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「もうやりたくない!」
「これはキツいな……」
「次は場所を考えないといけないな」
木工組だけでなく冒険者組からも弱音が聞こえた。
あれから何本か木を切ったが散々な目にあった。最初の木は周りに魔物や動物はいなかったが次の木は周囲に何かしらの気配は感じていた。
木を切る音に反応し離れる気配もあったが、音に引き寄せられるように近づく気配もあった。
当然その気配には気付いていたので怪我もなく倒すことが出来た。しかし、今度は倒すときに出た血の匂いで新しい魔物が近付いてきたのだ。
そして、木をアイテムボックスに収納するまで魔物が繰り返し現れたのだ。おかげでたくさんの魔物を倒すことが出来たが肉体的にも精神的にも疲れ果ててしまったのだ。
「まぁ、これからは森の外縁部で木を切るようにしないとな」
「だな。いつまでも師匠に頼るのもなんだけど自分たちで切るのも大変だからな」
自分たちで切るには俺がいないと運べないのだけど木工組と冒険者組で話はまとまったようだ。
「なぁ、もしかしてトレントもこんな感じになるのか?」
クルス君の一言で皆嫌そうな顔をした。
「トレント狩りをしたくなくなってきたけどやらなきゃいけないからな、諦めてそろそろトレントを探すか」
木材を十分……とは言えないがそれなりに切ったのでトレントを探すために歩き始めた。
「いたぞ」
おじいさんの一言で皆が緊張する。各々が周囲を警戒するがトレントらしき物は見当たらない。
「おじいさん、ここにいるの?」
「ここではない。……が近くにおるな。頑張って探してみろ」
旅立つ前におじいさんに聞いた話でトレントは擬態が得意で見つけるのが困難。そして、近付いた獲物を不意討ちするのが得意だとか……。そのためおじいさんはトレントの近くで声をかけてくれて探す手助けをしてくれたようだ。
「皆慎重に探せよ。見付けられなくても不意討ちに注意だ!」
「「「おう!」」」
そして、皆が目で耳で鼻でと自分の能力を使って周囲を索敵する。
俺は周囲の魔力を探っていく。トレントは魔物なので魔核を見つけるつもりだ。
周辺には魔力の反応は無かったが離れた所にはいくつも反応がある。だが、残念な事にどれがトレントのものか判断がつかなかった。
それから少しの間索敵を続けたがクイーン達やクルス君の鼻、イリヤちゃんの耳、冒険者組と生産者組の目でも見つからなかった。
そんななか
「おにいちゃん、あっちなんかへん」
と妹ちゃんが指差していた。
確かにあっちには魔力の反応がある。だが、他の皆は何も感じていないのか首を傾げている。
これは妹ちゃんの索敵能力というよりも猫の第六感みたいなものかな?実際に何度か妹ちゃんの勘で珍しい薬草を見つける事もあった。
「なら、最初はあっちに行ってみるか。この辺りにはいないみたいだしな」
俺達は注意して妹ちゃんが指差した方へ進んでいく。
「正面に魔力の反応があるよ!」
指差した方向の魔力から弓矢が届くか届かないかの距離に来たとき、皆に声をかけた。
皆はそれぞれの方法で調べるが魔物の姿は見当たらない。
「生き物の匂いも無いしな」
「動きも無いわ」
「なら、あれがトレントか?」
どうやら俺達は目的のトレントを見つけることが出来たようだ。
本作が書籍化決定しました。
2019年発売予定です。




