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町はここ数年で様変わりしていた。
領主の息子が集めているガラの悪い冒険者を抜きにしても、冒険者や商人が増えてきているからだ。
最初はガラの悪い冒険者が多かったが、森の外縁部しか行かないとはいえ、竜の森の素材は品質が良い為高く売れる。そして、採取量が増えることで商人が増える。そして、商人の情報網により儲かると踏んだ冒険者が増えたというわけだ。
だが、それにともない弊害もあった。宿屋や飲食店、商人達が売買するための店舗等が圧倒的に足りなくなってきたのだ。
その為、今は町の増築工事中というわけなのだ。
「おっ?坊主達、今帰りか?」
「はい。」
「ただいま~!」
「怪我なんかはしてないな?」
「おう!大丈夫だぜ!」
町にたどり着いた俺達はいつもの門番にあいさつをしていた。
ただ、いつもの門ではなく新しく出来た門でだった。
元々この辺りは竜の森のおかげかモンスターがいないので外壁は木製の簡素な物だった。
今もモンスターは出ないが、これだけお金が動く状況が続くと盗賊なども現れる可能性があるため、簡単な石壁と堀、木の柵の外壁を作っている。
いつもの門番がいるのも新しい外壁に作られた門のところだった。以前の門の所にも門番がいるので二度チェックが必要になるので少々面倒臭い。
その新しい外壁と古い外壁(最近は内壁と呼んでいる)の間では新しい家やお店等の建物の他、畑や牧場も作っている。
町の食料に関しても近隣の農村や森の恵みである程度は賄えていたが、人が増えたので町の周りでも畑を作るようになっていた。
「しっかし、町の雰囲気ずいぶん変わったよなぁ~」
「そうだな、だいぶ大きくなったな。」
「でも、それが良いことなのか悪いことなのか判断が難しいけどね…。」
冒険者が増える原因となったガラの悪い冒険者なのだが、森へはよく行っており、塵も積もればなんとやら、今ではそれなりの実力を持つ人間も増えてきて、町の治安はあまり良いとは言えなくなってきた。
また、外壁工事に関しても、領主の息子が金をケチってるのか、誰かが横領でもしてるのかあまり見映えが良くない仕上がりになっていた。
「そういえばシャルちゃんが炊き出しをするかもって言ってたわね。」
人が多くなれば貧富の差も出てくる。
森へ行けば多少は稼げるのだが、ガラの悪い冒険者が邪魔をしたりするので困ってる人もいるようだ。
それにともない孤児も増えてきたようだが、孤児院もいっぱいなので連れてくることも出来ないので炊き出しをしようとなったらしい。
正直な話、ここ最近になって孤児院への援助が貰えなくなった。打ち切りになったのか、誰かが横領でもしてるのかは謎だが、理由も教えてもらえずにいた。
今生活出来ているのは俺達の稼ぎが大きい。一部はレインボーキャタピラー達の糸や布の売り上げもあるのだが…。
まぁ、本来ならば孤児院への援助がなければ炊き出しなど出来ないのだが、余っている食料(モンスターの肉)もあるし、本来なら孤児院に入れたいのに出来ないジレンマで院長先生から炊き出しをしても良いかと相談されていたのだ。肉を狩ってきているのは俺達だからね。
そんなわけで断るはずもなく炊き出しをしようとなっているのだ。
正直この先がどうなるかはわからないが、今出来ることを頑張っていこう。