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最終話 ハザマのアクマ


 

 アンリマユの中に入ると、どこまでも暗い闇が広がっていた。

 

 

 その中に一人泣きじゃくる少女がいた。

 

 あのころと変わらず、静かに泣いていた。

 

 寂しがり屋なワタクシの主───────アリスお嬢様。

 

 「帰りましょう。お嬢様。迎えに上がりましたよ。」

 

 ワタクシは跪き、手を差し伸べる。

 

 「もう一人にしない……?」

 

 「はい。必ず、おそばに。」

 

 「どこへも行かない?」

 

 「お嬢様がどこへ行っても、必ず迎えに行きます。」

 

 「本当に?」

 

 「約束したじゃありませんか。」

 

 「約束……?」

 

 「ええ、『あなたの家族になる』と。」

 

 「そう……だったね。アモンは私の家族!!」

 

 「はい。あなたの家族です。戻りましょうか。奴を封印して。」

 

 「え?」

 

 

 お嬢様を立ち上がらせて、正面を向く。

 

 お嬢様と同じ姿で現れたのは紛れもなくアンリマユだ。

 

 「この指輪を使って封印してください。弱らせるのはワタクシの役割です。」

 

 「憤怒、嫉妬、それから強欲。君を殺せば、世界崩壊に近づく。容赦はしないよ?」

 

 「では、改めて。───────また会いましたね。アンリマユ。宣言通り4度目の世界でお会いできて嬉しいです。」

 

 「ボクもだよ。会えて嬉しいよ!アモン!!」

 

 「一つだけ言っておきましょう。あなたには感謝しています。お嬢様と出会わせてくれて!!!!」

 

 

 あの時と同じように拳を放つ。アンリマユの顔面に当たるが、まるで手応えを感じない。

 

 「フフ、また飲み込むよ!!」

 

 「やってみてくださいよ!!」

 

 どうしてだろうか。いやわかってる。

 

 体がすごく軽い。

 

 負ける気がしません。

 

 ワタクシはアンリマユに構うことなく、蹴りを腹部にお見舞いさせる。

 

 「なにっ!?」

 

 そのまま首元に手刀をし、隙をついたところで水を出現させ、水の中に沈める。

 

 「ああ、そうか嫉妬の権能かあ。相手の力を自分の力に変えるだったかな?」

 

 「ハズレです。」

 

 水の中に入れても、普通に話しかけてくる。この世界の理など奴には通じない。

 

  ならば、続けて攻撃するまでのこと。

 

 ワタクシは次にアンリマユの首を掴み、炎で包み込む。

 

 「ああ!!いいねえ!!今度は憤怒!!!嫉妬だけだけだと僕に飲み込まれる。でもその絶大な魔力で精神を保っているわけか!!!!」

 

 「またまたハズレです。」

 

 燃え上がらせたまま上空へ蹴り飛ばす。

 

 アンリマユは身動きが取れていない。

 

 ワタクシは一足先に上空に先回し、魔力を解き放つ。

 

 「あっはははははは!!!そうか!強欲の権能で先読みしつつ、権能を掛け合わせているのか!!!」

 

 「不正解。全部間違いです。」

 

 「何……?」

 

 地面に倒れるアンリマユ。ダメージを受けない奴が、瀕死だ。

 

 「答えは愛です。」

 

 「愛……だと?」

 

 「お嬢様と再会できて、最高に気分がいいんです。誰にも負けませんよ。」

 

 「なんだそれは!!!!愛?愛だとぉおおおお!!!!」

 

 アンリマユは激昂し、突撃してくる。

 

 「あなたの権能はワタクシには効きません。だって、あなたはワタクシにお嬢様を会わせてくれましたから。」

 

 ワタクシは軽くアンリマユを受け止めると、魔力の縄で拘束しお嬢様の前に転がす。

 

 「なぜだ!なぜだなぜだなぜだああああああああ!!!何故いつも邪魔をする!これがボクの役割なんだ!僕の存在意義なんだ!僕は!僕はああああ!!!そのために、その為だけに存在してる!!!」

 

 アンリマユは拘束されながら、駄々をこねるように暴れる。

 

 ただの子供だ。

 

 そう感じた。

 

 

 「お嬢様、終わりました。封印を。」

 

 「ううん。しないよ。わかってるでしょ?」

 

 「ま、そう言うと思ってましたよ。」

 

 お嬢様は何も迷うことなく、アンリマユの拘束を解いてみせる。

 

 知っています。あなたはそういう人だ。

 

 

 「は、は、はああああっ!?」

 

 アンリマユは瞳を大きくさせて困惑する。

 

 

 「だって、封印って何も出来なくてつまんないでしょ。私わかるよ。あなた───────寂しかったんでしょ?」

 

 「バカか……君は。僕は君の大切を壊してきたんだぞ?その僕を受け入れるつもり?」

 

 狂気を帯びた笑顔を向けるアンリマユ。お嬢様は優しく手を握ってあげる。

 

 「そんなつもりは無いよ。でもあなたが私の中にいた。それは確かに私なんだよ。……そして、大切なものが壊れて、それでも一色さんやケルベロス、そして、アモンに出逢えた。全部必要なことだったと思ってるよ。」

 

 「なんだよ!!!それ!!理解できないね!僕は君に同情されたくて、行動している訳じゃない!僕は僕の正しさで動いてるだけだ!」

 

 「うん、そうだね。だから、私も私が想う正しさで動いているよ。」

 

 「なに……?」

 

 お嬢様の言葉を心底理解できないというな顔を向けるアンリマユ。ワタクシはつい、助言をする。

 

 「まあ、あなたの尺度でお嬢様や人間を測るな、ということです。世界は広いですよ。アンリマユ。」

 

 「ククク、だが、それでもいいさ。いずれまた、お前の体を侵食して、世界をこの手に頂く!!!全て壊す!!!」

 

 「それでもいいんじゃないかな。そうなったら、また止めるし。止めれなくても、それがあなたの役割なんでしょ?」

 

 「お前はいつもそうやって!!!!誰も僕を必要としない!拒絶されて当たり前なんだ!僕だって、誰も必要としていない!必要が無いからだ!僕はそれでこそ、意義を果たせる!誰にも理解されなくていい!こうして生まれて、こうするのが、僕だ!!!」

 

 アンリマユは瞳に涙を浮かべている。

 

 「もういいんだよ。私が一緒に居てあげるから。誰にも理解されないのも、受け入れてもえない辛さも私は知ってるから。」

 

 お嬢様は優しく微笑み、アンリマユを抱き寄せた。

 

 「ずるい、ずるいよ。君は。皆から愛されて。君と僕、何が違うって言うんだ。」

 

 「……何も変わらないよ。ただ、あなたが背負う悪意を少しだけ、わたしや皆に分けてもいいんじゃないかな。そう思ってるだけだよ。」

 

 「くだらない言葉だ……」

 

 「だね。」

 

 

 ーーーーーーー。

 

 

 

 闇の世界が消え去り、視界が開けると、荒廃した世界が広がっていた。

 

 私はアモンと二人でアンリマユの作り出した世界から抜け出す。

 

 私の中にアンリマユは戻った。

 

 封印というより、一緒に世界を見ることにしたんだ。

 

 生まれた在り方が違うだけで、なんだか私に似ている気がしたから。

 

 出てきた私を一色さんとケルベロスが抱きしめてくれる。

 

 「お嬢様!!!!」

 「わん!!!」

 

 

 私は手厚いハグに倒れてしまう。

 

 「ただいま、一色さん、ケルベロス。」

 

 「ご無事で何よりです。」

 

 「わんわん!(おかえり!)」

 

 

 「それで?アンリマユは倒したってことでいいのか?」

 

 灰色髪の少年が私に聞いてくる。

 

 

 えっとこの人は確か、べオルさんだっけ。豊華さんと一緒に来たひとだよね。

 

 「倒してはないよ。私の中に戻した。」

 

 「うげ……いいのかよ、それで。」

 

 「まあ、封印してもどうせ出てくるでしょうし。一番安全なんじゃない?」

 

 「悪魔基準で考えたらね。」

 

 次々に見たことない悪魔たちがお話を始める。

 

 どうやら、すごいことになっていたらしい。

 

 あはは、と愛想笑いを浮かべていると美しい天使が近づいてくる。

 

 刹那。剣を形成し、私に刃を向けてくる。

 

 一瞬私はビクッとするが、アモンが簡単に刃を止める。

 

 「どういうつもりです?ミカエルさん。」

 

 「僕たち天使はアンリマユを消滅させるよう、天界から命令を受けてる。今君の中にそれがいるなら、倒せるうちに処分しようと思ってね。」

 

 「お断りします。お引取りを。」

 

 「君たち悪魔にも被害が出ることだよ?」

 

 「別にワタクシは他の悪魔どうなろうと知りませんよ。」

 

 「魔王やってたのに?」

 

 「やる悪魔がいなかったから、やってただけですよ。実際、向いてませんでしたし。」

 

 「なら、人間を守ってくれるのかな?」

 

 「いいえ。興味ありませんね。」

 

 「じゃあ君はなんなのさ。悪魔でも人間でもない。ただその子を守るっていうの?」

 

 「ワタクシは『ハザマのアクマ』ってやつです。ただ、このお方を、アリスお嬢様を守ります。それだけです。」

 

 「なら、その子が死ぬ時は?」

 

 「ワタクシが食べる、というのはどうでしょう?」

 

 「ふっ、面白いね。」

 

 ええ、私食べられるの?

 

 と、思ったけど、ミカエルさんは納得し、刃を収める。

 

 「ヒヤヒヤさせんなよ。ミカエル。」

 

 「ほんとよ!ここからまた戦闘か!って思ったよ!」

 

 「君はもう少し柔軟に考えた方がいい。」

 

 「はいはい。」

 

 ミカエルさんはべオルさんや恵実、それからラファエルさんにグサクザと責められている。

 

 苦笑いだ。

 

 「それで……もう、私らしか生き残ってなくないか?どうする?」

 

 見たことないご老人がそんな言葉を発する。

 

 まあ、本当にその通りだ。

 

 「やだやだ。これだから、人間って愚かっていうのよ。」

 

 「なにか助かる方法あるんですね。教えてくださいよ。」

 

 「ほんとにもう。サービス多いわね。」

 

 「たくさん知識や経験を得られたのですから、良いではありませんか。」

 

 いやあ、ほんとに癖強い知らない人多いなあ。何あったのかちゃんと後で教えてもらおう。

 

 オネェ口調の悪魔は、一色さん、ミカエルさん、ラファエルさん、ナゾのおじいちゃん、そして最後に私を指さした。

 

 「1級アミュレットが5人いたら、どんな奇跡でも起こせるのよ。悪魔たちは成長と誠意、契約を果たした。次はあなたたちで世界を救ってみせなさい。」

 

 「なるほど!その手があったか!」

 

 謎のおじいちゃんは納得して見せる。

 

  え?この人1級なの?

 

 というか、私1級なの!?

 

 「無理無理無理!無理ですよ!今までちゃんと神力使えなかったのに!」

 

 「アンリマユを封印したアマハネの娘なのよ?自信持ちなさい。」

 

 「お嬢様、いけます!」

 「お嬢様、一緒に頑張りましょう!」

 「ギャウギャウ!!!(ファイト!)」

 

 あーもうやだ。この人達はいつも勝手なんだから。

 

 「はいはい。やりますよ。やってみますよ。」

 

 ミカエルさんを除いた全員が配置につく。

 

 ラファエルさんは恵実と、融合している。この世界で天使の力を全てを使うためには人間と契約し、融合する必要があるらしい。

 

 

 「僕は誰とも契約してない。無理だよ。」

 

 「なら、あたしとしよ!」

 

 「え?」

 

 豊華さんがミカエル手を握る。

 

 「いいの?」

 

 「うん。良くないけど、いいことにする。だって、さっき助けてくれたでしょ?今度お出かけでもしようよ!」

 

 「君は変わってるね。」

 

 ミカエルさんはにっこりと可愛い笑顔を向ける。豊華さんとなにかあったみたいだけど、大丈夫そうだ。

 

 別になにも事情を知らないのに、少しだけ笑顔になる。

 

 きっと、素敵な瞬間に立ち会えている。

 

 豊華さんとミカエルが融合すると、黄金にきらめく美しい天使が現れる。その光だけで世界を包み込むような圧倒的な光だ。

 

 「俺たちの主はなんでもありだな。」

 「だからいいんじゃないか。」

 「だな。」

 

 「さ、行くわよ!」

 

 アスタロトさんの合図で世界を神力で満たしていく。

 

 「ぐっ……」

 

 思ったよりとてつもないエネルギー消費だ。

 

 疲労感が一気に押し寄せてくる。

 

 慣れないことをするもんじゃない。

 

 フラフラとして、視界が霞む。

 

 刹那。背中を誰かに支えられる。

  「一緒に頑張ろ?」

 

 可愛い天使。

 

 銀色の髪を靡かせる美しい女性がそこにはいた。

 

 この人はアモンを切りつけた人?

 

 「あなたにとって、大切な世界なんだよね?私にも手伝わせて。」

 

 「うん!ありがとう!」

 

 「それから、ごめんね。」

 

 「ううん。いつか、向き合わないといけないことだったから。」

 

 

 

 彼女の手が優しく触れる。

 

 「俺も手伝うよ。一応、神力は使えるしね。」

 

 黒髪の男の人も手伝ってくれる。

 

 確かこの女の人と一緒にいた人だ。

 

 おかしいもので、全く知らない誰かと世界を救う局面に立っている。

 

 今まで世界を傷つけてきた私が。

 多くの大切を失ってきた私が。

 

 神力の波長が整い、7人のちからが大きな加護となる。

 

 これがアミュレットの起こす奇跡。

 

 これまでの経験や記憶が私に流れてくる。

 

 きっと、みんなそうだ。

 

 みんなの記憶や経験が今この場所に集まって、力となっていく。

 

 天羽アリス、一色あさひ、真昼豊華、真昼恵実、明星清直、ナーヴァ、ミカエル、ラファエル、ソロモン・トラスト。

 

 色んなことを乗り越え、経験し、悪意や善意を得てきた私たちが、不思議な絆で今ここにいる。

 

 

 

 見てる?アンリマユ。

 

 

 世界はこんなにも美しいよ。

 

 

 

 そして、世界は元の形を取り戻した。

 

 ーーーーーーーーーーー。

 

 

 

 あの日から、しばらく経って。

 

 それぞれの日常に戻っていた。

 

 ナーヴァちゃんとミカエルさんは元の世界に戻り、それぞれやることがあるみたいだった。

 

 それでも、ミカエルさんは度々この世界に来て、豊華さんと遊びに行っているらしい。なんでも、明星さんをストーキングして怒られたとか。

 

 ナーヴァちゃんは魔界で魔王となり、地域の紛争根絶に力を注いでいるみたい。

 

 ソロモンさんは、おばあちゃんのことにようやくケジメがついたようで、トラスト財団から少し距離を置き、いまはボランティアをしながら、世界を放浪しているらしい。もちろん、バルバトスさんもついて行って、料理を振舞っているとか。

 

 恵実は二級アミュレットに昇格。日々魔獣や魔人と戦い、魔力の研究を始めたらしい。近々トラスト財団と教会が手を組めるように尽力するそうだ。

 

 豊華さんはソロモンさんが旅に出て、色々大変みたいだけど、アスタロトさんを迎え入れて頑張っているらしい。

 

 ベルゼさんとべオルさんは、相変わらずでご飯の取り合い、豊華さんとどちらかがデートするかで日々喧嘩をしているらしい。

 

 豊華さんは、可愛い弟が二人できて、嬉しいと言っていた。

 

 明星さんは、アスタロトさんに勉強を教わっているみたい。

 

 アスタロトさん曰く、空っぽなら、詰め込めばいいとの事。

 

 ナーヴァの力になれるよう色んな知識を蓄えたいそうだ。いずれは、ソロモンさんの旅に同行し、世界をより広く知りたいと、夢を語っていた。

 

 私は、というと、あれから魔力が溢れるようなことも減り、指輪も順調に機能している。

 

 確かにアンリマユの気配はするけど、悪さをするつもりはないらしい。

 

 ひとまずは、扱えるようになってきた神力の練習を一色さんの元でしている。

 

 いつか、お母様やお父様に報告しに行こうと思う。

 

 例え、拒絶されても。

 

 まずは、目指せ下級アミュレット!と、言ったところだ。

 

 

 

 

 

 本当に、何も無かったかのように、いつも通り。

 

 

 世界は私たちのことも、アンリマユのことも、知る由もない。

 

 それでも今日は進んでいく。

 

 

 出会って、別れて、壊れて、直して。

 

 進んで、後ろ向いて、下を向いて、上を向いて。

 

 

 自分の中の答えを探しながら、生きていく。

 

 誰かのそばを求めたり、ひとりで強くなったり。

 

 色んな『ハザマ』の中で。

 

 私たちは生きていく。

 

 

 

 「いってきます!」

 

 「はい!いってらっしゃいませ。お嬢様!」

 

 だから私は今日も生きていく。

 

 自分の嫌なところも、いい所も、受け入れて、私として。

 

 人間でも悪魔でもそれはきっと、同じだから。

 

 

 

 

 微笑み見送りをしてくれる一色さん、ケルベロス、そしてアモン。

 

 ここが私のいる場所。

 

 大切な、家族がいる場所。

 

 もうひとりじゃない。

 

 

 

 

 悪意があるから、善意があって、また逆もあって、全てに意味がある。

 

 ハザマを大切にして、受け入れて、私たちは生きていく。

 

 この矛盾だらけの世界を。

 

 人間で、悪間で、狭間だから。

 

 挿絵(By みてみん)

ここまで応援、ご愛読ありがとうございました!これにて、ハザマのアクマ完結となります!楽しんで頂けたでしょうか。


評価や感想、ブックマークなどお待ちしております。また、連載期間中たくさんの応援、とても励みになっていました。改めてありがとうございます。



※以下からは、あとがきとなります。作品に関係のあることやないことを描いています。興味があれば、どうぞ。



今回のお話は思いついたままに描くというのを、徹底した作品でした。ある程度、世界観やキャラクターのコンセプトは考えていましたが、シナリオの大半はその場のノリで作っています。


というのも、作品の世界観をちょっとポップにしたいという狙いがありました。結局、いつも通りになった気もしていますが、いつもより反響はあったような気もしています。


最初、いつも通りに描こうとしたら、『寝たきりで生活するアリスを、アモンがお世話する』という超絶重い話になりました。そうなってしまったので、ギャグシーンや食事シーン、生活場面を多く散りばめたり、アリスを前向きにしてみたり、してみました。その場その場で思いついた勢いの話ばかりです。



最初から決めていた部分としては、


アリスがアンリマユの器で昔に呪いを受けた一族、一色さんがアスモデウスの転生者、ベルゼが過去に何体もの悪魔を食べ何万年も経過して現れる、復讐を誓う天使のような悪魔が現れる、バルバトスはおばあちゃんに仕えていた、清直はルシフェルの生まれ変わり、豊華は夢を失っている、ミカエルはベルゼを憎んでいる


という部分だけです。ほかは全部後付けや思いつきです。変なところあったらすみません。


主にソロモン、恵実、べオル、ラファエル、アスタロト、リヴァイアサン、マーモインは最初の構想にはいなく、流れで出てきたキャラクター達です。


いやあ、辻褄合わせたり、伏線整えるのが大変でした。もうこのやり方はやらないと思いますが、楽しかったのも本音です。自由にかけて面白かったと思っています。皆さんはいかがだったでしょうか。個人的には久しぶりに初心を思い出せて、苦労した作品となりました。



その他、小ネタとしては、数字はそれぞれの悪魔に関連する数字を使っています。24000→ベルゼ、べオル、清直の会員番号→金星の直径など、色々仕込んでいます。



またテーマについてですが、そもそも悪魔の捉え方も歴史や文化、宗教によって異なります。多かったのは、一神教の影響で邪教とされるケースです。別の地域では神とされていたり、とある宗教では悪魔とされていたり、起源的には天使と同一の存在とされていたり、色々です。


また、故意に悪魔を崇拝するような、悪魔崇拝のパターンもあります。


また、悪魔は試練を与え、それを乗り越えることで人間的に豊かになるという解釈や単純に欲望を貪る存在だったり、罪の象徴とされていたり、そこの捉え方も様々です。



そんなことを調べているうちに人それぞれの考え方を持つのって大切だよな、と思うようになりました。それをこの作品的には『ハザマ』としています。始まり→過程→終わり。この過程である狭間が大切なんじゃないか、というテーマです。


仕事をしていても思うのですが、人の意見や文献を参考にして、自分の引き出しを増やす、そのうえで自分のやり方を確立していく。そこが大切なんじゃないかと思っています。


『こうしなきゃ』『ああ、しなきゃ』ではなく、『あ、そういうやり方もあるか!勉強になるな!』みたいな。


そんな考えとテーマ、登場人物の成長と悪魔との繋がりにおける関係性の変化、そんな所を描いて、伝わっていれば幸いです。



最後の結末についてですが、描いてるうちに3パターン浮かんでいました。


1.古の一族のように、封印して終わる

2.魂を地獄に送り、アスタロトがアンリマユを管理する

3.アリスがアンリマユを受け入れる


結果3番の結末となりましたが、いかがだったでしょうか。


書きたいままに自由に書くということで、この結末はアリスが選んだもののように感じています。アモンが主人公だったら、間違いなく2番の結末に向かっていた気がします。


本当はソロモンとアリス、豊華とミカエル、ミカエルと清直、一色さんとエリス、ソロモンとエリス、ラファエルと恵実のお話を描いてみたい気持ちもありますが、本筋から大きくズレてしまうので皆様のご想像にお任せします。もし描くとしても外伝とかでしょうか。ひとまず、ここで今回の物語はおしまいです。



ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!たまたまですが、10月4日(天使の日)に完結できて、嬉しく思います。


また他の作品や次の作品で会えたら嬉しいです。次回作も順調に進んでいるので、お楽しみに!それでは、いつもご愛読ありがとうございます。失礼します。

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