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黒い美学  作者: 千葉の古猫
第一章 聖夜の誓
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第5話 2チーム合同作戦

第5話 2チーム合同作戦


 シンジは、五年生では一番大柄な少年で、二組のボス的存在だ。

 声も太いし、身体もがっちりとして、運動神経も良く発達している。

 もう一人のイチローは、背は高いがひょろっとしていて、シンジと比べて頼りない感じだ。口はうまく、屁理屈キングとして知られている。


「攻略本によると、ここの小ボスは『シュートミー』と云う女スナイパーだ」シンジが答える。


「シンジたち、攻略本使ってるの?」ヒロシが呆れたように訊く。


「悪いか?」イチローが凄む。


「ちょっとダサい」ヒロシはにっと笑った。


「俺たちのやり方はほっとけ、組むのか組まないのか?」

 シンジがタケルに訊く。


「手強いのか?」

 タケルは、向こう側のビルの方をじっと見ながら質問した。


「一〇〇M以内は百発百中らしい」シンジが答える。


「そんなに?」ヒロシは唇を噛んだ。


「進めないじゃんか、それじゃ」タケルは怒ったように言った。


「シュートミーには弱点もある。

 あのライフルは六連発なんだ。弾込めには少し時間が掛かる。それに俺達はスモーク弾を持ってるから、それを使えばどうにかなると思う」

 シンジがベルトにつけた筒を指差して見せた。


「じゃあ使えばいいじゃん」タケルは筒を見て言った。


「俺達の目の前で、中学生のチームが二人ともやられた」

 イチローは少し先の方を指差した。


 そこには人型の黒い影が転がっていた。

 やられたキャラクターは、ゲーマーであろうと敵キャラであろうと、黒いイメージになって四八時間その場に残る。


「そいつらがやられたから、びびってんだ?」


 タケルがそう言うと、シンジとイチローは一瞬目を合わせ、情け無さそうに下を向いた。


 タケルは、彼らがやられたシーンを想像した……

 ゲームメーカーの自主規制により、参加者達のキャラクターがやられても、敵キャラのように出血したり、腕や足が飛び散ったりはしない。

 それでも、叫び声とかうめき声はリアルそのものだ。

 タケル自身も、前回かなりの悲鳴を上げた。


「その人達、スモーク持ってなかったの?」ヒロシが訊く。


「そいつらもスモーク使ってたけど、スモークが風で切れた所で狙い撃ちだよ。

 HPが0になるまで何発も撃ち込まれて……」

 イチローは強がりを捨て、恐怖に震えた。


「その女見たの?」ヒロシが訊く。


「いや。あのビルのどこかから撃ってるのは間違いないけど、二階か三階かもわからない」

 シンジは、普段と余り変わらない落ち着いた様子で答えた。


 タケルはシンジを見詰めた。

 前回このシンジに斬られて退場になったのだ。

 しかし、今はリベンジの時ではなかった。


「強敵だな」タケルはシンジにそう言った。


「ここまでのエリアでは最強だ」

 シンジは、だからこそタケルの力が必要だと目で訴えた。


「強化アラミドスーツでもダメかな?」

 タケルは半信半疑に、自分のスーツを叩いて見せた。


「中学生達もアラミド着てたよ」シンジは首を振る。


「ダメか……」タケルが呟く。


「当たらなきゃいいのさ」イチローがうそぶく。


「百発百中なんだろ?」

 タケルが睨むと、イチローは目を逸らせた。


 シンジが「まあ作戦が無い訳でもない」と、耳を貸せとでもいいたげな素振りで、右手の平を上にしてしゃくる。

 タケルとヒロシは半歩近づいた。


「二チームで組めば突破できるぜ。

 先ずスモークを二発ずつ四〇M先に転がす。

 そこまで先の一チームが一気に進む。

 後から来るチームは途中まで走り、風向きを見て風上にスモークを一発追加する。

 後チームが合流した所で、そこからまた四〇M先に二発転がす。

 そこまでは同じやり方で進む。

 そこからは残り二十Mだ」

 シンジはそこまで言って、タケルとヒロシを見た。


「それで?」タケルは先を促した。


「攻略本によると、ビルから十M以内は、スナイパーが窓から身を乗り出さない限り死角になる。

 シュートミーがターゲットを発見してから、ショットするまでには二秒かかる」


 シンジの後を継いで、イチローがそう説明した。


「じゃあ死角までの十Mを、二秒以内で走ればセーフだね?」

 ヒロシは間髪を入れず、そう言った。


「ヒロシお前、頭良いな」

 シンジとタケルは、同時にそう言ってヒロシを見た。


 ヒロシは照れ笑いしながら、ヘルメットの上から頭を掻いた。


「俺達はずっとその作戦を考えて、お前らが来るまで三十分間も待ってたんだ」

 イチローが、まだ深刻そうな顔を変えずにそう言った。


「それって二人でもできるんじゃないか?」

 タケルは今聴いた作戦を反芻して、チームワーク良くやれば、二人でも十分できそうな気がしてそう訊いた。


「できないことは無いが、危険なんだ」

 シンジは再び、お前の力が必要なんだという顔をする。


「そうかな? 二チームでも一チームでも、同じ様な気がするけどな」

 タケルは尚も首を捻る。


「タケルはあのシュートミーの恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるんだよ」

 イチローが妙に暗い声を響かせた。


「そうだよ。見たらびびるぜ」シンジが一人で何度も頷く。


「わかったよ。じゃあ共同作戦だ。スモークはお前ら持ちでいいよな」

 そう言ってから、タケルは同意を求めてヒロシを見た。


 ヒロシはこくんと頷いた。

 タケルは、早くシュートミーと対決してみたくなっていた。


「お前ら全然持ってないの?」イチローが訊く。


「一発も無い」タケルはベルトを見せて答えた。


「俺達がスモーク六発持ってるさ」

 シンジが、スモーク弾の筒をセットした、ベルトの両側をぽんと叩いた。


「助かるね」タケルはにやっと笑う。


「ちぇ」スモークは一発十ゼニー、イチローが舌打ちをする。


「そうと決まったら行くぜ」

 タケルはシンジに声を掛けた。シンジは大きく頷いた。


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