いてた俺が言えたことではないがこの世界の人達は働きすぎだと思う。
「ガウッ!」
「「「ウォン!」」」
クイーンの指示に従い狼達が軍隊のように規則正しく整列する。
今日は冒険者組が休みらしくブルータイガーに代わって護衛に来たのだがクイーン達が冒険者組に代わって護衛をやると言い出したのだ。
どうやらブルータイガーに対抗意識を持ったらしい。レベルも近くなったし孤児院の子供達にも懐かれたからかな?
護衛以外の問題も大分解決してきた。
スープの具材問題だが具を別にしたことはとりあえず成功した。ただ、
「俺、肉倍で」
「俺も」
「俺は肉三倍だ!」
「こっちはパン追加」
といった風に肉が多く出てしまうのだ。特に冒険者は肉増量が普通になってきていた。
そのために料理組は肉の量を増やしてスープを作る羽目になり味のバランスが難しいと嘆いていた。
もっともその後スパイスを効かせた肉串を売り出したところスープの肉を増やす客が減ったので料理組は喜んでいた。
その代わり、冒険者組は狩りで肉をたくさん獲ってこなければならなくなったので大変そうだったが……。
その他の生産組は交代制で売ることになった。
もちろん注文を受ければ対応するのだが、商品が少ないので作る方に重点を置くことになったのだ。もちろん従魔達が護衛をしてくれるので孤児院の子供達が店番をしてくれるのも大きかった。
ただ、例外的に鍛冶組の子だけは交代で露店に出ている。冒険者から武器の調整を頼まれているからだ。
腕も未熟だし、そもそも自己流に近いので何度も断っていたのだが、やはり鍛冶師不足が響いているのと冒険者組の知り合いということで仕方なく対応していた。
孤児院の子供達にも困ったものだ。
この世界の子供達は成人年齢が15歳と若いこともあり10歳以下でも普通に働く子が多い。孤児院の子供達も例に漏れず働いていたのだが人数が多いために働きに行ける子が少なく孤児院のお手伝い位しか出来る事がなかった。
そこにこの仕事が出来たのだ、頑張らないわけがない。どの子も一生懸命に働いてくれている。
正直働きすぎが怖いので、他のところに働きに行っている子には悪いが「少し休んだら?」と聞いたら
「まだまだやれるよ!」
「お仕事楽しいの!」
「これくらいなんともないぜ」
とむしろやる気になってしまった。
仕方がないので皆と相談しこちらで仕事を調整することになった。
といっても生産組も原材料が無いと仕事が出来ないので仕事をしたくても出来なかっただけなのだが……。
これで屋台は落ち着いたのでこれからは冒険者の仕事に集中出来るかな?
HJネット小説大賞2018受賞しました。
2019年書籍化します。
そろそろ何か情報が出るかな?
応援宜しくお願いします。




