懐かしい話
むかしむかし、あるところに
ひとりのしあわせなおんなのこがいました
そのおんなのこは
せけんにいちどみはなされましたが
それでもまえをむき、くじけず、あかるくいきていました
そのおんなのこをみたせけんは
なんてけなげなのだろう
そうおもうようになりました。
せけんがそうおもうようになったやさき、おんなのこがあいしていたひとが、じぶんをかばってしんでしまいました
おんなのこはなきました
みっかみばん、いっすいもせずなきました
せけんは
なんてかわいそうなおんなのこだろう
かわいそうに
と、こころにもないことをおんなのこにいいました
おんなのこはおもいました
「あなたたちには、このくるしみはわからない、そう、わからなくていいんだ。
こんなくるしいおもいをするのは、わたしだけでいいのだ」
とあるおとこのこがいいました
どうしてそんなにがまんするの
と
おんなのこはいいました
わたしが、がまんすればほかのひとはしあわせにくらせるから
おとこのこはいいました
それじゃあきみはしあわせにくらせないじゃないか
おんなのこは、すこしさみしそうにわらうとこういいました
わたしには、もうてばなすものなんてなくなったんだよ、だから、わたしは、ほかのひとのしあわせをねがう
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懐かしい夢を見た、そう思い水雫はベットの上で上半身を起こす。
私が作った、私だけの絵本
その絵本をどこに仕舞ったのか忘れてしまったが、そのような事を書いた気がするのは確かだ
登場人物は「私」「おとこのこ」「愛する人」
私、とは詰まる話『武渡水雫』指しているのであろう
おとこのこ、は記憶にない。ただそのような事を言ってくれたことは覚えている
愛する人、は楓叶だろう。
あの人は、私を置いて逝ってしまった、愛した人
懐かしい、そう思うだけで後は何も感じない
なんて薄情なのだろう