表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干物姫の暇つぶし  作者: ポル☆ボロン
狐憑きの章
5/6

秘め事の香り《カヨン視点》

私の侍女であるジユは、その仕事柄たわいもない噂話を小耳に挟むことが多い。

その情報の一つ一つは大したことはないが、時には輝く宝石のようなものもある。

だからこそ、私はジユの口からその噂を聞きたいのだ。

全ては、この軟禁生活の暇つぶしのために。


この日、狐憑きの一件でジユがもたらした事実は二つ。

一つは下級妃ヘウォンはもう手遅れであること。

一つは下級妃ヘウォンは廃人となる前、匂いがキツいお茶を飲んでいたこと。

この二つの事実が手に入れられただけでも、大収穫とも言える。


そして、これらを踏まえた上で考えられる真実は二つ。

一つはチェ家に生き恥を晒すために、屈辱を与えるために下級妃ヘウォンは廃人となったこと。

一つは花の香りがするお茶を好んでいた下級妃ヘウォンが、急に匂いや香りがキツいお茶を飲んでいたということだ。


常々ではなく、急にそのようなことになったのだとしたら、犯人は何かの量を少しずつ増やしていったのだろう。

恐らく、お茶からキツイ匂いがしたのはその何かの量が微量から多量へと増え、隠しきれなくなった証。

それを隠そうとしてお茶に匂いを消す物を混ぜた結果、逆に匂いが強くなったと考えるのが妥当だ。


だとしても、普通の薬には人間を廃人にする効果は無い。

毒も使い方にはよるとは思うけれども、それでも人を廃人のようにする程の力は無い。

と言うことは....下級妃ヘウォンは薬でも毒でもない、第三の何かを盛られたことには違いないだろう。


「.....カヨン様、人間を廃人にする程の薬という物は本当にあるのでしょうか?」


ジユの溢した疑問は非常に筋が通ったものと言える。

確かにこの世には無数の薬や毒が存在するけれども、それらの大体は使い方によって在り方が変わる道具。

言葉で言い表すならば、表裏一体と表現するのが正しいのかもしれない。


医術用の薬はあくまで人を癒す物。

暗殺用の毒はあくまで人を殺す物。

薬も毒もそう言うふうに役割は決まっている。

彼女に盛られた何かも、最初はそうだったのかもしれないけど。


「私自身はそういった効果のある薬や毒は知らないけど、それらしい嗜好品なら知ってるわよ」

「....嗜好品?」


そう、下級妃ヘウォンに盛られたのは薬でも毒でもない物......いわゆる嗜好品と呼ばれる物だ。

嗜好品と言っても、それはかつて母が父を誑かしていた時に流行っていたかつての嗜好品で、今となっては取り締まりの対象として知られている。


元々は疲れを取る医術用の薬ではあったものの、使用すれば気分が高揚とするためか、次第に嗜好品として使われるようになった経緯がある代物。

要は、人の手によって使い方が歪められた物なのだ。


使い方が歪められたことにより、かつては薬だったその嗜好品はやがて王宮や後宮、国を蝕む毒となった末に規制され、今となっては禁止薬物として扱われている。


「えぇ、私の母が撒き散らした呪いの一つ....大麻よ」


その嗜好品の名は大麻。

母の手によって、快楽を彩る嗜好品として使用された薬だ。

この大麻という薬は、本来は痛み止めとして使われていたのだが.....狡賢い母は悪い意味での大麻の真価を理解していたようで、医官の反対を押し切ってそれを嗜好品として普及させた。


その結果は言わずもがな地獄で、後宮や王宮はあっという間に大麻と言う毒に染まり、そのことによって命を落とす者も出始めた。

けれども、その元凶である母が処刑されたことに加えて、国王としてその座に即位したソングン兄様によって、大麻は表舞台から姿を消した。


母が権力を握っていた頃には、大麻によって廃人になったとされる側室が何人も居たとされ、その大半が母の派閥に関わっていた宦官達によって隠蔽され、今日に至るまでその謎は解明されてはいない。

まさに、胸の居心地が悪い話と言っても過言ではないわね。


「大麻は独特な匂いがするとされていて、人によっては強烈な匂いとして感じることがあるの」

「と言うことは.....お茶に大麻が混ざっていたからこそ、キツい匂いがしたと言うことなのでしょうか?」


一つ一つ、事実と考察をすり合わせていくうちに姿が見える真実。

例え、それがまだ氷山の一角だったとしても....私からしてみれば、この狐憑き事件の種を明かすキッカケになるとも思っている。

いつの時代も、闇の中に葬られた事件は些細なことで暴かれると相場が決まっているのだから。


「それもあるだろうけど、そういう場合は匂いを消すために余計なことを付け加えるのが定石なのよね」


今回の事件は、実行犯の他に首謀者が居ると見るのが正しいかもしれない。

正確に言えば、杜撰な実行犯と頭の切れる燃える首謀者が。


いくら盛られた大麻によって味覚が鈍るとはいえ、その強烈な匂いの隠すためにあえて強い香りで包み込めば、匂いと匂いが反発し合うのは目に見えている。

なのに、それを平然とヘウォンに飲ませたということは.....実行犯は余程間抜けだったようね。


「ヘウォン様が盛られた物が大麻だったとしたら、それはそれで醜聞になりますよね?」

「だからこそ、首謀者は大麻を選んだのよ」


チェ家はお茶の栽培で財を成している一族で、名家と言えば名家だ。

仮に首謀者がチェ家に恨みを抱いているのなら、私はその理由を知りたい。

この国で使用が禁止されている大麻を盛り、下級妃ヘウォンを廃人とさせたそのワケを。

チェ家に隠された真実とやらを。


「これは、予想以上に愛憎の感情が絡んでいそうね」


私は女狐の娘として、母が残した呪いの正体を知りたいのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここまで読みました。 ひきこもり探偵みたいで面白い!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ