廃屋の天使2
暁の夜は深い。
誰よりも哀しい想いを君に届くよう手紙を書き留める。インクは滲んでいるし、手首から血が吹き出すが、そんなことどうでも良かった。
「言って…だから…君は…」
耳が聴こえない。痛覚がない。血が流れ過ぎた。身体中麻痺している。
「もう分からないよ…」
涙が溢れた。
雲が漣のように茹だる。月の光に照らされて廃屋の影が薄らと赤ばんだ。瓦礫を鼠が駆け回る。2、3匹溢れ出し、不気味な紅い眼に凶暴な色を浮かべた。
私の肉を喰っている。
発狂しそうだった。いや、こんな世界、本でしか有り得ないのだ。イカれた頭の人間の虚言世界に過ぎない。
大鎌を右手に持った君が、私の残骸を片付けた。私はただそれを見ていた。
白井唯はイジメられっ子だった。
教科書をトイレに捨てられたり、上履きを隠されたり、体操服を破られたりしていた。最も酷いのは、椅子に瞬間接着剤を塗りたくられることだった。
スカートが破れ、君は泣いていた。
私は見て見ぬフリをした。
君はイジメっ子より私を怨んだ。元は私がイジメられていたのだ。それを助けた君は私の代わりにターゲットとなった。