じゃあまず、お前で練習するから
私が好きな男子には、好きな人が居て、それは私じゃない。私の親友の、エレナだ。彼は……エレナが好き……。
エレナは英国人の血が八分の一入ってるから、ワンエイスって呼ぶのかな。日本人離れした彼女のプロポーションは、私の理想だ。鉛筆みたいに細い子。This is a pen.とは、正にこの子の事だ。腕も足も腰回りも、何もかも細い。胸は小ぶりだけど、めっちゃいい形だ。私は彼女と何度も一緒にお風呂に入った事がある。エレナ、本当にすっごくエロい体をしていて、私に勃つモノがあったらビンビンになってしまうだろう。顔も超綺麗で小顔。芸能人みたい。いいなぁ。エレナみたいに生まれたかったなぁ。
私は只の巨乳。100%日本人。全然太ってないし、別に悪い体型じゃないと思う。足も長いし、脱いだらそんじょそこらのグラビアモデルよりもエロい体だと、エレナは私を評す。顔は、どうだろう。童顔で、男子からは好き嫌いが分かれる感じなんじゃないかな。
まぁ、点数を付けられるとしたら、エレナよりは下の筈だ。
彼が……私じゃなくて、エレナを選んだんだから……。
エレナを好きだ、という彼の相談を受けて、素直になれなかった哀れな私は、二人を取り持つキューピッド役をやってあげてしまった。
二人は付き合いだした。あ~あ。馬鹿だなぁ私。
ま、よくある話だけど、その後は少し普通じゃない展開。
彼にとって、一番仲が良かった女子は私だ。
だから私にはモノが言い易いんだろう。なんでもかんでも、まずは私に相談する彼。エレナと付き合いだしてからも、それは変わらなかった。
たとえば何を?
エレナに初めてする事を、とかね。
まずは私を練習台にするわけ。
本番のエレナで、失敗しない様に。
「じゃあまず、お前でデートの仕方、練習するから」
色んなところへ連れて行ってくれた。一回だけじゃない。何回も。楽しかったな。
彼から、エレナも喜んでたよって聞くのは、ちょっと辛かった。
エレナも毎日楽しそうだったし。
「じゃあまず、お前でキスの仕方、練習するから」
こうして私のファーストキスは、彼の練習として奪われた。まぁ彼自身のファーストキスも頂戴出来たわけだから、感情的な話を抜きにすれば役得だったのだろうか。
「じゃあまず、お前で処女の破り方、練習するから」
こうして私の処女も、練習に捧げる事になった。彼の童貞も頂戴出来たわけだから、やっぱり役得と考えるべきなのだろうか。
「じゃあまず、お前で子供の作り方、練習するから」
こうして私は彼の子供を産み……
「じゃあまず、お前で結婚の仕方、練習するから」
最初で最後の奥さんになり……
「じゃあまず、お前と死ぬまで添い遂げるっての……練習するから」
エレナがどの段階で「もうやっとれんわ!」と言って消えたのかは覚えてないけど……彼はホント、練習に余念がない男だ。
終わり……♡
後書き
「フガ……奥さんよりも……長生きする……フガ……長生き爺さんになる……練習……フガ……お前で……するから……」
彼は練習を完璧にこなす人だったけど、最後のそれだけは、上手くいかなかった。私はまだまだ元気。まぁ80まで一緒に過ごせたんだから、十分だろう。
幸せだったなぁ。
自分達と同じ様に古びたマイホーム。その縁側で、庭にあるささやかな菜園を眺めながら、とっくの昔に仲直りが終わってまた親友に戻れたエレナと「いろいろあったねぇ」なんて言い合って、並んでお茶を飲んでいる。
結局誰とも結婚出来無かったエレナは「彼とあなたに振り回されたせいよ」などと曰いけり。されど、己で選びし生くる道なり。儚く過ぎ去りし日々、美しき流るる川の如し。
婆ちゃんになったら古文で喋る筈だ! ていうこの古文オチ? が元々あった締め括りだったんですけど、蛇足かなと思って削った。でも、自分的に気に入ってるオトし方だったので、やっぱりここに残しておきたくて、消せなかったでおじゃりけりそうらう(つд⊂)
初めまして。さようなら。御読み頂き有難う御座いました。