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黒い美学  作者: 千葉の古猫
第一章 聖夜の誓
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第7話 シュートミーとの対決1

第7話 シュートミーとの対決1


 三階からの音が聞こえなくなった。

 シュートミーは息を潜めて体勢を整えているのかも知れない。


 二階は一階と同じ様に、だだっ広いスペースで、天井に穴は無い。

 仕切り壁の残骸が幾つか残っている。

 タケルは仕切り壁の残骸を、慎重に調べて回った。やはり誰も隠れてない。

 三階も同じ様であれば、今度こそ階段を登って行くのは危険だろう。

 シュートミーは逃げ場の無い三階で、仕切り壁の残骸にその身を隠しながら、階段口に狙いを付けて待ち伏せしている筈だ。


「シュートミーは、遠くからの狙撃そげきは得意みたいだけど、ライフルが大きくて、狭い場所は苦手みたいだね」

 ヒロシが分析してみせる。


「小さな女だったからな」シンジが答える。


「でも階段口から三階に顔出した途端に、今度はやられるぜ」

 タケルは確信を持って主張した。


「飛び道具はヒロシのショットガンと、俺のオートマグナムか、タケルは銃を持ってないのか?」

 シンジがタケルに顔を向ける。


「この長剣と、後は使ったことが無い光線剣だけだよ」


「光線剣?」タケルの返事に対し、シンジが妙な顔をする。


「この前のダンジョンで、宝箱を見つけたんだ」タケルが説明する。


「そんなアイテム、攻略本には無かったぜ」シンジが首を傾げる。


「頼りにならない本だな?」

 タケルは、どうでもいいさという感じで言った。


「いや、あれは完全版の筈だけどな」


「へえ?」


「大体あのダンジョンには、宝箱は無い筈だぜ」

 尚もシンジは自説を述べる。


「そうなの?」タケルは、その意味を評価しかねて訊いた。


「まあいいさ。その光線剣てヤツ、ここで使ってみれば良いじゃないか?」

 シンジは、攻略本に載っていないその武器に期待した。かなりの威力があるお宝かも知れない……


「そうだな」

 タケルはポケットから、二十CMサイズのベルトの付いた棒を取り出した。ボタンらしきものは見当たらない。


「これどう使うの?」

 タケルが天に向かって問うと、どこからとも無く、従者トミーが現れた。


「そのアイテムは『聖剣ムラサメ』?……光線剣≠ムラサメ、データと一部不一致?……正確な該当データがありません」


「どうして?」


「わかりませぬ。お役に立てなくて。ではごめん……」

 そう答えると、トミーは消えた。


「使い方がわからないよ」タケルがシンジに、その棒を突き出す。


「しょうがねえな、それ」シンジの当てが外れたようだ。


「うん。頼りになるのは背中の長刀だけだ」

 タケルは、柄に右手を当てた。


「じゃあタケルが最後だな」シンジが提案する。


「ボクが先頭で行くよ」普段は慎重なヒロシが、大胆に主張する。


「ヒロシ、大丈夫か?」シンジが心配そうに訊く。


「任せといて」ヒロシは自信たっぷりに答えた。


「シンジ、ヒロシを援護してやってくれ」

 タケルがシンジの目を見る。


「任せな」シンジがウィンクで答えた。


 先頭で階段を登ったヒロシは、ポケットから銃弾を一掴み手に取って、階段口からそれを、対角の方向へばら撒く。

 途端に『パパパパッパン!』と連続のライフル音が鳴り響いた。

 ヒロシは、ショットガンだけを階段口に押し上げレバーを引いた。

『ドカン!』銃声のした方向への、いわゆるめくら撃ちだ。


『パン!』同時にライフル音がまた響き、ばらばらと小さな物が飛び散る音がした。

 後で響いた音は、ヒロシのショットガンで砕かれた、壁の破片が落ちる音だ。


「よし六発撃った。シンジ君行くよ」


「おう!」


 階段口から三階フロアへ、ヒロシは一気に躍り出る。

 ショットガンを構えた先に、シュートミーがライフルに弾込めをしている半身が見えた。

『ドカン!』ヒロシのショットガンが炸裂する。


 シュートミーはその第二弾を予測していたようだ。寸前で仕切り壁に身を引くと同時に弾込め完了。ヒロシを狙ってライフルを構えた。


 ヒロシのショットガンは、破壊力はあるが二発で弾込めしなければならない。

 ヒロシは必死で、手近にあった仕切り壁に回り込む。

 ヒロシを狙うシュートミーの右側面を、階段口からシンジが、オートマグナムで慎重に狙って発射……『ダン!』


 シュートミーは、さっと仕切り壁に身を引いて、マグナムの銃弾をかわすやいなや、シンジを狙い撃ち……『パン!』

 シンジは額の真ん中を撃ち抜かれ、とてつもなく大きな悲鳴を上げて倒れた。

 ヒットポイントhp=0 即退場……シンジだった物体は黒くなり、二階のフロアまで転がり落ちた。

 一階に居たイチローは、シンジの強制退場を知ってオフラインした。

 チームパートナーが倒れ、オートセーブされた以上、この後、足を怪我した自分一人がこのステージに留まっても、チームの役には立たないからだ。


 自分の側面を転がり落ちたシンジを見て、タケルの怒りが爆発した。(くそ!)


「ヒロシ、大丈夫か?」

 タケルが、階段の途中から呼び掛けた。


「タケル君、ボクは撃たれてないよ」

 やや離れた所から、ヒロシの返事が返って来た。


「シンジはやられた」かすれた声でタケルは言った。


「ボクを援護しようとしていたんだ。

 シュートミーは、シンジ君の行動を予測していた……ボクには、シュートミーをやっつける自信が無い……」

 ヒロシは弱弱しい声を出した。


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