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そう言って、鉄格子の扉を開けた。
魔力抑制室の中にいるから、思う存分に魔力の調整ができた。だけど外に出てしまえば、この環境よりももっとずっとシビアにコントロールしなければならない。教えてもらってつくづく感じたが、フローラが魔法を自由自在に操る能力はやっぱり天性の才能だったんだということ。
勝ち負けを争いたいわけじゃないけど、やっぱり大魔法使いといえるのはフローラの方だろう。
どんなに強大な魔力量でも、扱う人間の要領が悪いとそれだけでリスクの大きなデメリットを抱えることになる。
死罪を免れるために、フェリノスに付き合わせてまで努力をしてきたが、それでもまだ完璧とはいえない。
だけど、怖がっていては先に進むことはできない。
意を決してローブを受け取り、それを腕に引っ掛けたままフェリノスに促されておそるおそる鉄格子をくぐった。
今まで感じていた圧迫感が消えて、開放感に包まれる。気を抜いてしまって、それまで体内の中に抑え込めていた魔力が体外に放出し始めた。慌ててローブを羽織り、呼吸を整えて魔力を抑え込む。
「俺たちのように、生まれつき魔力を持っている人間は物心つく頃から呼吸法を叩きこまれるんだ。君はまだ魔力が開花して日が浅い。そうやって乱れるのもしかたのないことだから、落ち込まないでいい」
「うん……。うん、わかった。ありがとう」
深呼吸を繰り返して、深く息を吐いて、魔力の安定を感じとった私はそっとローブを脱いだ。
そのまま体内だけに魔力が巡るように呼吸を整えて、フェリノスの方を振り向く。
「良い感じだ」
初めて見た、嬉しそうに目を細めて笑うフェリノスの可愛らしい笑顔にしばらく見入ってしまって、彼がなんと言ったのか理解するのに少々時間を要してしまった。
きっかり2秒経ってすんともとに戻ってしまった表情筋を、こんなに恨めしく思ったことはないだろう。もう少し見ていたかった気もするが、やっぱり落ち着かないのでいつも通り無表情でいいかもしれない。
……何を言っているんだろうか、私は。
ともかく、特訓は終わりということで、私たちは約1か月ぶりに城内に戻ることになった。
次回6話以降から二人の関係が大きく動きます。
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