2月1日と2月2日
荷物が届いていないって時は、……。まず、自分を落ち着かせてください。
本当に自分の捜している荷物がないのか、どうか。
それを確認した上で、改めて、我々も確認をとります。
◇ ◇
『なんで郵便物が転送されて来ないんですかーーー!!請求書が届いてないんです!!』
……あまり短編でこーいうことはしないのだが
「そうなんですか。私共は、到着したモノに関しては、配達されているんですけど」
『でも届いてないんですよ!!誤配じゃないですか!!』
「落ち着いてください。転送は……1月30日からですよね?」
『1月30日から2月4日分の郵便物が来てないんですよ!!おかしいじゃないですか!!あなた達誤配したんでしょ!?』
「そーいう話聞いてないんですが。ね、ね!2月5日に郵便物はありましたでしょ?」
『だから!!1月30日~2月4日の郵便物が来てないの!!捜して!!請求書が来ないの!!』
先日、すご~く悩めるような不着申告の良い例が起こったので、それを短編として投稿したかったためだ。結論から言うと、解決しておりません。そして、解決できません!!
そんな自分の状況を、小湊配達員に演じて頂こうと思う。この元探偵希望の配達員さん。
「捜せとおっしゃられても、もう10日経ってますしね」
『捜しなさいよ!』
「分かりました、分かりました。調査だけですよ。調査と報告だけはしますんで!ひとまずはいいですか」
ガチャンッ
「なんで俺が不着対応しなきゃいけねぇんだよ!!しかも、通常郵便じゃねぇか!!」
……という感じで、配達地域の机でガチギレするところから始まります。
概要としては、
:現段階の情報:
通常郵便。
中身、請求書。
発送日不明 ……差出人曰く、もう発送されているのは事実とのこと。
旧住所を経由し、新住所に配達をされるとのこと。
小湊配達員がいる郵便局が、お客様の新住所というわけだ。
そこに転送されてくるはずの郵便物が届いていない……お客様からすれば、”1月30日~2月4日”分の間で、転送されてきた郵便物が届いてない!……これはどーいう事か説明しろ!
という概要である。
「なんかおかしくねぇか?」
お客様はブチギレていて、旧住所への配達がされているんじゃないか?差出人が出してないんじゃないか……などなど。……すでに凄くやり取りをしているそうだ。そして、こっちの方にまで流れ弾が飛んできたわけなんだが。
「本来。……本来、こーいう事態が起こった時、旧住所配達が一番可能性が高いんだ」
現場のやり取りは省くけれど。転送の処理が終わる前に、郵便物が来てしまう事が多くあります。それ故に旧住所への置き忘れみたいな感じなのはある話です。転居する前にポストを塞ぐなり、連絡を入れましょうね。
「それがなくて、差出人もちゃんと出してるってなると……俺達にまで言ってくることは、滅多にないんだよな」
誤配しやすいポイントというのは、……現場の配達員がよく分かっております。だからこそ、そこを調べ終えたら、……もう分かりません。通常郵便はまったく分かりません!!お手上げ残念!
って話になるんですが。頭の痛い話がここからである。不着申告ってやりたくないな。
『だから!!なんで見つからないんですか!?個人情報の漏洩に当たりますよ!!』
見つからないもんは、見つからないんだよ……としか言えないのである。
……1段階目の情報だけで、このオチがなんなのか推測できるとしたら、作者や小湊配達員と一緒にお仕事をしていると断言できます。
「ですから、調査しかできませんし。周辺聞きましたけど、そー言った事ないですよ!」
誤配してたら、郵便局に返してくれる方とかいますからね。
「もう少し、情報をください。どんな郵便物なんです?中身とかね……そんなに捜してて、見つからないってなるとですね……(言えねぇけど、予想が大きく絞られるんだよ)」
:現段階の情報:
1月分の請求書が届いていない。
2月の請求書だけ届いている。
旧住所から新住所は、……かなり離れた距離であること
「あ~……」
大ヒントを出すと、2月1日と2月2日である。
「なるほど。なるほど」
『2月の請求書は”もう”届いていて!!1月の請求書が届かないってオカシイじゃないですか!!』
「はいはい、そうですそうです」
小湊くん。頭を抱えながら、電話をする。
こっちからすると、……”こ~いう事情なんじゃないか?”って……予想はつくんだが。とても言える状況ではないし、小湊及び郵便局側からは確認する事ができないのである。さらに言うと、したところで意味がないのだ。推理の域でしかないけれど、
旧住所配達はされていない
近隣誤配をされてもいない
2月5日からは配達されているけれど……1月30日~2月4日に郵便物がないのはなんでだ?
1月請求書は来てないのに、……2月の請求書はもう来てる……
「あ~~~、どんまい」
『!!!!!!!どんな態度してんだーーー!!』
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「小湊の推理は当たってると思う。……というか、聞きたくはない」
お客様の怒りが収まるまで謝ってなんとか終わったんだが、……1時間ちょっとやっていた。お疲れの缶コーヒーを渡しながら
「でも、それ以外。あり得ないでしょうが」
小湊くんの推理を披露する。結論から言うと
「このお客様さ。絶対さ。2月に届いた請求書を、2月の分だと勘違いしてるだろ。受け取ってるはずだぜ。(あくまで結論の1つなんだけど)」
お客様曰く、月末には届く請求書らしい。ただ、転送する関係でそこからまた日にちが伸びる。
「じゃあ、2月1日、2日に配達がなかったのはなんで!?って言ってたけど。……そこは土日じゃねぇかよ!」
土日は通常配達をしないから、月曜日に回る……と言いたいんだけど。
「旧住所から新住所までの距離があり過ぎるから、転送が届いて配達されるのは4日か5日だ!!火曜日か水曜日のはずだ。で、これに関しては向こうも届いているって納得してるんだよな」
もう向こうは魔法でもあると思ってるのか知らないが。……転送された郵便物はそんなに早く来ないから。距離があり過ぎたら余計に来ないし、急ぎもしない。
1月30日から転送開始した郵便物が、こっちに到着したのが2月5日なんじゃねぇの?っていう妥当な日数になる。……お客様としては1月30日~2月4日の間に、転送されてきた郵便物が1通もないと騒いでいたけれど……普通に届かねぇんだよ!って、答えるしかないし、その間の郵便物を捜しに行けとか言われても、2月5日の郵便物がそれなんだよって……結構思っている。
「もし、請求書が月末よりも前に来るんだとしたら、……こっちに転送される前に向こうで配達がされているはずだ(こっちがもう1つの可能性)。それに関しちゃこっちは悪くないし。お客様が家で失くしましたってんだったら、俺達は知らねぇーよ、でしかねぇーよ!!」
ゴクゴクゴク
「……はぁ~~……」
推理した結果、こーなんじゃねぇの?って……お客様に説明ができない。というか、そのプレゼン力があったとしてもだ
「お客様の頭の中、個人情報の漏洩ばっかで、こっちの話をまったく聞かないんだぜ?誤配なんかありませんでしたよって言っても、上の連中を出せとか言われても、結論変わんねぇのにさ……多くの殺人犯って、ちゃんと話聞くよな~」
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作中では、さらにもう1つの可能性を省きました。
これに関しては、ホントにあとがきにさせて頂きます。
愉快犯ですか?
荷物が届かないとしたら、こっちはとりあえず捜してみるんですが。見つかるケースってあんまりないんですよね。というか、大抵、ご家族が受け取っていたりが多いです。
この可能性はさすがに作中では書けません。
魔女狩りみたいなもんですが。荷物がないことを証明するのは難しいんですよね。ですから、せめて追跡を入れてくれって言ってます。
この仕事に限った話ではないですが。こーいうお客様がいると厄介ですからね。