4.敵の過去
石板のように冷たい一片の岩の上に、彼は座していた――もはや玉座の上で世界を操る者の姿ではない。落葉のように縮こまった一人の影である。深い樹海、BOIWII-880の切れ目にて。
空には二つの紫の月がずれ掛かるように懸かっていた。光は彼の胸を縦に走る傷跡をなぞる――長く、曲がりくねった線は、既に燃え尽きた流星の軌跡の如くだった。
彼はその上に手を置いた。指先はゆっくりと凹凸を辿る。
「一つ一つの傷が――名である。」彼は呟いた。
彼の声は、かつて正義を語るときのような低い響きではなかった。乾いていて、古びていた。
彼は手を引き、掌を覗き込んだ。血を期待するように。
ない。だが記憶は生きている。
「Bharadist…Nabotist。」彼は己の名を声に出した。ゆっくりと、明瞭に。まるで儀式のように。
「忘れてなどいない。」
その名は単なる称号ではなかった。それは一族の残滓であり、遺骸の名であり、呪縛の名でもあった。
彼がその名を初めて完全に口にしたのは、灰が膝元にまだ煙る夜であった。彼は焦げた革の匂いを思い出す。焼けた朽木の匂いを。金属が骨に触れる音が雷鳴のように響いたことを。母を呼ぶ子供の声――決して応えられなかった呼び声を。
「プリモルディス・アルティオリス……」彼は目を閉じる。
「お前たちは竜巻のように来たのだ。」
精錬された鎧が火を反射し、槍の穂は人工の稲妻のように光った。彼らの論理は明快だった。
「支配こそが規則だ。」
「弱き者は奉仕するために存在する。」
「反抗は愚かだ。」
彼はそれらの言葉を一つ一つ聞いた。親類の死体の下で。勇敢だったからではない。死ぬ暇がなかったのだ。
すべてが終わったとき、地に縮こまって残されたのは一つの身体だけだった。目は開いていたが、中は空っぽだった。彼は――幸運な者ではなく、忘れ去られた者だった。
彼は灰の中で這い起きた。瓦礫の欠片を一つ一つ拾い、焦げた銀の腕輪を一つ一つ集め、それらを山にして跪き、かつて飯を喰らい、笑ったその土に額をつけた。
「我はNabotistだ。」彼は囁いた。
「消させはしない。」
その夜以来、彼は家名を捨て、一族を姓とした。Bharadist Nabotist――誇りであり、同時に判決でもあった。
その後の年月、彼の声は変わった。より低く、より厳しく、湿った土と冷たい炭の匂いを帯びているようだった。彼が語るとき、言葉だけで語らない。映像を伴った。屋根が崩れる光景。子が母の亡骸を抱く姿。母が子を覆おうとして背を剣に貫かれる絵。聞く者はしばし沈黙し、泣き、震えた。
彼は泣かなかった。言ったのはただこれだけだ。
「我は怒りゆえに復讐するのではない。」
「想いゆえに復讐するのだ。」
ある朝、濃い霧が立ち込める中、生存した一人の若い女が彼に血に濡れた布片を手渡した。
「持っていて。」彼女は言った。
「忘れてしまった時、これを見て思い出して。」
彼はその布を今に至るまで大切に持っている。血のためではなく、誓いのために。
それから彼は古の術を学んだ。人々が「邪」と呼ぶ術で、法を歪め、禁じられた層のエネルギーに触れる。学ぶごとに、彼の術は村の灰を一抹に帯びていった。
「これは策略ではない。」彼は問いただす者に言ったことがある。
「これは保存である。」
焚き火が消えかける夜、彼は自問した。
「復讐で、彼らは蘇るか?」
答えはいつも同じだった。
「否。」灰は肉には戻らない。しかし灰は火となる。
「我は復活させるために殺すのではない。」彼は心の中で言い聞かせた。
「我は世界に思い出させるために殺すのだ。」
道徳? 彼は道徳で弁明したりはしなかった。
「道徳とは勝者が書き換えるものだ。」と彼は言った。
彼の眼には復讐は単なる倫理ではなく、因果の方程式であった。
「彼らは我から家を奪った。」
「我は相応の損失を返す。」
「均衡。」
他者はそれを残酷と呼んだ。彼はそれを、自身の座標における正義と呼んだ。Primordis Altiorisは単なる殺人者ではない。彼らは崩れた道徳の体系であり、征服の地図の上の記号のように命を扱う文明であった。
「我は人を殺すのではない。」彼は言った。
「歪められた構造を殺すのだ。」
だが彼が決して公にしなかったものがある――孤独だ。夜、火が消えたとき、彼は呼び声を聞く。子らの笑い、碗と箸が触れ合う音、ただ彼だけが聴く一つの旋律。彼は拳を握りしめる。
「我は、まだここにいる。」
彼は弁解せず、許しを乞わなかった。だがあるとき、ジェンソン・イェシュダに出会ったとき、彼は二つのものを見た。Genson Jeshudaの瞳には、Primordis Altiorisの痕跡がある。しかし傲慢はなく、鍛えられた刃でもない、自然に生まれた子どものそれだった。その差異は彼を狼狽させた。
彼はジェンソンにかつて埋めた優しさの芽を見た――自分がかつて持ち、埋めてしまったものだ。
「お前は彼らとは違う。」彼は言った。
「だがお前は彼らの力を持つ。」
その逆説は彼を揺さぶった。復讐を望む己と、復讐を無意味にするかもしれぬもの――赦し、再生、命を与える機会――その両方が彼の内にあった。
孤独な時、彼は思う。
「もし我がこの炎を消したら――我は誰になる?」
だから彼は半ば身を据えた道を選んだ。教え、試し、若者を炉に押し込み、同時に隙を残す。
「我は多くを失った。」彼は少年の前で言った。
「復讐は我が生の理由だ。」
「それは世間の眼には正しくないかもしれぬ。」
「だが裂かれた心には――それが必要なのだ。」
彼はこの言葉が分断を産むことを承知していた。理解する者もいれば憎む者もいるだろう。だが彼は受け入れた。Bharadist Nabotistにとって、世界はもはや単純な答えを含まない。語られるべき傷があり、解かれるべき倫理の方程式がある。
そしてそのすべての計算の間で、彼は言葉にならぬ痛みを帯びて歩き続ける――生き残りの痛み、火を守る者の痛み、滅びと記憶の間に自らを裁定者として置いた者の痛みを。
二つの月は依然として高く懸かり、彼は岩を離れて立ち上がる。胸の傷がかすかに疼く。
「忘れてはいない。」彼は繰り返した。誰に向けてかはわからない。灰にか。自分自身にか。
そして樹海の闇の奥深く、墓守であり悪魔でもある一人が歩を進める――一つの民族を名に宿したまま。
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