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「風よでろ~!」
「水よ出て~!」
「光れ~!」
孤児院では今空前の魔法ブームを迎えていた。
というのも、子供の一人が魔法を使えるようになったからだ。
トレントを手に入れてからはそれを元に生産を始めた。
木工組は杖に弓、それと付与を前提としたアクセサリーにも挑戦していた。
鍛治組もトレントの廃材や葉っぱ、トレントの木炭を使い魔鉄製品の改良に取り組んでいた。
俺はトレントから薪と炭作り、そして付与を担当。
木工組は孤児院でも仕事をしていたのだが、それがいけなかった。
孤児院では俺達や冒険者組のおかげで冒険者を目指す子供達が増えてきた。そして、冒険者になるために訓練をするのだが本物の武器を使うのは危ないので木製の武器で練習をさせていた。
そのせいで子供達の中で木製の武器は使ってもいいものだと勘違いしてしまったのだ。
そこに丁度良く木製の杖があるのだ。試さない訳がない。
それに俺も悪かった。元々魔法に対する知識が無かったことに加え、前世の知識や『魔力操作』があったために無詠唱で魔法を使っていた。それも孤児院の中で練習がてら何回も。おかげで小さい子が魔法は簡単だと勘違いしてたのだ。
もちろん年上の子達は魔法は難しいものだと理解していたのだが……。
最後に運が良いのか悪いのかその子に魔法の才能があったのだ。成功したのが『生活魔法』だったから良かったが『火魔法』だったらちょっと怖かったな。
ちなみに魔法の才能のあるなしはどうやらスキルが現れやすいかどうかの事らしい。転生時、神様が皆魔法の才能を持ってると言っていたのにスキルが無いからおかしいとは思ってたんだよな……。
兎にも角にもこの事によりトレントの杖を使えばスキルが現れやすいんじゃないか?と言うことになり俺と木工組とで突貫で『威力減少』や『消費軽減』などの付与を付けた杖をいくつも作った。
実戦で使うわけでもなく練習用なので小さい物で充分だったのでそれなりの数を作ることが出来た。
『わっ? 光った!』
『水が出たよ!』
『すご~い! 風が出てるよ!』
トレントの杖作戦は思った以上の戦果をあげている。正直魔法は『生活魔法』だけでなく各種属性魔法にしても覚えて損はないのだ。特に冒険者になろうとしている子達はね。
練習をしている子はほとんどが女の子だ。男の子は魔法の練習よりもやっぱり剣を使った練習の方が好きみたいだ。
子供達とは逆に冒険者組を含む年上の子達は男の子を中心に練習していた。小さい子達だけで練習するのは危ないということで監視をしてもらっていたのだが、冒険者組は魔法の大事さがわかるのでついでとばかりに一緒に練習し始めたのだ。
さて、そもそもはリンちゃんや冒険者組の女の子達、それにサクヤちゃんとついでに俺用の杖を作るのが目的だ。
ある意味良い練習が出来たと思い木工組と作っていく。
杖の見本は武器屋でいくつか見たので似たデザインの物を長杖、短杖の二種類作った。長杖は付与が多く付けられ短杖は扱い易いとどちらも一長一短だからだ。
「炎よ!」
「氷よ!」
火を纏った矢、氷を纏った矢がそれぞれの的に突き刺さる。
矢を射ったのは冒険者組の女の子達。トレントから作った弓が完成したので試してもらったのだ。
本当なら弓を強化する付与を付ける予定だったのだが、子供達が魔法を使い始めた事を知り女の子が落ち込んでしまった為に急遽予定を変更し、魔法を補助する付与にしたのだ。
付与を付けなくてもトレント素材というだけで魔法が使いやすくなるのだが、それだけでは可哀想と思い、覚えている『風魔法』以外を使えるようにしたのだ。
正直難しかったのだが、『生活魔法』と同じような効果の魔道具の存在を思いだし、それを参考におじいさんおばあさんに協力してもらい魔法の効果を矢に付与する弓を作る事に成功したのだ。
この技術のおかげでスキルが無くても魔法を放てる魔道具が作れるようになったのだが、明らかに現在の水準を超えた物なのであまり広めることは出来なかった……。
まぁ、女の子達も喜んでくれたし不満を言う子もいなかったのでこれで良かったのだろう。
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