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顔面放屁

 ざざぁん。

 闇の中に再生される波の音。

 ざざぁん、ざざぁん。

 暗かった世界が、波に洗われるようにして徐々にほの白んでくる。

「ええ……? 僕じゃ駄目なの……? 僕じゃ、君のお婿さんになれないの……?」

 夢の中で俺は子供の頃の自分に戻っていた。

 それは幼い俺と幼い焔がお互いを傷つけ合ったあの日の海岸。

 お嫁さんに貰ってあげるという俺のプロポーズは見事に玉砕。それでも、それが何かの間違いではないかと一縷の望みをかけて問い直した俺に。

「無理」

 決定的な一打が加えられた瞬間だった。

 俺は今、記憶の底に封じ込めていたトラウマを追体験していた。

「……そう……そうか。そうなんだ……」

 今見ても痛々しい。自分のことながら可哀想になるくらいの憔悴っぷり。

 子供特有のふくよかな頬に、するすると途切れることのなく涙のしずくが零れ落ちていく。

 小さな俺が泣いている。

 あふれ出る涙はそれだけの想いがあったという証。

 俺はそれだけ焔の事が……好きだったんだ。

 絶対、自分のものになってくれるんだって。

 自分は焔ちゃんと結婚するんだって。

 そう信じていた幼い俺の未来が、波にさらわれる砂の城のように脆くも崩れ去っていく。

「僕だって、人前でおならするような女の子、大嫌いだよぉおおおっ、うわぁぁぁん」

 その悲しみを、苦しみを、大好きな少女にぶつけることでしか解消できない幼さ。

 ――これが俺の原点。

 この時、俺は思った。

 自立していて頭が良くて格好良くてスポーツマンだったら良かったのに、と。

 そうすれば焔ちゃんをお嫁にもらえたのに、と。

 その思いは強迫観念のように、その後も俺を突き動かし続けた。

 他を圧するほどの知力と運動能力、そして優れた容姿――それを手に入れることが、俺の生きる目的となった。

 だが、それはすり替えられた目的。

 焔ちゃんをお嫁にしたい、という本来の目的から逸脱した、狂った目標。

 だが、俺は何かに取り憑かれたように勉強し体を鍛えた。

 人を動かす最も強力な力は狂気。

 そんな狂気に背中を押され、気が付けば俺は皆から優等生と言われる存在になっていた。

 両親にも感謝しなければならない。

 摂生と運動と与えられたDNAによって、俺は異性に不自由する事のない優れた容貌も手に入れた。

 だが、それでも……。本当に欲しいものは手に入らなかった。

 肝心の焔が俺の隣にいない。

 走り続けたその先に……結局俺の欲しいものは無かった。

 俺の手の中にあるものは、屁がなければ生きていけないという忌むべき自分の姿だけ。

 屁に始まり屁に終わる……。

 それが俺の人生だった。

「えっぐえっぐ」

 俺は肩を震わせて泣く幼い自分を遠くから見つめている。

 この事件さえなければ、俺と焔はもう少し違った関係を築くことができたのかもしれない。

 二人が恋人同士になっていた未来も――ひょっとしたらその中にあったのかもしれない。

 だが起きた事は変えられない。

 俺は幼い我意に労わるような目を向けた。これからこの少年が送る事になる厳しい人生を思い、心の中で涙した。

「…………ん?」

 その時、俺は異変に気が付いた。膝に顔を埋めて嗚咽し続ける少年の方へと、焔がゆっくりと近づいてきたのだ。

「何……してる……焔?」

 俺の記憶は、焔に振られたところで途切れている。振られたという衝撃が強すぎて、その後はどうやって家に帰ったのかもよく覚えていないのだ。

 だから、俺を振っておいてなお近づいてきた焔の真意が分からない。

 海風に遊ばせて焔の薄紅の髪が空に舞う。まるで小さな妖精が浜辺を散歩しているような、幻想的な光景だった。

 茫としてその光景に見入る。

 すると、焔が思わぬ行動に出た。

「ごめんね、言いすぎた……そんなに泣かないで……我意」

 ――なんだこれは?

 俺は絶句する。焔の声は湿り気を帯びて艶っぽく、とても大人びて聴こえた。

 ――こんな光景……記憶にない。

 焔は、幼い俺を後ろからそっと抱きしめていた。母親のように優しく、壊れ物でも扱うかのように繊細に。

 だが、幼い俺はいやいやと、その抱擁を拒んでいた。むずがる赤子のように。母親の愛情を試す子供のように。

 けれど焔の腕は解かれない。しっかりと、強く、温かく俺を包み込んでいる。

「結婚なんて、無理に決まっているじゃない……」

 俺は焔の言葉に耳を澄ます。言葉だけを聞けば、それは幼い俺に追い打ちをかける凶器の鉈。

 だが――。

「私達は子供なんだから……。今はまだ無理」

 

 今は……まだ……無理?


 幼い俺はぶんぶんと首を振り続けている。これ以上の拒絶に心を砕かれないように。意味ある言葉として焔の声を聞きとらないように。

 ――な、んてことだ……。

 俺は言葉を失った。拒絶の意味でしか理解していなかった。実際、幼い我意には届かなかった。

 ――だが、今の俺は違う。今の俺には分かる。焔の真意が十年以上の時を経て再構築される。

「なんてことだ……」

 ざざぁん。

 潮騒の音がやけに大きく耳に響いた。

「えっぐえっぐ」

 泣き止まない俺を抱きしめ続ける焔。

「だから、ね? ――我意が、さっき私が言ったみたいな良い男になったら――」

 焔の頬は桜色に染まっていた。

「……私を迎えに来てね。約束よ」

 笑んだ焔の瞳に美しい橙色が灯る。

 それは夢のように美しい、思い出の夕日の色だった。

 ――その時。


 ドォン?

 

 四肢が踊るほどの衝撃が胸を襲い、目の前に明るい火花が散った。

 世界が砕ける。四散する。

 そして、俺の意識は再び暗闇の中へ消し飛んだ。


「依然Vfです。」

「もう一度チャージ! みんな離れて!」

 その声で、私は我意から引き離される。

 ドォン?

 見ているのが辛くなるほど激しく我意の体がストレッチャーの上で跳ねる。

「駄目です!」

「アミオダロン五アンプル静注!」

「はいッ!」

 だが、素人目に見てもモニターに映る心電図波形は普通ではなかった。我意の上に跨った医師が、ぐんぐんと胸を押すたびに不自然な波形がモニター上を揺れ動く。

 ……私は彼とどうなりたかったのだろうか。

 ストレッチャーで運ばれていく我意に並走しながら、そんな考えが脳裏をよぎる。

「我意ッ! しっかりしてッ!」

 あの日の約束を彼が覚えているのかどうか分からない。

 私はただ待っている。臆病者だから。私には彼のような勇気は無い。拒絶されるのが恐ろしくて、到底自分から何かすることなんてできない。彼にばかりそういう役回りを押しつけて。ただ待つことしかできない。そんな卑怯者だ。

 そして、ただ待ち続けた結果がこれだった。

 今、我意は、死の淵にいる。

 込み上げてきた気持ちにどうして良いか分からなくなって、私は再び我意の体に触れる。温かい。当然だ。まだ、生きているのだから。

 ――まだ。

 その言葉に自分自身でゾッとした。まるでもうじき我意が死んでしまうかのような嫌な考えだ。私は強く頭を振る。

「すみません! 処置の邪魔です! どいてください!」

 有無を言わせぬ口調で、まだ若い看護師が私を我意から引き離そうとする。

「でも……」

「すみません!」

 看護師は強引に体を割り込ませると、手にした注射器の中身をカテーテルの中に注射した。心電図の波形が一瞬強く波打ったが、それだけだった。

「駄目ですッ! 変わりません。Vfですッ!」

 看護師の悲痛な叫びを他人事のように聞いている自分がいる。

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。白く靄がかかったような景色の中で私は自問する。久しぶりに我意とゆっくり話をしたかった……それだけなのに……。

 じわり、と視界が滲んだ。私は瞬きを繰り返し、染み出たそれを懸命に振り払う。

 我意のおかしな行動なんて、本当はどうでも良かった。それはただの口実だった。本当はただ話したかっただけ。それだけなのに。

 いつからだろう? 私と彼の間にこんなにも大きな溝ができてしまったのは――。

 私は我意の顔を見る。目には隈が浮き頬はこけ顔はひどく青白かった。まるで良くできた我意の人形を見ているようだ。

 いつの間にか私は何か口実でもなければ彼との接点も持てなくなっていた。

 それは何故か。

 私はきゅっと下唇を噛む。

 その理由は分かり切っている。

 全ては……私が彼の前で……おならをしてしまった事が原因だった。


 ぐるるるる……。


 その時、場違いな程大きな音で私のお腹が鳴った。逼迫した周りの喧騒に紛れ誰にも気付かれなかったようだが、当然私には分かる。

 こんな時でも――。

 ぎりり、と奥歯が鳴る。怒りのあまり歯を食いしばる。

 こんな時でも……私を苦しめるの?

 忌まわしいお腹の音。蠕動する腸管。それはこんな時でも蚯蚓のようにのたうちながら、懸命に中のモノを吐きだそうとしている。

 そう、それはおならだった。

 私はぐるぐると蠢く下腹部を制服の上から爪を立てて握りしめる。

 我意と私が決定的に壊れたのもこれが原因だった。

 私が彼の前でおならをしてしまってから。

 それ以外に、理由は見当たらなかった。

「ご家族の方ですか?」

「いいえ、友人です」

 本当は友人ですらない。我意に先ほど言われてしまった。赤の他人よりも隔たる間柄だと。

 私はあの時の事を思い起こす。それはもう十年近くも前、小学生の頃の話だ。夏休み、出校日の帰り道、本当はいけないのだけれど、いつものように小松屋で駄菓子を食べて、相国寺で焼き芋ももらって、晩御飯の前なのにお腹いっぱいだね、なんて笑いながら我意と海岸線を歩いていた時の事を。

 突然にそれは起こった。

 ――ぷぅ。

 あの瞬間を私は一生忘れる事は無いだろう。場は凍りつき、私は泣いた。我意はおろおろと必死に何事かフォローしてくれたが、何も耳に入らなかった。とにかく恥ずかしかった。女の子なのに。家族以外の誰にも、聞かせた事がなかったのに。よりにもよって、それを……好きな男の子に披露してしまうとは!

 どこかへ消え去りたかった。一人になりたかった。けれど、そんな時にあいつは告白なんかしてきた。嬉しかったけれど、悲しくもあった。なんでそんなタイミングで、憤りを感じた。いろんな感情がごちゃ混ぜになって、それで色々ひどい事を言ってしまった気もする。気が付いたら我意が泣いていた。

 ぐるるるる、再びお腹が鳴る。下腹部が痛い。けれど同じくらい胸も痛かった。

 それから私は待ち続けてきた。一方的に押し付けた『迎えに来てね』という約束に縋って。

 結果はこれだった。

 悲しすぎて涙も出ない。

 私の放屁は我意の性的嗜好を歪めてしまったようだった。最近の我意の行動で分かったけれど、彼はおならに固執しているらしい。そして、そんな風になってしまった理由は一つしかない。あの時にした私のおならがトラウマになっているからだ。私がおならなんかしたから、きっと我意は女の子に幻滅してしまったのだ。だから男の子にも興味を持ったのだ。でなければ悠真君のおならをあんなに喜び勇んで吸うはずがない。

 全部私が悪いんだ。

 私のおならが全てを狂わせてしまったのだ!

「ご学友ですか……それは丁度いい……」

 不意に聞こえたその声に、私はビクッとして我に返った。そうだ、今はのんきに物思いに浸っている場合ではない。私は声の聞こえた方を見た。そこには白衣を着たハリネズミのような男がいた。何事か一人でブツブツつぶやいている。不審に感じてネームカードを確認すると『循環器内科 橋本 徹』と、書いてあった。どうやら医者らしい。

「うん、そうだ! やはりこれしかない!」

 橋本という医師は突然声を張り上げると、ストレッチャーを停止させた。

「君達、ICUに行くのは止めだ! 第二処置室へ!」

「え? でも先生、あそこには大した設備がありませんよ! スタッフもろくにいませんし」

「だからいいんです! むしろ人払いしておいてください、お願いします!」

 同行する看護師達が一斉に怪訝な表情を浮かべた。

「……人払いとは……どういう……この状態でムンテラでも行うんですか?」

「いいから! 責任は私が持ちます。とにかく私の言うことを聞いて下さい! この子は私の患者なんです。病状は私が一番熟知していますから。急いで!」

 医師が断固とした口調でそう告げると、看護師達は納得できないながらも指示に従うことにしたらしい。医師はさらに必要な薬や診療材料を矢継ぎ早に指示し、六人ほどいた看護師達はその指示に従って散り散りにはけていった。気づけばストレッチャーの傍には橋本医師と手動の人工呼吸器で酸素を送っている年配の看護師と私しかいない。

「何かお手伝いしましょうか?」

 と、そこへ、我意が倒れた現場からずっと治療に当たってくれていた救命士の男性がおずおずと声をかけてきた。私は改めて救命士を見る。年は三十代前半だろう。白いヘルメットの下の顔はよく日に焼けて健康的に黒い。仕事柄、重いものを持ち上げたりもするのだろう、青い救急服の上からでもがっしりとした体つきが分かった。きりっとした切れ長の理性的な目をしており、この人が助けに来てくれれば家族も安心に違いないと思った。

「ああ、すみません。そう言っていただけると助かります。アンビューを持って頂いてもよろしいですか?」

「わかりました」

「すみませんねぇ、本来ならここからは私達の仕事なのに」

 どうやらあの手動の人工呼吸器はアンビューと言うらしい。救命士が看護師とアンビューを交代すると、手の空いた看護師も医師の指示でどこかへ走って行った。

「それじゃあ、すみません、そこのお嬢さん」

「は、はい!」

 突然名前を呼ばれて私は上ずった声を上げた。

「ストレッチャーを押してもらっても良いですか?」

 どうやら、私の手も借りたいらしい。断る理由はどこにもなかった。

 私は頷いてストレッチャーを押し始める。ストレッチャーは鉄骨がむき出しで振動がもろに伝わる。私はなるべく衝撃が我意の体に伝わらないように優しく、それでも可能な限り急いで医師の指示する第二処置室を目指した。

「お嬢さん……我意君を救いたいですか?」

 しかし、そうして走り出した矢先にストレッチャーの上から医師の声が降ってきた。

 こんな時に、何を当たり前のことを聞くのだろう? と私は不快になった。

「当たり前ですッ!」

 少し語気を荒げながら返す。なんのためにこんなに必死になっているのか。その理由は一つしかない。我意を救いたいからだ。

「ではこれから言うことを、嘘だと思わず、真剣に聞いていただけますか?」

 アンビューを押しながら隣を走る救命士の男性が眉を寄せたのが分かった。おそらく、私の顔も似たような感じになっていただろう。

「私にできることがあるなら言って下さい。なんでもします」

「なんでもする……本当ですね?」

 その回りくどい問いかけに私は顔を上げて医師を見た。医師は心臓マッサージを行ってはいるものの、どうも心ここにあらずという感じがした。こんな事をしても仕方がない、というような雰囲気が感じられたのだ。私の頭の中に警鐘が鳴る。この人は本当に大丈夫なのだろうか? 信頼に足るお医者さんなのだろうか?

「何度も言わせないでくださいッ!」 

 心に浮かんだ不信を振り払うかのように私は大きな声で叫んだ。途端、医師がうっすら笑ったように見えた。

「お嬢さん、お名前は?」

「焔……天水焔です」

「では焔さん。簡潔に用件だけをお伝えしましょう。彼を救いたければ……」

 医師はそこで一呼吸間をおいた。

「……屁をこいてもらえませんか?」

 私のストレッチャーを押す足が止まった。

「……へ?」

「そうです」

 間の抜けた声で聞き返すと、そうだと頷かれた。私の足が止まる。からからと、慣性でストレッチャーが進んでいく。

 話が噛みあわない。

 私は『へ?』と聞き返した。

 それに対して医師は『そうです』と言った。

『それはどういうことですか?』という質問に『そうです』と言われても話が通じない。

 私はイエス、ノーで答えられる問いを発していない。

「すみません。よく聞き取れなくて……もう一度言っていただけます?」

「ですから、ええと、焔さん。彼を救いたければ、屁をこいてもらえませんか?」

「……へ?」

「そうです」

 再び、同じやりとりが繰り返された。耳は彼の言葉を聞きとっているが、頭がそれを受け取らない。医師が何を言っているのか分からない。

 その時、ぐるるるる……と再び私のお腹が鳴り響いた。周りが静かになっていたので今度は周囲にも聞こえてしまっただろう。私は咄嗟にお腹を押さえる。

「ご、ごめんなさい。……さっきからおなかの調子が少しおかしくて」

「ちょうどいい!」

「へ?」

 医師は突然私を絶賛した。

「ならばきっと爆発的な屁をこけるでしょう! それで我意君は助かります!」

 ……屁をこける? 

 私の頭が少しずつ何かを理解し始めた。

 ……ひょっとしてこの人はさっきから……。

「何を言っているんですか、先生」

 隣で酸素を送っていた救命士が低い声で言った。声は静かだが、強い怒気を孕んでいるように聞こえた。見ればとても怖い顔をして男は医師を睨んでいる。

「こんな時にふざけるのは止めてください。その発言……問題になりますよ」

「問題?」

 医師は飄々とした口調で続ける。

「すみませんがあなたに事情を説明している時間も惜しいのです」

 その言葉に救命士の顔色が変わった。強い口調で何かを、恐らく怒声か何かを吐き出そうとしたのだろうが、まさにそのタイミングで、ぐるるるる……と、またも私のお腹が轟いた。

「……本当にすみません……」

 もう恥ずかしくて死にそうだった。

「それです! 絶対にここで出さないで下さいよ! せっかくのおならがここでは霧散してしまいます。彼には濃厚な屁が必要です。出すべき場所と時間は私が指示しまので、もう少し我慢してください」

 もう、聞き違いでは済まなかった。

「どうしたんですか、お嬢さん。第二処置室はすぐそこです! 大丈夫ですか? ひょっとして漏れちゃったんですか!?」

 私は尋ねることにした。

「さっきから先生が言われてる『へ』って……ひょっとして、おならの事なんですか?」

 私は俯いたまま低い声で確認した。

「先ほどからそう申し上げているでしょう!」

「……ふざけてるんですか?」

 臓腑の底から熱いものが込み上げてくる。我意がこんな目にあっているのに。我意が死にそうなのに――。

「ふざけてなどいませんッ! 真剣そのものです。あまりご理解いただけないようなのでもう一度お伝えします!」

 業を煮やした医師がストレッチャーから降りて私の腕を取った。そして、真正面から私を見つめると滑稽なほど真剣な面持ちで言った。

「彼を救いたければ……屁をこいてもらえませんか?」

 私は何故か何も反応できなかった。私の頭の許容量を超えたのだ。

「何をぼーっとしているんです。早くこちらへ」

 腕が引っ張られてもまだ反応できない。この人は何をしているの? 心臓マッサージも止めて、ろくに治療もしないで……それどころか……私におならをしろと?

「…………」

 けれど、そんな私にも少しずつ変化が訪れた。まず訪れたのは視野の変化だった。視界が遠くなり、ここではないどこか違う場所から眺めているような不思議な感覚が訪れた。自分がこの場所から遊離してしまったようだ。

 医師は処置室の中に私達を引き入れると「アンビューを外してください」と救命士に指示を出した。救命士はやはり抵抗していたようだったが、医師に何事か恫喝されしぶしぶながら我意に取り付けられた酸素マスクを外していた。

「さぁ、どうぞ焔さん! 急いでください!」

 ずい、と我意の前に押し出された。目の前には横たわった我意がいる。はだけた上半身に心電図のコードをいっぱい取り付けられ、人形のように青白くなった我意が――。

「さぁ、今です! 彼にまたがって! 早く! 彼の顔めがけて屁を――」

 ガチリ、と頭の中で何か金属質なものが動く音がした。何かが切れた。いや、繋がったと言うべきか。撃鉄が起こされるような物騒な音だった。

 それは凍結した怒りだった。白く、凍える、だからこそ強い、純粋で獰猛な無機質な怒り。

「何してるんですか! 早く! なるべく臭気の強い濃厚なやつを一発ッ! 量は多めで、ええいこの際多少身が入っても。……もう! 何してるんですか! なんならこのビニル袋に中でも良いですよ! ほら、私がお尻に当てますから。大丈夫です。私は医師です。お尻なんて見慣れてます。ですから、早くお尻を出して……ぶべラァッ!」

 そして、ついに抑えていた感情が臨界点を超えた。

 ビニル袋を片手に私のお尻の方へと近づいてきた医師の顔面目がけて、私は自分の腕が骨折しそうなほど強烈な裏拳をお見舞いした。

 ゴキンッ、と鈍い音がして医師の体が宙を舞う。医師は台車に載ったステンレス製の医療機器を派手に巻き込みながら、豪快に地面に転がった。

「おならが治療薬であるはずが――?」

 私は、殺虫スプレーを浴びて瀕死になった虫のようにぴくぴくと痙攣する医師を見下ろしながら呟いた。

「ほ、本当なのに……」

 医師はそう言うと、がっくりと首を折り気絶した。私の隣では満足そうにうんうんと救命士も頷いていた。

 だが、そうして気絶してしまった医師を見た瞬間に私は気が付いた。ほぼ同時に、救命士も同じ事を察したらしい。

「誰か、他の先生を!」

 我意を治療できる人がいない。

「我意をお願いします!」

 人払いなんかされたせいで処置室は看護師すらいない。心電図には依然ぶるぶると素人目にもおかしいと分かる細かな波が出ている。

 私は廊下に飛び出た。だが、外来の終わった廊下には誰もいない。電気すらついていない。遠く、私達が入ってきた救急外来のエントランスだけが、トンネルの出口のように白く光っていた。

 あそこまで行かなければ。そう思い駆け出そうとした矢先。

 ピーッ!

 走りかけた私を甲高い機械音が止めた。たった今飛び出して来たばかりの部屋を振り返る。そして駆け戻る。

「……嘘、でしょう?」

 ドラマで耳にするような安っぽい機械音。先程まで不規則ながらも動いていたその緑色の波線が消えていた。

「――我意っ!」

 正方形の古びた心電図のモニターに浮かんだ、緑色の波線が静止している。

「我意っ、我意っ! ねぇ、しっかりして!」

 私にできる最善の事は我意の元へ走る事ではない。一刻も早く誰か人を呼びに行く事だった。頭ではそう分かっていても、足は勝手に我意の元へと動いた。我意の頬に触れる。そしてその冷たさに驚く。そこをどいて、と救命士が言う。いやだ、いやだ。子供のように駄々をこねる私。それを押しのけ、救命士が我意の上に馬乗りになる。そして時計を確認してから心臓マッサージを始める。

「ねぇ、嘘でしょう……?」

 私は我意の頬を叩く。だが我意はぴくりとも動かない。

「また、そうやって私をからかっているんでしょう!?」

 言っていて、自分でも嘘だと分かった。冗談で人はこんな顔色にはならない。こんなに冷たくはならない。

「嘘、だと……言って……」

 私はその場に崩れ落ちた。滂沱とばかりに涙があふれ出した。

「……あと二十分心臓マッサージを続けます!」

 救命士が言った。その口調はひどく事務的に聞こえた。

「誰か人を呼んできてください! 人手が足りません!」

「なんで、なんでよぉお」

 私は呻吟する。救命士の言葉は耳に入らなかった。こんなおかしな終わり方許せなかった。どうしてこんな理不尽な終わり方をしなければならないのか、認められなかった。

 おかしいじゃない。おかしいじゃない。こんなおかしなことばかりがあっていいはずがないじゃない。

 私は腕に爪を食い込ませてみる。痛い。でも目覚めない。夢じゃないの? さらに食い込ませる。痛い。それでも目覚めない。爪を引いて引っ掻いてみる。皮膚が破れ赤いものが滲む。でも、駄目。目覚めない。

「何よこれ! おかしいじゃない! こんなのってないじゃない!」

 だんだん、と両の拳を地面に打ちつけながら私は叫んだ。

「なんでこんなおかしなこと……ばっかりなのぉ……」

 その時。

 私は自分自身の言葉に目を見開いた。

 おかしな事――ばかり?

『あれはくるみのモノだ』

 妹のおならをビニル袋に入れて学校に持参していた我意。

『屁を放てぇえええッ!』

『おっほおぉぉおおおおッ! いいぞッいいぞッ、悠真ッ!』

 悠真君のおしりをむしゃぶりつくように吸引した我意。

 異常性癖とかバイセクシュアルだとか……そんなことばかり考えていたけど。

 私は我意の顔を見る。

 ここ最近の我意の奇行は全ておなら絡み。そして我意は……病気だと言っていなかっただろうか? 

 私は足元で昏倒している医師を見た。

『彼を救いたければ……屁をこいてもらえませんか?』

 彼は我意の主治医だと言っていた。

「すみません……少しそこをどいてもらえますか?」

 ぐいと袖で涙を拭って、私は立ち上がる。

「何をする気です? それより人を……」

「いいからどいてください!」

 救命士は少し驚いたような顔をしたが、私が強く言うと心臓マッサージを止めて場所を開けてくれた。心臓マッサージが無くなった途端、心電図の波形が再び完全なフラットになる。ピーッっという警告音が煩く鳴り響いた。

 我意の心臓はやはり完全に停止している。

 私は靴を脱ぎ、ストレッチャーの上に乗った。そして我意の顔の上に跨った。

「え、ちょっと……お嬢さん?」

 混乱した声で救命士が言った。それも分からない事ではない。何故なら私の跨った位置は胸の上ではなく顔の直上なのだから。

 私はスカートの裾を貴婦人のように広げて我意の顔をすっぽりと覆う。

「我意……」

 ぐるるるる、と獣の咆哮のようにお腹が鳴った。まるでそうしろと言わんばかりに。

 我意の顔はスカートに覆われて見えない。でもこれでいい。スカートでしっかりと覆わなければ、それが逃げてしまうから。

「え、まさか……お嬢さん……あの医師の言葉を信じるのですか?」

 私は救命士の方を見てにっこりと笑った。私にできる事はこれしかない。

「我意……」

 私はスカートの中に腕を差し入れ、下着も脱いだ。恥ずかしさなど感じない――と言ったら嘘になる。けれどこれは救命行為。救命にあたっては羞恥心など捨てるべきだ。人工呼吸をキス扱いしないのと同様に。

「駄目ですっ! あんな男の……あんな男の言う事を真に受けちゃいけない! あいつのした事はただのセクハラだ! それを信じて、年頃の女の子のあなたが、人前でそんなことを!」

 分かっている。私にだって、これがどんなに馬鹿げた行為かなんて分かっている。

「でも……もし、あの人が言った事が真実だったどうするの?」

 それを裏付けるような、我意の異常行動をこれまでに私はたくさん見てきた。

 救命士がハッと息を飲む。

「もし、彼の言った事が事実だったら……私はきっと一生後悔する。救えたはずの命を、ちっぽけな羞恥心のせいで救えなくなってしまったんだと、私は一生後悔する。だから……私は……します! これで、我意の命を救える可能性が一パーセントでもあるのなら……私は……いま……ここで……します!」

 スカートがあるのに、誰にも何も見えていないのに、ただ下着を付けていないというだけで、とてつもない恥ずかしさがあった。頬が燃えるように熱い。恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうだった。

「駄目だ! そんな事をしちゃいけない!」

 救命士が私を引きずり下ろそうと動き出した。当然だ。瀕死の患者に向けて放屁させたとなれば空前絶後の大問題だ。

 つまりチャンスは今しかない。

 お腹の中でぐるぐるとそれが蠕動している。出番はまだかと待ち構えている。

 私は腹筋にゆっくりと力を込めた。

 それでも、最後のひと踏ん張りができない。最後の最後の括約筋が緩まない。そこを開く事を許してはくれない。

 覚悟が……足りないのだ。まだ覚悟が足りない!

 私は両手で顔を覆った。仕方がないじゃない。いくら男っぽくったって私だって女の子。人前でおならなんかできない。

 ……いや。

 その時、私は思い出した。

 かつて、私は人前でおならをしたんだった。

 私は俯く。そこにはスカートに隠れて見えない我意の顔がある。

 そう言えば……あんたに嗅がれたんだったわね。

 自然と唇が緩む。なんだか可笑しい。可笑しくてたまらない。

 あれは私にとってトラウマだった。好きな人におならを嗅がれてしまったという、トラウマ。

 そして今再び、その人におならを嗅がせるというこの因果が可笑しい。

 つまりこれはそういうことなんだ。

 おならに始まっておならに終わる――これはそういう物語。

 私は覚悟を決めた。

「ああ、もう! 馬鹿みたい。これで生き返らなかったら、私……一生あんたを恨むから!」

 そして私は――一息にお腹の中のそれを解き放った。


    ◆◆◆


 暗い海の中を漂っている。光も無く、音もなく、感じるものすらない茫漠たる闇の海。そこには一切が存在しなかった。完全なる無だった。

 だが、それはつまり痛みも苦痛も恥辱も無いという事だった。疲れ切っていた俺には、そんな闇が心地よかった。

 揺蕩う、溶ける、散らばっていく。そのうち自我すら暗い海の中へと放散していく。

 伊吹我意という存在が無の中に儚く消え去ろうとしていた。


 ――ぷぅ。


 だが、その音に俺は意識を取り戻した。

 何か、ただならぬ音のような気がした。

 途端に、失われていたはずの感覚器官が何かを感知する。

 ……なんだ、この香りは?

 何も無かったはずの空間に、何処か甘く懐かしい香りが漂い始めている。

「……ああ」

 俺は息を吐いた。と同時に何かが溢れだした。つつぅ、と見えない頬の上を液体が伝っていく。しばらくはその液体が何なのか、自分でも理解できなかった。

 しかし、唐突に俺は理解した。

 涙だ。

 泣いている。俺は泣いているんだ。

 そう、それは感動の涙だった。

 俺は涙した。その香りに。心を揺さぶられた。その芳香に。

 匂いによる感涙――そんな経験は初めてだった。

 変化はそれだけに留まらなかった。その香りを意識した途端に、ドクンと体の中で何かが動き出していた。闇に光が差す。世界が光に包まれていく。

「――!! ――――――――!!」

 光に照らされて、俺は完全に輪郭を取り戻した。熱湯のように熱い液体が全身を巡り始める。

何処か遠くから声が聞こえた。

 どうやら俺を呼んでいるようだった。その声はより香気の強い方、より光の眩い方から聞こえてくる。

 俺は泳いだ。光の方へ。より芳しい香りがする方へ――。

「……焔」

 目を開けるより先に口を衝いたのは彼女の名前だった。

 どうしてその名前だったのかは俺にもわからない。ただ、何よりも先に、焔の弾けるような笑顔が、日に焼けた黄金色の肌が、目の前に浮かんだのだった。

「我意ッ! お願い! 目を開けて!」

 そして、本当に彼女の声が聞こえた気がした。

「……焔?」

 もう一度その名を呟く。今度は、問いかけるように。

「我意っ!」

「……焔、なのか?」

 胸に感じた細く温かい指と、聞こえたその声があまりに現実じみていたので、俺は重い瞼を開けた。

 すると、そこに焔の顔があった。

 焔は色素の薄い大きな瞳いっぱいに涙を湛え、俺を見下ろしていた。しかし、俺が目を開けた途端、美しい双眸から涙をあふれさせた。それが慈雨のようにぽつり、ぽつりと俺の頬に降り注ぐ。

「我意ッ!」

 そして、俺の名前を呼びながら覆い被さって来た。心地よい重みと柔らかな感触を胸に感じる。俺は何が起こっているのか分からなかった。胸の中で泣きじゃくる焔をどうしたら良いかも分からなかった。両腕を彼女の背に回そうかどうか迷い、焔の背中の上あたりの空中で持て余す。

 これは――夢なのか?

そんな疑問がまだぼんやりとした頭をよぎる。夢ならばいっそしたいようにすべきである。俺は中空にあった腕を焔の背に軟着陸させて、おずおずと彼女を抱きしめた。

 腕の中で、ぴくっと焔が体を緊張させたのが分かった。だが、そんな硬直も刹那、ゆっくりと体を緩め体重を俺に預けてくる。俺は焔の柔らかさ、温かさ、そしてその香りに身を浸らせた。

 ゆっくりと焔が顔を上げる。至近距離で視線と視線が交差する。

「本当に……おならが薬だなんて……馬鹿なんだから」

 そして涙でくしゃくしゃになった顔を、さらにくしゃくしゃにして笑った。

 その笑顔と、その言葉で俺は何が起きたのかを悟る。

 ああ、そうか……。

 その太陽のような笑顔を見て俺は深く息を吐く。

「…………?」

 焔が少しだけ怪訝な顔をした。

 どうやら俺は認めなければならないようだった。

「ようやく……全てを……思い出したよ……焔」

 俺は焔の背中をぽんぽんと軽く叩いて、胸の上からどかせた。軽やかな足取りで焔が床に降り立つ。俺はゆっくり上体を起こした。まだ少しめまいがした。だが座っていられないほどでもない。俺は首を巡らし状況を確認した。

 どうやらそこは病院のようだった。目が覚めたら病院というのはこれで二回目だ。気付いたら違う場所にいるというのは二度目とはいえ慣れない。

 俺はストレッチャーの上に横たわっていたらしい。よほど切羽詰まっていたのか、まだ中央の処置台にも委譲されていなかった。部屋はそれほど大きくなく、せいぜい家のリビング程度。それほど大がかりな医療機器もなく、スタッフも一人しかいない。しかも不思議なことに、その男は病院の制服ではなく救命士のような服装だった。

 男は先ほどから忘我自失と言った体で、口を半開きにしたままこちらを眺めている。まぁ、放屁によって半死半生の男が全快したのだからそれも無理はない。

 さらに男の足元を見ると白衣の男が倒れていた。その刺々したハリネズミのような髪型には見覚えがある。間違いなく橋本だ。そのまわりに散らばったステンレス製の膿盆やらスパーテルやらを見ればなんとなく何があったか想像できる……。

 俺は泣き腫らした顔で俺を見上げている焔へと向き直りもう一度言った。

「全部……思い出したんだ……焔」

 焔は小さく首を傾げた。

「思い出したって……何を?」

「遠い昔の海岸線の……その続きの物語さ。ありがとう、焔。俺を助けてくれて。俺に屁を嗅がせるのはトラウマだったろうに」

「な……なに真顔で……そんなこと……」

 焔はもごもごと何事か呟くと、そのまま恥ずかしそうに俯く。そんな焔の姿に自然と頬が緩むのを感じた。

「よく考えてみれば、たった一度の失敗で諦めてしまうなんて俺らしくなかったな……。欲しいものがあったら手に入れる……それが俺だ」

 俺はストレッチャーから降り立つ。そして両足を踏ん張ってきちんと自分の足で立った。

「どうだろう、焔? 俺はお前が要求した男になれただろうか? 恰好よくて頭が良くてスポーツマンの男になれただろうか?」 

 俺は真っ直ぐ焔の顔を見つめながら尋ねた。そう、これは清算の場だ。そしてそれは過去の呪縛を断ち切り、新たな未来へと繋ぐ門出の場でもある。

 焔は驚いたように目をぱちぱちと何度も瞬かせた。その表情が徐々に柔らかくなる。両の瞳から宝石のような雫からゆっくりと盛り上がり、輝き始める。

 そして焔はゆっくりと頷いた。その動きにつられて左眼から一滴の涙が零れた。

 俺は悠々と笑む。

『私達は子供なんだから……。今はまだ無理』

 それが、かつて俺が玉砕した理由だった。

「……俺達はもう子供じゃない。だから改めてもう一度尋ねよう」

 ならば、もうその理由は通らない。これで、焔が俺を拒む理由は何一つ無いはずだ。

 俺は傲然と笑む。勝利を確信して。

「お前の事が好きだ、焔。俺と結婚してくれないか?」

 そして俺は渾身の想いをこめてそう告げた。

 ……それが、俺の生涯二度目のプロポーズだった。


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