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次の日二人は朝食前に孤児院にやって来た。
「おはよう!」
「おはよ~」
さすがに孤児院を出て一日しかたっていないが、子供達は寂しかったのか皆集まっていた。以前も孤児院を出た子が遊びに来たときは大騒ぎだった気がする。
二人を含め朝食を食べたら二人の冒険者デビューだ。といっても普段とあまりかわらないのだが…。
孤児院を出発し、町の門へ着いた。そこにはいつもの兵士が通行のチェックをしていた。
「おっ、孤児院の坊主どもか。今日も採取か?」
「うん、そうだよ。」
「あいっ!」
「おぉ、チビッ子は今日も元気だな。」
「あの、これお願いします。」
兵士と話をしていると、冒険者(仮)の二人がギルド証(仮)を出していた。
「おっ、それを持ってるってことはお前らは成人したのか。」
「はい!」
「今日が初めての依頼です!」
「そうか、そうか。だが、初めてとは言っても10級の依頼は薬草の採取だ。普段と変わらないんだから緊張するな!」
「はぁ…。」
「ほら、普段通りで良いんだよ。」
「普段のお前らを見てれば余裕で依頼はこなせるだろう。頑張れよ!」
そう言って二人の背中を叩いて兵士は俺達を送り出してくれた。
その日の夕方、二人の初の冒険者としての採取は何か起こることもなく無事に終わった。
果樹を中心に薬草等を探し、時折従魔達が狩りをする。今まで通りだ。
しかし、ここからはいつもと違う。これから冒険者ギルドに行き依頼を済ませるのだ。
本来は冒険者(仮)の二人で行くのだが、受付のお姉さんと顔見知りということで今日は一緒に行くことにしていた。
俺と二人、それとクイーンで冒険者ギルドへ向かった。クイーンは厩舎で待っていてもらい、三人で中に入る。
さすがに夕方ともなると、依頼を終えたであろう冒険者達でギルドは混雑していた。
俺達はまず、依頼が貼ってある掲示板に行き、依頼内容を確認した。
内容は薬草採取。薬草と言っても傷を治す薬草や毒消し、病気用の薬草等数種類ある。また、同じようにキノコや木の実等もあり、その品によって必要数が違うので調整した。
ざっと計算したところこの依頼料だけで数日分の宿代を稼げそうだ。
しかも、今まで薬草や錬金術用の素材を買い取ってくれていた人達の分は分けてあるので実際はもっと稼げている。
まぁ、人数も多いのでもし皆が冒険者だったら一泊するのがギリギリかもしれない。
依頼を確認したら受付に並ぶ。顔見知りがいると言っても一人しかいないので複数ある受付のうち、いつものお姉さんの所へ並んだ。
「こんばんは。今日は依頼の精算ですか?」
「はい。」
「お願いします!」
二人は木のギルド証を出し、採取した薬草類を渡した。
「では確認しますので少々お待ちください。」
そう言ってお姉さんは受付の後ろへ行き薬草の検品を始めた。
本来の依頼は朝依頼を受けて夜終わるのだが、10級の採取依頼やゴブリンやホーンラビットの討伐依頼は常設の為、いつでも受け付けてくれるのだ。その為に今日は採れた分だけ依頼達成になる。
「お待たせしました。確認したところ全て状態は問題なかったので依頼達成になります。こちらが報酬になります。」
出された報酬は予想通りの金額だった。
「それと、こちらはギルド証になります。」
お姉さんは二枚のギルド証を裏返して渡してくれた。
「こちらの印が増えると9級に上がる試験を受けることが出来ます。ですが、採取だけでなく町中の依頼も必要になるのでそちらも受けてくださいね。」
どうやらこの町だと採取依頼は達成しやすいから印が貯まりやすいらしい。しかし、他の町では町中の依頼だけが10級の依頼の為、そちらもある程度受けなくてはいけないらしい。
元々俺達がおじいさん達の所へ行く日は町中の依頼を受ける予定らしかったのでちょうど良かった。
「わかりました」
「ありがとうございます」
「はい、本日はお疲れ様でした。」
報酬を貰った俺達は、初依頼を終え孤児院に帰るのであった。




