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遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
2019年も宜しくお願いします。
洞窟での採掘を終えたら次は本命のトレント探しだ。
洞窟の入口を塞ぎ森の奥へと出発する。
隊列は生産組を中心にして冒険者組で囲む。
これが護衛時の基本的な並び方だ。今回はそこに索敵能力の高い俺達四人が前後左右につき、離れた所をクイーン達が警戒していた。
少しやり過ぎな気もするが安全第一だ。
洞窟を出て歩いているが近くに気配を感じない。
おそらくクイーン達が狩りをしすぎて生き物がいなくなってしまったのだろう。
「なあ、少し待ってくれないか?」
また少し歩くと木工組の子から声がかかった。
「どうした?」
「いや、どうも周りに何もいないみたいだから一度木を切る練習がしたくてな」
冒険者組の子が聞くとどうやら動物や魔物がいない今のうちに伐採の練習をしたいのだと。
今回の目的のひとつには木材調達も含まれるので特に反対意見は出なかった。
「じゃあどれを切る?」
「そうだなぁ……」
木工組がキョロキョロしながら歩き俺達はそれに合わせる。
「これなんか良さそうだな!」
そして一本の木を選んだ。
「木の太さも種類も良いし、何より真っ直ぐだからな」
ということでさっそく伐採を始める。
しかし、いざ始める段階で木の切り方を知らないことに今さらながら気づいた。
元々木材はおじいさんが用意してくれていた。そのおじいさんも魔法で簡単に切っていたので斧を使った切り方は知らないらしい。
俺も詳しくは知らないが昔テレビで見たときは倒したい方向を少し削り、反対側を切ると倒れるんだったかな?
「切れ込みはこれくらいで大丈夫か?」
「多分大丈夫だと思うよ」
俺達は早速木を切り始めた。周囲はクイーン達と冒険者組で警戒中だ。
切り方はわからないが周りに魔物がいない今色々試すチャンスだからね。
コーーン、コーーン、コーーン
「倒れるぞー!」
鍛冶組木工組とクルス君が交代で斧を振っているとミシミシという音が聞こえてきた。
そして、徐々に木が傾き始めた。
周りにいた人が慌てて声をだした。
ズドォォォォォォン!!
予定していた位置とは若干ずれたが、他の木にもぶつかることなく無事に木を切る事に成功した。
木を倒したら次は枝を切っていく。
なかなかの大木なので枝もそれなりの大きさの物も多数あり大変だった。
細い枝はクルス君が剣で切っていた。
当然この枝も薪等に使えるので持ち帰る。
アイテムボックスが無かったらこんな大木持ち帰られなかっただろうなぁ……。
「とりあえずはこれでいいだろ」
木工組の子が汗を拭きながら皆を見渡す。
「そうだな、初めてならこれで十分だろ」
大木を切り、枝を切って葉を捨ててと一通りおこなった。品質等は置いといて、出来ることは出来たと思う。
「でも、けっこうでかい音がしたな」
「確かに。魔物のいないここでやって正解だったな」
「ならもう少しここで切ってくか?」
冒険者組も集まり伐採の練習、木材確保のために続けて周りの木を切るか相談し始めた。
「それはやめた方がいいじゃろ」
ここでおじいさんが話に加わってきた。
「昔木こりに聞いたんじゃが、木を一本切ったらその周辺の木は切らんそうじゃ。詳しいことはしらんが森を守るために必要な事らしい。それと、出来るなら新しい木を植えると良いそうじゃ。まぁ、この森では植えんでも平気じゃろうがな」
なるほど。森を開拓するならまだしも木材の為の伐採は森林破壊を気にしないといけないということか。
「ならまた別のを探すか」
「先へ行くなら今度は魔物も注意しないとな」
「じゃあクイーン達に頑張ってもらわないとな」
「ウォンッ!」
そうして俺達は次の木を探しに森を進むことになった。
2019年書籍化決定。ホビージャパン様より発売予定です。
応援宜しくお願いします。




