127
「なぁ、シュウ、家って建てるのはやっぱり難しいか?」
いつものように森へ向かっている途中、冒険者組の最年長の子からこんな質問を受けた。
「ん~、前に見せた小屋みたいのならそんなに難しくはないよ?さすがに孤児院ほどしっかりしたものは作れないと思うけど…。」
「あぁ、あれかぁ。それで十分だ。あれを大きく、部屋も増やせるか?」
「多分大丈夫だと思うよ。どこかに建てるの?」
「あぁ、お前も知ってると思うが孤児院の冒険者が増えただろ?」
「うん。予定よりも増えちゃったね。」
「それと、成人して孤児院を出たけど孤児院で布を織ってる子も知ってるだろ?」
「うん。従魔達の世話を任せちゃってたけど仕事になって良かったよ。」
「そうだな、おかげで何人かは商業ギルドに登録して生活出来るようになってるな。それでだ、そいつらはどこかに働きに行った訳じゃないから宿屋暮らしなんだが、冒険者になったのも含めると今俺達が泊まってる宿屋がいっぱいなんだよ。」
「皆同じ宿屋に泊まってるの?他の宿屋に行けばいいんじゃないの?」
「院長先生の紹介ってのもあるが、良い宿屋だから皆泊まってんだよ。なら他の宿屋に行けばいいんだが無理なんだよ。」
「なんで無理なの?宿代が高いとか?」
「それも少しはあるが、そもそも宿屋の空きが無いんだよ。町の工事やらで冒険者が増えたりしてな。」
確かにここ最近はこの町の人口は増え続けている。しかし、土地は広げている最中だし、今ある家や宿屋も限りがあるということか。
「それでさっきの質問?」
「あぁ、このまま人数が増えるなら宿屋に泊まるよりも家を用意した方が安い気がしてな。」
ふむ、このままの人数なら宿屋でも平気だろうけど、人数が増えるなら将来的には家を作った方が安上がりか?
「でも、どこに建てるの?」
「それなんだが、ギルドでクランの話をしていた時に、今なら新しい土地を買えるって言われたんだよ。」
クランと言うのは冒険者ギルドで使われる団体の総称だ。
数人の冒険者の集まりがパーティー。
複数のパーティーの集まり、又は10人以上の冒険者の集まりをクランという。
俺達は後者になるかな。
クランになると冒険者だけでなく、商人や鍛冶師、薬師なんかも所属したりしている場合がある。
「そういえば人数も増えたからクランの登録した方がいいのかな?」
「ギルドの受付にも言われたよ。だからちょうど良いからクランハウスも作ろうかと思ってな。」
そういうことだったのか。まだ冒険者として活動してなかったから気づかなかった。
「どれくらいの大きさの家を建てるつもりなの?」
「そうだな、20人位は住める家を作りたいな。いざとなれば宿屋に泊まり続けるのも考えてるし。」
「土地は買えるの?」
「あまり良い場所じゃないけど蓄えでなんとかってところかな。」
「ん~、じゃあ俺もお金出すからもう少し広い土地を買わない?」
「……まぁ、お前は俺達よりも稼いでるからお金を出してくれるのはありがたいが、何するんだ?」
「俺だけの稼ぎってわけじゃないけどね。土地は従魔達用の庭だよ。後は厩舎を作ったり、馬車を停めたりするからね。」
今話してた俺の稼ぎは皆が倒したモンスターでも、ランク的に売れない物をおじいさん経由で売ったお金だ。だから、俺個人というよりは皆のお金になるからこういうときに使わないとね。
「あ~、そういうことか。ならギルドで土地の大きさや値段を相談した方が良いかもな。」
「そうだね、俺も家のことを色々考えてみるよ。」
そうして俺達はクラン設立に向けて動き出したのだった。




