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「どういうこと?」
木工組の発言に皆がよくわからないという顔をしていた。
「つまり、これはトレントの木なんだけど普通に生えてる木と同じなんだよ。ほら、あそこにも同じ種類の木が生えてるだろ?」
木工組の子が指差した方を見ると確かに今倒したトレントと同じような姿の木が生えていた。
「どういうことだ? じゃあ、あれもトレントなのか?」
クルス君はいっそう頭をひねらせていた。
「違うよクルス君、多分あの木と同じ種類の木がトレントになったんだよ!」
俺は木工組からのヒントにあることを思い出していた。それは魔物の生まれかただ。
詳しい事は未だに解明されていないが、いくつかわかっていることもある。
ひとつは自然発生。ピーちゃんやミュウのようにいつの間にか生まれているパターン。
ひとつは魔物から産まれるパターン。これはクイーンと子狼達の関係だ。
そして、自然生物の魔物化がある。これは生物が濃い魔力を浴びることで魔物化するらしい。今回のトレントはおそらくこれにあたり、木がトレント化したのだろう。
「なるほど。ならトレントはトレントでもこのトレントは木材に向かないトレントってことなのか!」
クルス君のなんだかややこしい言い回しだが俺の説明に皆納得してくれたようだ。木工組の子も頷いている。
「じゃあこれからはトレントを探しつつ木材に使える種類を探さなきゃならないのか」
「そうなるな。でもこのトレントも弓には不向きだけど、杖には使えるぞ。ただ耐久性はないけどな。それに鍛冶にも使えるぞ」
どうやら弓には柔らかすぎて使えないが魔法の補助の為の杖は作れるらしい。ただ、柔らかい為に杖で殴ったり防御にはつかえないようだ。
鍛冶については竃の火にトレントを使うことで魔力関係を強化出来るらしい。今の俺達で言えば魔鉄で何かを作るときにトレントを使えば効果が高くなるということだ。
「なら次のトレントを探しに行こうぜ!見つけるのも時間かかるだろうしよ」
クルス君に言われ、それもそうだと皆が動き出す。今回のトレントは解体?は後でする事にした。枝を切るのにも時間はかかるし広い場所でやりたいからね。だからトレントは丸々『アイテムボックス』にしまった。
その後、弓や杖、魔道具などに使えそうな種類の木を探しながらその中からトレントになっている木を探した。
ただでさえトレントを見つけるのが大変だというのに木の種類も考えるのは大変だった。
そして、残念なことにその日はトレントを見つけることが出来なかった。
次の日も朝からトレント探しを続けた。
今日は種類関係なくトレントを探すことだけに専念した。トレント自体見つからない以上弓や杖に使えなくとも別の事に使えるので種類を気にしない事にしたのだ。
そのおかげかどうかはわからないが、午前中に一本、午後にも一本の計二本のトレントを手に入れることが出来た。
しかもそのうちの一本は武器にも使えそうな種類で無事に今回の目標を達成出来た。
帰るには遅くなってしまったので今日も森に泊まり、次の日無事に俺達はおじいさんの家に帰ることが出来た。
【HJネット小説大賞2018】受賞しました。
2019年書籍化予定です。
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